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「大学全入時代」ではなく、「大学入試早期化時代」

「大学全入時代」の到来が叫ばれて久しいですが、大学受験を間近に見る現場での感覚では全くそうした状況ではありません。

記事内でも河合塾の担当者が語る通り、受験者の希望の偏りを無視すればすでに全入させることは十分に可能でしょう。

「選ばなければ大学に入れる時代」が来たと結んでいます。

しかし、こうしたロジックは「独身男性と独身女性の数が等しいから選ばなければ誰でも結婚できる」といったものと同じレベルのもので、個人の志向を無視した無意味な考察です。

「選ばなければ大学に入れる時代」は昔から

さて、まるで最近になってから、「選ばなければ大学に入れる時代」が来たような表現ですが、以前からそうした状況は続いていました。

いわゆるBF大学(以前はFランク大学)はこれまでもほとんどの受験者を入学させていました。

かつては中国人留学生を現地までスカウトに行き、補助金で大学を運営するも就学ビザで入国した学生が失踪するなどの問題を起こした大学もあります。

その点では昔から選ばなければ大学に入れた、のです。

ただ、近年は多様な入試形態での入学者(総合型や推薦型)が増えたこともあり、学力だけで線引きをしなくなっています。

そういった意味では、誰でも入れる大学は増加しているのは間違いありません。

しかしそうした大学の多くは受験時にも、そして入学してからも負荷のかかる課題などやリメディアル講座などのフォローアップも充実させており、学力の低い学生の成長機会という意味では、むしろ状況は好転していると言えます。
(かつては入学後放置、留年、退学のコンボになる学生が結構な数いました)

減少する浪人生

少子化の流れを受けて、浪人生(=既卒生)は年々減少しています。

共通テストの受験者数も減少していますが、既卒生の受験者現象は顕著で、昨年比で4855人減少、昨年が5606人の減少だったことから、毎年10%弱の減少幅で推移しています。

既卒生が通う予備校にとっては冬の時代が来ています。

駿台予備校など、大手予備校は校舎を大量閉鎖し、事業計画の再編を余儀なくされています。

そうした一方で受験業界の中で盛り上がりを見せている部門が存在します。

中学受験の盛り上がりと受験の早期化

中学校受験が盛り上がりを見せています。

2022年の中学受験においては、首都圏の小学6年生の17.3%にあたる5万1100人が受験しています。

これは私立、国立中学受験者のみで、公立一貫校の受験者を合わせると6万2100人が受験しているということです。

これは2割の生徒が受験をしているということになり、大学進学者が同世代人口の約50%であることを考えると、非常に高い数値であることがわかります。

この原因は複数考えられます。公立中学校への不安や、海外経験などの多様な活動を評価するという側面もあるようです。

しかし、最も大きな理由は大学受験を避けることができるということです。

MARCHの付属校や、中堅校の人気が上がっていることからもその傾向が見えます。

そうした学校へ進学し、内部推薦や指定校推薦をとることで、難関大学の受験を避ける意図が見えます。

これは逆に考えれば、難関大学などの入試が決して容易になっていないことを示しているのではないでしょうか。

加えて都立高校の入試の難化や受験のしにくさも中学受験増加に拍車をかけているでしょう。

大学入試は決して簡単になっていない

以上のことからもわかるように、大学入試は決して簡単になったいないだけでなく、規模は縮小しつつその主戦場を移し、中学受験など早期化しています。

情報を集められていない層は、すでに戦いが始まっている(あるいは終わっている)ことを知らずに戦の名乗りを上げている可能性も高いのです。

マスコミの表面上の数値遊びに惑わされることなく、情報をしっかりと集め判断することが必要のではないでしょうか。

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