見出し画像

蔵書紹介:年収は「住むところ」で決まる/エンリコ・モレッティ

本の概要

『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』エンリコ・モレッティ (著), 安田洋祐(解説) (その他), 池村千秋 (翻訳)

経済の地域格差についてアメリカの事例を使って書かれている。私は日本国内の地域格差を重く評価しているので、本書を読むことで地域格差の仕組みや対策を学びたい。

私の国内地域格差論

「同じ国、同じ業界であれば地域が異なってもスキルや成果に大きな差はない」と昔の私は考えていたが、実際に都内で働きながら地方都市(大阪、名古屋、仙台)との協業を経験した際にスキルや経験に大きな差があると感じてしまった。

人単位の素質に地域の優劣はないと思う。一方で仕事の数や種類の多寡による経験の差や、プレーヤーやベンダーの数の差による先進技術の導入事例の差が大きい。思っている以上に都会は仕事のサイクルが早くて変化が大きいし、地方は仕事の変化が小さい。あくまでも人の素質に差はないが、集団の経験値の差によってスキルや成果に差が出やすい。

IT業界は流行の移り変わりが早いという点も格差の原因だろう。私が見た例では、2015年〜2020年ごろにプロジェクトマネジメントやクラウドサービス(AWSなど)の普及について東京とそれ以外では5年〜10年程度の差があったように思う。このときはIT製品・サービスの展示会イベントでの出展内容や訪問者との対話内容、また、実際の案件での協業時のスキルに差異を見た。組織の違いによる影響もあるとは思うが、同じ会社・同じ部署・同じチームの別ロケーションであっても(つまり同じルールで働く人たちの間であっても)違いが出たため、このときに地域格差の存在を実感した。

ただし、これは総合的に見ると都会に比べて地方のほうが不利なケースが多いというだけであり、地方の人・集団のスキルや成果を一様に批判したいというわけではない。都会でも上昇志向がない人やスキル不足や時代遅れの例は多いし、地方でも優秀な人材はいる。また、都会の先進性・革新性の高さが好まれるとは限らないし、地方の保守性の高さが好まれるケースもあるだろう。性質の違いとその良し悪しは分けて考えるべきである。

購入経緯と読書状況

友人から紹介されて購入した。まだ読んでいない。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集