学校教員が森川ジョージに学ぶべき「タダ働き」拒否の姿勢
森川ジョージ氏のポスト(ツイート)
ボクシングマンガ、「はじめの一歩」で有名な漫画家の森川ジョージ氏がX(旧ツイッター)で自身の仕事の依頼に対する姿勢をつぶやいています。
森川ジョージ氏はツイートで以下のように語っています。
この発言は冷静に考えれば、至極当然のことを言っているに過ぎません。物書きに無料で作品依頼はできないのは小学生でもわかる道理です。
しかし、これをわざわざSNSに投稿するということは、そうではない人達が部外者のみならず、森川氏の業界内にも存在するということなのでしょう。
学校現場にはびこるタダ労働
個人のクリエーターほど弱い立場ではないにも関わらず学校現場ではタダ労働がはびこっています。
部活動の多くは時間外労働でありながら、残業手当が払われていません。
面談や補習などの多くも時間外で行われていますが、賃金が払われていません。
これらの多くは学校長からの業務命令ではなく、教員のボランティアとして扱われています。
(管理者は業務命令であるとは決して言いません。)
さらに、それらの多くは生徒や保護者の要望を受け入れた(受け入れざるを得ない)結果行われています。
私自身も生徒のための面談の時間を勤務時間外に設定させられたことは何度もあります。
保護者面談の希望時間調査を配布しても、土日や18時以降を指定する人は決して少なくありません。
そもそも土日の部活動の引率は完全に時間外ですし、時間給もほとんど発生しません。
仮に試合に出ません、と顧問が決めたとしてもクレームの嵐は避けられず、挙句は校長にねじ込んで引き受けざるを得ない状況になるのが目に見えています。
タダ働きを許容してきた日本社会
失われた〇十年と言われる不景気が今も続いています。
その原因を政府や与党、あるいは失政野党の責任に押し付け、庶民の多くはは自分たちが被害者である、という認識をしています。
しかし、その停滞の原因の一つはタダ働きを許容してきた日本社会の空気感であり、個々人にその責任が存在することも事実です。
学校の教員に平気で時間外の対応を強要してきた人の多くは、自分の仕事においてそうした無理な対応を強要された人でしょう。
「自分がそうなのだから、公務員という身分保障があり、給与も高い教員ならばが対応するのが当然だ。」という思考が根底に存在します。
こうした思考が「お客様は神様」という言葉を都合よく解釈し、タダ働きを顧客サービスと読み替えて労働の価値を低下させてきたのです。
きちんと断ることが全体の幸福につながる
ここ数十年にわたって労働の価値を低下させ続けてきた結果が、現在のデフレ、円安、賃金安につながっています。
一方で権利意識の高まりやSNSの普及により、違法、脱法的な処遇が可視化される時代になり、タダ働きを押し付ける悪質な顧客(そんな人間はもはや顧客ではないのですが)を個人でも糾弾することが可能になっています。
また不当な処遇を受けた場合においても、それを公にする力を個々人が持つ時代となっています。
そんな時代だからこそ、しっかりとタダ働きをそれぞれの職場や立場において私たち自身がはっきりと拒絶しなければなりません。
(そして逆に自分も押し付けない倫理観を持つことが必要です)
そうした無理なタダ働きを一つ一つ潰していくことが、労働の価値を高め、多くの職業に対してのリスペクトを生み、社会全体の幸福につながるのではないでしょうか。
だからこそ、この森川氏のスタンスはあらゆる職業の人が認識し、共有すべき価値観だと私は思うのです。