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予備校「ニチガク」の閉鎖は大問題だが、「不幸中の幸い」の側面もある
「ニチガク」閉鎖
首都圏では名の知られた予備校の一つである「ニチガク」が、年明けに急遽閉鎖されるというニュースが流れました。
「ニチガク」運営する日本学力振興会は破産申し立てをする予定であり、債務整理が進むと報道されています。
直前まで生徒を募集していたことなどから、計画倒産の可能性もあると言われています。
債務の内訳
この「ニチガク」の負債総額は1億円弱と見られているようです。主な債権者は約150人ほど、大半は授業料を納めた生徒や賃金未払いの講師と言われています。
ニュース記事によると1か月ほど前に250万円を払って通い始めたばかりの生徒もいたということです。
とはいえ突然のこと、と感じているのはどうやら通っていた生徒だけのように見えます。実際、強気の出店を心配する人も少なくなかったようですし、12月には給与の未払いを起こしているとも言われています。
例外はありますが、基本的に給与未払いが発生した企業が永らえるケースはそう多くはないでしょう。おそらくは倒産目前であったことは内部の人間はうっすらと感じていたのではないでしょうか。
寝耳に水だが、不幸中の幸いかもしれない
そういった裏事情とは無関係で、受験生にとってはこの倒産、寝耳に水でしょう。特に受験直前期の受験生にとっては精神的に負荷をかける出来事になったのではないでしょうか。
受験業界の中には、3月まで長引かせるのが業種的な良心だ、という声も大きいようです。確かに受験が終わった時期に閉鎖となれば衝撃を受ける受験生もそこまで多くはなかったの間違い無いでしょう。
ところが個人的にはこの時期の大学受験予備校であれば、この倒産は不幸中の幸いであったと感じています。それは以下のような理由です。
中高受験の場合、本番まで塾がつきっきりであったり、試験の時期が3月であったりといった具合の為、1月の塾の存在意義は極めて大きいものです。ところが大学受験においては、年明けからの授業はそこまで意味のあるものではないのです。そもそもこの時期にやることと言えば直前演習です。要は自分で問題を解き、それを復習することが重要となるわけです。単純に予備校で座って授業を受けていても得点は上がらないし、そうしたことをしている時期でもないのです。
つまり授業的なカリキュラムはすでに終了しており、各人が対策の演習をしている時期がこの年末年始ということになるのです。
確かに予備校の倒産といういう突発的なトラブルは大きな不安要因ではあるでしょう。しかし、現実的には学習に支障が出るという状況では無いのでは無いでしょうか。
予備校に頼らない姿勢の重要性
浪人をして予備校に通うのは極めて普通の行動です。しかし予備校に通うことと予備校頼みにすることはまた別の話です。これは学校に関しても同様のことが言えます。
受験勉強は自分で学習するというスタイルを確立するという意味合いも存在します。決して目標の大学に合格することだけが目的ではありません。
今回の「ニチガク」の倒産は関係する受験生にとっては不運なアクシデントであり、関係各者には同情を禁じ得ないのは事実です。しかし少なくとも受験生という立場に対して考えた場合、決して取り返しのつかない不幸でもありません。少なくとも自分で学習管理ができる人間にとっては、虫に刺されたぐらいの意味合いしかないはずです。
今後こうした予備校の倒産が増加するの少子化が進む中では必然でしょう。だからこそ、どんな状況でも学習に向き合えるような学習スタイルを身につけさせるということがますます必要になっているのではないでしょうか。
受験生を担当する教員としてこの倒産劇を通じて改めて痛感したのです。