東京理科大の「女子枠」に関する雑感
東京理科大学が2024年度から「女子枠」を設けることを発表しました。
こうしたアファーマティブアクションを意識した入試制度は他大学でも導入の予定が発表されています。
こうした枠に関しては、以前から賛否が議論されてきました。
アメリカでの事例
アメリカでは人種によって大学の人数枠が設けられていることは有名です。
これは人種による経済格差などを是正するという目的もあってのものです。
一方で、女性枠という制度を取っていないにもかかわらず女子学生の比率が高いことも知られています。
こうした情報に対し、アメリカは女子に性的な縛りをかけて子育てをしていないため、女子が自由に能力を発揮している。方や、日本は女子を家の中に閉じ込めて閉鎖的な性的搾取を行っているために理系大学の進学率が低いのだ、という主張が存在します。
こうした主張には妥当性があるのでしょうか。
女子の難関大学合格率の低さの一因
私自身、高校で教鞭をとっている中で感じるのは女子生徒の理系教科への興味関心は決して高くないということです。
この状況はもちろんこれまでの性的バイアス、女子は国語や英語が、男子は数学や理科が得意という思い込みが社会に蔓延し、その環境で育ったからなのだ、ということも多少の原因として否定はできないでしょう。
しかし、電気や機械、土木などに興味のある生徒が少ないのは決してそれだけではないように感じます。理系学問のいくつかは汚れや肉体労働的なものと切り離すことが難しく、そうした環境を好まないのは明らかに女子生徒が多いようです。
なぜアメリカでは理系の女子比率が高いのか
では、なぜアメリカでは理系の女子比率が低くないのでしょうか。
これには諸説ありますが、アメリカではコンピュータサイエンス系の学問が発達していることはその理由としてあげられるかもしれません。
電気、機械、土木などと比べると女性が入りやすい環境である(という印象、実際には…)ということもあるでしょう。
しかしそれ以上に考えられるのは入試制度の問題でしょう。
アメリカにおける大学入試の多くはSATと呼ばれる統一テストに加えて、面接やエッセイを書くことが試験となっています。
SATに関しては、数学の内容は比較的容易で日本の受験数学のようなマニアックな問題はそれほどありません。
一般にコアな問題への取り組みほど男子が熱心であるという印象があるため、これらが日本の入試制度において男子を有利にしていると言えます。
さらに、エッセイなどの文章作成に関しては女子の方が明らかに得意な生徒が多いように感じます。
その結果、入試制度において有利であり、目標に対しても到達感を感じやすいためアメリカでは女子学生の率が高いと考えられるのではないでしょうか。
もちろん、これらの男女の傾向や印象そのものが既存のバイアスによって人間本来の姿から歪められたものだ、と言われたらそれまでですが。
「女子枠」も悪くないが、入試改革をすべきでは
こうした傾向を払拭するために「女子枠」を設けるというやり方は決して悪いとまでは言えません。
しかし、個人的にはこのような強引なやり方よりも、入試改革を行うべきではないかと考えています。
総合型や推薦型などによるプレゼンや口頭試問、小論文や面接、ディスカッションなどを試験に課せば、基本的には女子の方が有利になりやすくなります。
これに加えて評定平均(通知書の平均スコア)を受験要件に課せば、必然的に女子の入学者が増加するはずです。
無理やり女子枠を作り、女子枠という理由で志望する受験生を含めてしまうぐらいならば、受験制度でバイアスをかけて志望動機や学習意欲の高い学生も広く募集するほうが、大学の目的に沿った入学者を選別する手法として機能するように感じます。
こうした「女子枠」を設置する大学は増加傾向にあります。これに続く大学が出てくるのか、注視していきたいと思います。