職能を超えて成果をだす
こんにちは。カミナシでプロダクトマネジメントをしている中村といいます。
過去に書いた記事はこちら
「プロダクト戦略どう立てたらいいかわからん」な人に贈る7つのコツ
【プロダクト開発に関わる人必読!!!】 モノゴトを前に進める『波乗り理論』
今回は、過去投稿した記事に書いているような「プロダクト戦略」とか「波を起こすようなリーダーシップ」も大事だけど、そのうえで、「成果をだすためにチームとしてどのような取り組みが必要なんだろう?」ということを考え、実践したことをシェアしたいと思います。
特に、人数が増えたり、階層化していっているような組織においては、今までの阿吽の呼吸のようなコミュニケーションが通用しなくなり、チームとして機動性高く成果を出し続けることは難しくなっていきがちです。(自分も過去大小さまざまな組織にいたので、この辺りは実感があります。)
カミナシは今まさにそのような状況だと感じており、その中でこの半年くらいで取り組んだこと、取り組みを通して学んだことを言語化したいと思います。
カミナシの現在の状況
カミナシは2024年5月現在まで約4年ほど「カミナシ」という単独プロダクトだけを提供してきました。しかし、去年から今年にかけて複数プロダクトを展開していくことを意思決定し、その準備を進めています。これは去年掲げたビジョンや構想に従って進めているものです。
・2030年ビジョン:ノンデスクワーカーが「挑戦し、報われる世界」の創造
・ビジョン実現に向けた構想:まるごと現場DX構想
実際、今年に入って2つのプロダクトをローンチする予定で急ピッチで開発を進めています。
そんな中、当然のように議論されているのが、組織やチームの分化、階層化です。これは必然だと自分は考えていて、対象となる課題やそれに対するソリューションが広がる中で、すべてを特定の人やチームだけで見ることは不可能であり、またマネージャーも一人で多くの人数をマネジメントするのは限界があるからです。
自律的かつスピーディーに課題解決をしたり、物事を推進するためには、スモールチームでコトにあたることが重要です。スモールチームを維持するために、分化、階層化は事業が大きくなる中で必然的なものだと自分は考えています。
課題意識
そのような分化、階層化が進む状況の中で、チームとして成果をだすために、組織的な課題として意識すべきことがいくつかあると考えています。(これは過去の経験からくるものです)
課題1:いかに情報の透明性を保ち、意思決定を健全にできるか
昔いたリクルートという組織では「ぐるぐる図」という中で、「縦ぐる」、「横ぐる」という仕組みを提唱していました。
これは、組織の縦でぐるぐる情報をまわして、各レイヤーで健全な意思決定ができるようにすることと、組織の横でぐるぐる情報をまわして、他事業や他部署のいいやり方はどんどん真似して横展開していこうという考え方です。
分化、階層化を進めると、縦の関係も今までのように何もしなくても情報の透明性を保てる状態にはならないですし、横の連携も意識しないとうまくいきません。(カミナシでもこのあたりは本当にまだまだで、経営陣の中だけでも十分情報が透明だとは言い難い状態だと自分は感じますし、メンバーレベルでも上位レイヤーの意図を十分汲み取って判断できるほどのレベルで、高い透明性をもった情報をもててるとは言い難い状態ではないかと自分は感じています。 ※ここは自分も含め全レイヤーが意識すべきところ)
そこで、いかに縦の情報の透明性を保ち、「縦ぐる」を実現できるか、いかに横の情報の透明性を保ち「横ぐる」を実現できるかが勝負だと思っています。カミナシのバリューである「全開オープン」が問われている局面だと思います。
課題2:いかに職能を超えて、共同作業を促進するか
階層化と合わせて、組織が拡大する中で役割の細分化も進んでいきます。ここで重要になると考えているのが、各役割や各ステークホルダー間での共同作業です。
共同作業をすることはいくつかのメリットがあると思うのですが、例えば下記などが挙げられます。
・「そもそもなぜそれを実現しないといけないか」というWhyが腹落ちしやすくなる
・自分ごと化して考えやすくなり、当事者意識がもちやすくなる
・特定の個人や職能を超えて議論することでき、結果としてよりよいアイデアに発展しやすい
これらはチームが1つだったときは自然にできていたとしても、組織が大きくなり、タスクが分担されてくると、意識しないとなかなか難しくなってくるものだと思います。
課題3:チームとして同じ方向を向いてコトにあたれるか
上記のような取り組みで一定自律的にモノゴトを進められそうですが、それでも不十分だと考えています。
何より大事なのが「チームとして同じ方向を向くこと」だと思います。自律的に全然違う方向をみんな向いてモノゴトを進めても成果はでません。
そこで、みんなが同じ方向を向くように設計し、個々人や個々のチームが取り組んだことをしっかり成果に結びつくように設計する必要があると思います。また、同じ方向を向くことで、個々のアウトプットの量・質ともに向上するとも思っています。
このような課題意識がいくつかある中で、直近半年ほどでカミナシのプロダクトマネジメント、開発チームで進めてきた取り組みをいくつか紹介したいと思います。
上手くいっているものもあれば、狙った成果がまだでてないものもありますが、「意識しようぜ!」というかけ声だけだとなかなか上手くいかないことが多いと思っているので、いかに仕組み化するかが勝負だと思っています。
実際に取り組んだこと
チームとして成果をだすために、上記課題にあげた、「情報の透明性を保ち、意思決定を健全にできるか」「いかに職能を超えて、共同作業を促進するか」「チームとして同じ方向を向いてコトにあたれるか」を意識して取り組みをしてきました。
大きくは「会議体の整理」と「イベントや仕組み」の2つに分けられるのですが、それぞれどんなことをしてきたのか、取り組み内容を紹介します。(あくまでプロダクトマネージャー視点での取り組み事例です)
分類1:会議体の整理
・(縦ぐるの促進)領域MTG(事業MTG)の新設:少し抽象度の高い課題について方針を定めたり、意思決定することはこれまで経営会議で行ってきました。ただ、徐々に意思決定のスピードが遅くなってきていたため、経営会議の1つ下のレイヤーでの領域(事業)ごとの会議を設けました。これは非常に上手くいっている印象で、今までよりもビジネス、プロダクト双方での重要議題について話すことができるようになっていると思います。あえて、階層をもつことで上下の情報連携、意思決定が上手くいっているよい例という印象です。
・(縦ぐるの促進)プロダクトチーム全体での週定例:プロダクトチーム全体としてどのような進捗なのか、どこを目指すのか、どういう議論が経営とされているかを共有、議論する場を設けました。今までは、半期に1回の頻度である程度固まった戦略や進捗を共有してましたが、途中経過も含めて議論されていることや構想していることを毎週話していくようにしています。実際この会議が機能しているかは実はまだ半信半疑なのですが、少なくとも情報の透明性を保ててはいるので、組織体制の変更や戦略の変更などがあった場合に、すんなり受け入れられやすくなっているのではという期待をもっています。
・(横ぐるの促進)月1での開発Win-Session:カミナシはマルチプロダクト化を進めています。その結果として、現在は5つの開発チームが存在しています。それぞれどんな成果をだせたのか、どんな進捗なのかについて、何も工夫しないと透明性が保てなくなり、自チームのことしかわからなくなっていまいます。そこで、新しくWin-Session(こういうの達成したぜ!いえーい!みたいに成果を祝うためのセレモニー)をするようにしました。これにより各チームの成果がわかるようになりましたし、各チームの取り組み内容を知れて、相互に刺激を受けることができる場になっていると感じています。
分類2:イベントや仕組み
・(共同作業の促進)ハッカソンの開催:一時的なイベントとしてPM、デザイナー、エンジニア、カスタマーサクセスなど職能横断でのハッカソンイベントをしました。目的は3つで、(1)職能を超えた交流促進、(2)職能を超えた共同作業の有効性を感じてもらうこと、(3)実際のプロダクト上(ビジネス上)の課題解決の芽をみつけることです。実際開催した結果、全職能からポジティブな声をもらって開催してよかったと感じています。参加メンバーは共同作業の威力を実感できたようです。
ただ、一時的なイベントに終わらせるだけともったいないので、ハッカソンの経験を引き合いに、今後はもっと職能を超えた共同作業をしていこうぜというコミュニケーションをとっているところです。
・(共同作業の促進、同じ方向を向く)リリース広報の整理:リリース広報は今まで担当PMなりがよしなにやっていたのですが、徐々に大きな機能リリースが増えてきたので、定例を設けました。また、定例の前提としてLv0からLv5までの6段階のリリースレベルを設定し、そのレベルに応じたコミュニケーション対象や広報内容を設定し、それに沿ってリリースに向けたアクションプランを明確にするようにしました。
リリース広報はPMとPMMやサポートチームが協力して行うのですが、この定例やリリースレベルという仕組みが共同作業に一役かっています。この整備をしたおかげで、リリースに向けてやるべきことが明確になり、セールス、CS、サポート、PR、経営、開発チーム内など全チームに対して効果的にリリース広報ができるようになってきました。
・(競合作業の促進、同じ方向を向く)統一ロードマップの作成:ロードマップ自体は前から作っていましたが、今回「目指したい事業インパクト」「そのためにだしたい成果(アウトカム)」「アウトカムをだすために必要だと仮説立てしているアウトプット」「仮説を検証するための検証方法」「アウトプットを達成するにあたり必要な技術的課題の解消」「継続的に取り組むべき技術課題の解消」「マルチプロダクト化する中での他プロダクトからの要請事項」などあらゆる観点を盛り込んだ統一ロードマップを作りました。このロードマップがあることで、開発に関連するすべての職能がどこを目指すべきか、そのために今何をすべきかが明確になったと思います。
また、この統一ロードマップ作成はPMだけでなくエンジニアやEMも議論に加わり一緒に作成しました。ロードマップやプロダクトゴール、機能の要件などもすべて共同で作業することでよりよいものを納得感あるかたちで作ることができるので、「PMだけで作るもの」と思い込まれているドキュメントも共同作業で作成することをおすすめします。
・(同じ方向を向く)PM内でのプロダクトゴールレビュー会:プロダクト戦略、ロードマップ、OKR、PRD(機能ごと)、ユーザーストーリーマッピング、バックログなどPMがまとめるものはいくつかありますが、何より「プロダクトゴール」をいかに設定できるかがポイントなのではないかと最近思い、そのレビュー会を始めています。
プロダクトゴールとは、プロダクトとして達成したい何か(だいたいユーザーへの価値増加につながる何か)なのですが、安易に「機能の提供」をゴールにしてしまいがちです。
ただ、それだとプロダクトゴール達成はどんなビジネス価値があるのか、どんなユーザー価値があるのか、何が主要な仮説か、不確実性が高いものは何か、その仮説をどのような方法で検証するのか、達成に向けた具体的なアクションは何かなど不明瞭になりがちです。(不確実性が高いテーマほど「機能の提供」に逃げがち)ここをシャープにできれば、開発チーム全体が同じ方向を向いてデリバリー、ディスカバリーを混ぜて進めることができるのではと考えています。
この取り組みは各PMメンバーの能力の底上げにもなりますし、自分がしっかりマネジメントしたいと思い、今一番注力しているものです。
得られた学び
チームとして成果をだすために、「情報の透明性を保ち、意思決定を健全にできるか」「いかに職能を超えて、共同作業を促進するか」「チームとして同じ方向を向いてコトにあたれるか」という課題に対していくつか意図的に仕組みを設けて進めてきたのですが、半年振り返って見ると、上手くいった部分、まだまだだなと思う部分があるので、それらの学びをシェアして本記事を締めたいと思います。
学び1:意図して仕組み化することの大事さ
やはり漠然とモノゴトを進め、後手後手で対応するのではなく、ある程度フェーズに応じて少し先回りして仕組み化していくことが大事だと思いました。あまり先回りしても仕方ないですが、あきらかに今のカミナシはこれまでとは異なるフェーズに入っているので、それに応じて意識的に取り組みをする必要性を感じています。
組織としての課題設定をし、それに対して意図的に取り組むという姿勢が大事だと実感しました。
学び2:カルチャーに落とす難しさ
一方で、仕組みはあくまで仕組みであり、それをカルチャー(同じ組織で働く人が、言われなくても同様の思考性や行動プロセスをとれるようになること)まで昇華するまでには至っていないとも感じます。ここは、自分一人では難しいので、継続しつつ、いかに周辺のリーダー、メンバーに伝播させていくかが大事だと思っています。
学び3:継続は力なり
学び2に近いのですが、仕組みをまわし続けるのも、それをカルチャーまで昇華させるにも、とにもかくにも継続がすべてだと思います。当然、目的に対して上手くフィットしていない仕組みは廃止したり、変更したりすべきですが、一定成果がでるまで目的はぶらさずに継続し続けることが一番だと思っています。
最後に
いかがだったでしょうか?カミナシの中でいろいろ苦労する中で、仕組み化したこと、それを通して学んだことを記事にしてみたのですが、少しでも参考になる部分はあったでしょうか。
チームで成果をだしていくのは気持ちのいいものですが、「言うは易く行うは難し」で、とにかく工夫して取り組んでいかないといけないものです。ただ、自分はしっかり意図した取り組みを続ければ複利的に成果がでてくると信じているので、これからも意図をもって実行していきたいと思っています。
ちなみにそんなカミナシですが、新規事業や新規プロダクトをどんどん展開していくために、チームで成果をだせるプロダクトマネージャーやその他職種も全方位で積極採用をしております。
ぜひ、興味のある方はまずはカジュアル面談をしましょう!!