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ケンチクのソザイのオーラ
建築素材を考える-2
前回、素材の厚みがバレるというお話をさせて頂いた。
前回はパロディーのようになってしまったので、今回は素材について少し硬い話をしたいと思う。お付き合い頂ければ幸いである。
「素材が空気をつくる」といったら驚かれるだろうか。
ここでいう「空気」とは、「雰囲気」とも言い換えることができる。
試しにあなたが「これはっ!」と感じた空間の、床、壁、天井、柱などの素材を観察して頂きたい。
きっとその素材はオーラを発しているはず。そう、素材はオーラを発しているのだ。
桂離宮の敷石はオーラを放っている。
法隆寺の分厚いヒノキはオーラを放っている。
東京駅の赤煉瓦はオーラを放っている。
桂離宮の敷石が、よくわからない石ころであったら、あのような濃密な空気は醸成されない。
法隆寺の壁や建具が薄っぺらいスカスカの木材だったら、あの燻し銀のような空間は生まれない。
東京駅の赤煉瓦がハリボテだったら、ここまで人々に感動を与えることはないだろう。
空気は素材のオーラによって決まるといってもよい。
では、この「素材のオーラ」とはなんなのか。
それは「素材の素性」にヒントがあると私は考えている。
「素性(すじょう)」とは辞書で引くと「血筋、家柄、生まれ、育ち」である。
日本の有名な古建築によく使われる木材に吉野ヒノキというブランドがある。木目が詰まって密であり、節が少なくまっすぐで、木材としてこれ以上のものはない。
吉野ヒノキは手間ひまをかけ、一級品になるように育てられる。「生まれ育ち」がすこぶるよい素材の代表ともいえる。
「生まれ育ち」がいい木材は上品である。人間も生まれ育ちがいいと、どこか上品なのと同じである。
このようにモノ言わぬソザイにも「生まれ育ち」があるのである。
しかし、吉野ヒノキのように「生まれ育ち」がいい素材と初めから分かっていればいいが、どんな「生まれ育ち」かよくわからない素材もたくさんある。
例えば、石はどんな「生まれ育ち」かなど皆目見当もつかない。木材と違って、人間が育てるのではなく、"勝手に"地球が育てたものだからだ。
そのような素材がオーラを放つか放たないかは人間が見て判断するしかない。宝石を探すようなものである。
あ、、ということは、石については「生まれ育ち」もなにもないかもしれない。論理が破綻してしまった、、。
しかし!素材がオーラを放つのは真実ではないだろうか。
神社の大木にはなにか畏敬の念を感じるし、巨大な岩にはなにか宿っているように感じる。
そう考えると「オーラ」というよりかは、、、。
ぜひ、あなたにも、素材に宿る正体不明の力を感じて頂きたいと思う。