機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 なぜこれを映画に
なんでこんな事に、という感情はなかったんです。
何となくお察ししてますけどね、てな感じの心構えで観に行ったので。
そして、「やっぱりか」という落胆した悲しい気持ちで鑑賞後劇場をあとにしたのです。
新しい絵の綺麗なガンダムが観れただけでもありがたいと思わないといけないんでしょうか。
※以下、物語の内容に触れる部分(ネタバレらしきものあります)
1.まず冒頭から台詞の間、会話の間がワンテンポ遅く聴いてて気持ち悪い。台詞自体のリズムも悪い。
ベテラン声優に配慮しすぎたのか、序盤のシーンでは台詞合わせの段階のようなやや気の抜けたやり取りが見受けられた。
それとも台本が悪いのか、短い掛合いなのに下手な会話をしていて、当時のガンダムのスッキリと短い文章に、似せて作ってある、という印象。
せっかくの劇場版なのだし初代ガンダム特有の短くキレの良い印象に残る台詞がもっと聴きたかった。
2.島に取り残されたアムロに危機感があまり感じられず、当時のTV版でククルス・ドアンに放った
「よくも子供たちを手なずけたもんだ」
というアムロらしいイヤらしい台詞もなし。
行方不明になったガンダムをあてもなく探しに行くアムロなのだが、その前にククルス・ドアンともう少し話すなりすればいいのに、との思いが募る。
そもそも、アムロを都合よく島に1人置いてけぼりにする為に無理矢理ガンペリーを撤退させた感が否めず、なんだか物語の作り方変だよな、が序盤から最後まで薄っすら感じられる。
3.せっかくククルス・ドアンというキャラクターに焦点を当てたのに、只々、ククルス・ドアンを格好良く描きすぎなところが格好悪く、浅く掘った人物像で残念な気持ちになる。
周囲に恐れられる程のエースパイロットという設定も何だかどうでもいいというか、いらないなと感じる。
4.子供が多すぎる。みんな良く喋り、物語の尺を伸ばしたいがために子供たちを多く登場させたのかと思えるほどクドい、結構にクドい。
そもそも、核弾頭配備している島で孤児を育ててたらそのうち軍が来て危ないことになるって解るだろうし、隠れて住んでいる感が無い。
5.後半盛り上がるはずのサザンクロス隊という高機動ザク部隊。
物語おもしろくないんだから、せめて敵キャラクターだけでも、との祈りも虚しく敵キャラたちのダサさで盛り下がり、中でも顔にトカゲのタトゥーをした北斗の拳のザコキャラのような男はちょっと何か違和感が凄い。
流石にこのキャラクターはダサすぎると思うけど、もしかしたら一周回ってこういうキャラが流行っているのか、と気持ちが揺らいだが、サザンクロス隊というネーミングセンスが北斗の拳っぽいし、今の流行りを無視したオジさんによって考案されたのだろうと予測した。
「と、文句ばっかり言われてますけど、モビルスーツがバーンと登場すると、貴方みたいな昔からのガンダムファンは盛り上がるんですよね」
みたいな感覚で創ってんじゃないか、と被害妄想的な感情も押し寄せてきて、とっても腹立たしい思いをして。
ちょこちょこホワイトベース出したり昔のBGM使ったり、マ・クベとかレビル将軍をチラチラ、シャアは顔も出さず声3秒だけ、とかで誤魔化され。
この内容で1900円を支払わされるのはやはり納得いかず、パンフレットも買うことなく、「騙された、分かってはいたけど」と帰路に着いた。
ちゃんとした綺麗なガンダムをやっと観れたのに、こんな映画になっていたなんて、何とも皮肉な。
これが初代ガンダム最後の作品か、と思うと、やんなきゃ良かったのに、と、綺麗に描かれたガンダムをありがとう、という思いがぶつかり合い、なぜだか哀しい気持ちだけが宙に舞っていた。