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多子世帯の大学無償化は誇大広告、実際には学費割引制度


多子世帯大学無償化の大枠が判明

先日「異次元の少子化対策」の一つとして報じられた多子世帯大学無償化の大枠が発表されました。

以前、第一報の時点でも私は記事として書いていましたが、その予想に近い状況のようです。

先日予想していたのは国立大学の学費標準額相当になる、と考えていましたが、どうやら私立大学に関しては多少の色を付けた支給になる見通しです。

大学の場合、授業料免除の上限は、国公立が標準額となる約54万円、私立は約70万円。私立は学校ごとに授業料が大きく違うため、私立大学の平均授業料(2021年度約93万円)と国立大学の授業料の差額の半分ほどを標準額に上乗せした額が支援対象となるという。入学金の上限は、国公立大が標準額の約28万円、私立大が平均的な入学金の額である約26万円となる。

この点に関しては予想よりも多めになったこともあり驚いています。

しかし、それとは別に厳しい制限が加えられたために、この制度少子化対策に寄与しないでしょう。

扶養家族のみが無償化の対象

今回の施策において最も厳しい条件は、子供が3人ともに不要状態にある、という状況でないと適用されない点です。

 対象となるのは、扶養する子どもが3人以上いる世帯の子で、所得制限はない。例えば3人きょうだいで、第1子と第2子が大学に在籍していれば、2人とも対象となる。ただ、第1子が卒業後に扶養を外れると、扶養する子どもが2人となるため、第2子と第3子は対象外となる。

仮に長子と次子、三子が3歳ずつ離れていたと仮定した場合、長子が大学4年までは無償化の対象です。この時点で次子も大学1年に在学しているとすれば入学金、授業料が1年間は無償の対象となります。

しかし、次年度は長子が大学を卒業した場合、扶養を外れることになります。

この場合は次子に関しては2年次から学費を全額支払うことになります。

国立大学の場合

全員が国立大学と仮定した場合、以下の額の支払いが免除になります。

1年次  :入学金+授業料=82万円
2年次以降:授業料    =54万円
これによって
長子 82万円+54万円×3=244万円
次子 82万円      =82万円
総額 244万円+82万円  =326万円

では本来、第3子まで自費で支払う場合はどうでしょうか。

一人当たりの学費 × 3人分ですので
(82万円+54万円×3)×3=732万円

つまりこの制度設計の場合、通常732万円かかる子供の学費を半額程度に抑えることが可能、ということになります。

私立大学の場合

ちなみに私立大学の場合はどうでしょうか。

1年次  :入学+授業料支給額 =96万円
2年次以降:授業料支給額    =70万円
これによって
長子 96万円+70万円×3=306万円
次子 70万円      =70万円
総額 260万円+80万円  =340万円

上記の額が免除となります。では実際にかかるはずだった学費はどの程度でしょうか。

一人当たりの学費 × 3人分ですので
(119万円+93万円×3)×3=1194万円

およそ全体の額の3割程度が補助される、ということになるでしょう。

これは大学無償化ではなく、学費割引制度という方が正確かもしれません。

多子世帯からすればありがたいが

もちろんこうした制度が多子世帯に対する補助としては十分に機能しますし、家計的にも助かるご家庭は多いでしょう。

しかし一方で、実よりも名が大きく喧伝される状況となっており誇大広告的な印象を抱く部分も多い政策のように感じます。

また実際には多数を占める一人っ子世帯や子供二人世帯からの不公平感を誘発させる政策であることも事実でしょう。

加えて政策の持続性が危惧される部分もあります。前回の記事にも書きましたが、この制度を当て込んで子供を産んだが時の政権の政策方針によって廃止になる可能性は十分にあります。

正直なところ、インパクトは強めだが対象者は少なく、マジョリティの不満を生むリスクを抱えており、少子化対策への実効性も低い政策なのは間違いないでしょう。

とはいえ、大学無償化という方針への第一歩という意味では評価をしたいと個人的には考えています。

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