東西で分かれる支持基盤――2024年衆院選に見る日本の地域格差
衆院選のポイント
またしても先の選挙についての考察をまとめたいと思います。今回の衆院選のポイントは以下の三つだと個人的には考えています。
自民党の敗北とその要因
立憲民主党は勝利したか
少数野党の躍進
2、3に関しては以前、エッセイにおいて触れましたが、要は自民党の反石破層が若者を中心に国民民主に流れたが、立憲民主に関しては高齢者を中心に浮動票が流れたのではないか、という考えです。
今回は自民党の敗北、特にその勝敗のコントラストに関して興味深い現象が見られたので、考察をしてみたいと思います。
東西格差
まず今回の小選挙区の結果を見てみます。
野党を示す青色がかなり広がっているのが分かります。小選挙区で自民党が負けるというのは、想像以上に支持が落ちていることが目に見えて分かります。
次に岸田内閣時の2021年の総選挙です。
立憲民主党の支持が2024年よりは少ないように見えます。
さらに2017年の総選挙です。
安倍内閣の強さを示す結果となっています。各県の1区や都市部でも自民党が優勢となっています。
そしてさらに少し遡って2009年の総選挙です。この選挙で自民党は大敗し、民主党を中心とする野党と政権交代を行うことになりました。
明らかに青一色で当時の野党が圧勝したのが目に見えて分かります。しかし全体的な傾向とは別にある特徴があります。
西高東低の自民支持率
それは西日本では自民党の勢いが落ちているときでも根強い小選挙区候補がいるのに対し、東日本では民主党系の候補が勝つケースが多いということです。この傾向は2024年や2009年のように自民党が敗北するときに特に大きく傾向として現れるようです。
以下、2024年の衆院選の結果を見ていきます。
地域別に見ると九州の場合、熊本県は今回でさえ自民党が全勝、都市部である福岡県であっても自民党が優勢です。九州内で自民党が弱いのは伝統的に大分、佐賀です。この2県は以前から非自民候補が強い傾向があります。
四国でも自民党が強い傾向は顕著です。2009年でさえ圧勝しています。また中国地方は山口県は言うまでもなく、島根や鳥取も自民優勢です。広島や岡山でも自民候補が強い状況は変わらないようです。
近畿圏は大阪だけが維新の独壇場ですが、これは地域性の強さであって全体的な傾向と照らし合わせても意味が無いように思います。それ以外の府県では野党候補の数が半数程度まで上がっています。
中部、北陸地方は愛知は野党、岐阜、富山、石川が自民、それ以外の県は同数程度になり、自民党が弱い傾向が見えてきます。
関東甲信越、東北になると群馬、山形の自民全勝以外は野党優勢が顕著です。特に東京、神奈川、千葉、埼玉は野党の強さが目に見えて分かります。
北海道に至っては圧倒的に野党が勝利する構図です。
西日本で自民党支持率が高い理由
西日本で自民党の支持率が高い理由はいくつも存在し、その辺りは学問の領域で精緻な分析をしないとその実態を洗い出すのは難しいでしょう。
ただ、一つ考えられるのは出生率の高さなどが影響していることはあるだろう、ということです。
住みやすさや、指標に表れにくい満足度が影響している可能性は高いでしょう。現状に満足しているのならば与党(=自民党)を支持しないという選択肢が出てこないからです。
加えて西日本の場合、各県の県庁所在地が人口移動の防波堤として機能していることもあるでしょう。県内の人口が集中する都市が存在し、その次に各地方の大都市が存在するという二段構えの構造となっているため、人口流出がしにくく、地域経済の衰退が抑えられているという側面もあります。
一方東日本では県庁所在地が衰退し、また東京へのアクセスの良さから若年層が首都圏に吸収される構図が極めて顕著です。この差が西高東低の与党=(自民党)支持の原因の可能性はあるでしょう。
また日経新聞の2021年の記事でも自民支持は西高東低の傾向があることに触れられています。
こうした傾向自体は地域特性もあり、一概に善悪を断ずることは難しいでしょう。とはいえこれが分断を生む可能性に関しては憂慮すべきかもしれません。
アメリカ大統領選と日本の比較
この記事を書いている時期に丁度、アメリカ大統領選の結果が出たようです。日本の報道機関の予想(期待?)とは裏腹にトランプ氏が勝利しました。しかもほとんどの激戦州を押さえての勝利となったようです。
このアメリカの大統領選も分断が顕著で、東西海岸沿いの都市部は民主党に、中央部は共和党と明確に支持が分かれています。
もちろん、アメリカほどの分断が起こるとはここ数年では考えられませんが、今後十年単位でこの傾向が進む可能性は否定できないでしょう。
日本の東西格差が今後どのような動きを見せるのか、注視していきたいところです。