ビジネスを哲学する|16. ワーカホリックって何だろう?
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モチベーションは維持しにくい。
たとえば、組織の中で楽しみを見いだすことができていたとしても、楽しみはそのときによって得られたり得られなかったりする。楽しみだけでなく、評価だって得られたり得られなかったりする。(お金というモチベーションについては前の記事で書いたとおりだ。)
楽しみや評価のようなモチベーションには波があり、維持することが難しい。
それなら、目的をモチベーションにするのはどうだろう。
組織で働いているなら、組織の目的をモチベーションにするのはどうだろう。
目的は、ずっとそこにあってくれる。目的には波がない。
カフェの紹介記事をネット公開する3人の組織の場合なら、「カフェの紹介記事をネット公開する」という目的は、朝も晩もそこにある。ケーキを売る組織なら、「ケーキを売る」という目的は、朝も晩もそこにある。
それなら、組織の目的をモチベーションにしてしまおう。言ってみれば、自分を組織と一体化させてしまうのだ。
そうすれば、モチベーションはずっと維持される。
ここに、〈恒久的参与 perpetual engagement〉と呼ぶべき状態が生まれる。モチベーションがずっと維持され、つねに役割を果たそうとしている状態だ。
朝も晩も目的に参与し、エンゲージしている状態。人はそれを「ワーカホリック」と呼ぶ。
以前、リスの話をした。リスにはやらなきゃいけないことがたくさんある。でも、リスは時間に追われていない。
時間に追われていないだけでなく、リスは、目的にずっとエンゲージしているわけではない。だから、何かをしていても、眠たくなれば眠るし、外敵が来れば逃げる。
人間が忙しいのは、時間に追われているからだけではない。目的にずっとエンゲージすることができるからだ。つまり、目的をモチベーションにすることができるからだ。それは個人の目的の場合もあるし、組織の目的の場合もある。共通しているのは、目的には波がなく、ずっと維持されているという点だ。
この状態になると、何かをしているときに誰かが割って入ろうとすると、「いま忙しいから」と言うようになる。忙しいからと言って断るようになる。
目的とはおそろしいものなのかもしれない。
それにしても、組織の目的にエンゲージするなんていうことが、どうしてできるのだろうか?自分と組織を一体化させるなんていうことが、どうしてできるのだろうか?
つづく
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