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この本を学生時代に読まなかったらそれは悲劇だ。

私をフォローして頂いている方々には、建築がお好きな方が多い。その中には建築学生の方もたくさんいらっしゃる。本当にありがたい限りである。

特にその建築学生の方々に是非とも読んで頂きたい本がある。

冒頭の写真「建築のエッセンス  斎藤裕著  A.D.A.EDITA Tokyo」である。

絶対に読むべき名著である。心の底からおすすめする。

著者は建築家の齋藤裕氏。

おそらく、ご存知ない方がほとんどだと思う。たまに新作が雑誌に掲載されていたりするが、今はほとんど建築設計はされていないのではないかと思う。

齋藤氏は安藤忠雄さんのように、独学で建築を勉強した。そして数々の建築賞を総なめにしている。

それはもちろんすごい。しかし、本当にすごいのは齋藤氏の建築の造詣の深さである。

この本を読むと、齋藤氏がどれだけたくさんの価値ある建築を観て、観察し、勉強し、血肉化して、建築実務に落とし込んでいるのかがわかる。

建築をたくさん観る人はいる。しかし、その体験を実際の設計に活かせているいる人はそう多くない。

それはきっと「その方法を知らなかったから」ということに尽きると思う。「建築をたくさん観なさい」という先生や教授は大勢いると思うが、「その観た建築を実務にどう活かすか」を教えてくれる人はなかなかいない。

それを教えてくれるのが本書なのである。

この本では建築を15のエッセンスに分けて論じている。

15のエッセンスとは、「木」「紙・土・漆喰」「石」「コンクリート」「鉄」「ガラス」「色Ⅰ」「色Ⅱ」「五感と気配」「建築の呼吸度」「空間の真・行・草」「プロポーションⅠ」「プロポーションⅡ」「動線・軸線」

以上である。

どれもが建築設計に欠かせない要素である。

齋藤裕氏と故・二川幸夫氏(元GA編集長)というものすごい2人が、古典的な名作建築を中心に、建築のエッセンスの秘密、素晴らしさを語り、さらにそのエッセンスを分析し、現代の建築設計に活かすにはどうすればいいのかを論じている。

今読んでも使える知識ばかりである。

おそらく私が最も繰り返し読んだ建築書である。読みすぎてだんだん製本が崩れてきた。ドッグイヤーがほぼ全てのページにされている。何度読んでも新しい発見があるので、いたるところに様々な色で線が引かれてある。

このような名著は今はなかなかお目にかかれない。

必ずや読んで頂きたい。


 

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