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【題未定】文化祭の本質を考える:楽しさと教育的価値の交差点【エッセイ】

 ここ二日間、勤務校では文化祭が行われている。弊校の文化祭は各クラスが模擬店を出店するなど、比較的学園祭の要素の強いものだ。そのため楽しみにしている生徒も少なくない。

 文化祭をこの時期にする学校は多いが、そこには一定の根拠が存在する。まずは11月の第一週は「教育・文化週間」として教育・文化に関する行事を集中的に実施し振興を図る目的として昭和34年の閣議了解により毎年実施されている。

 また文化芸術振興基本法の第二十一条に以下のようにある。

国は、広く国民が自主的に文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造する機会の充実を図るため、各地域における文化芸術の公演、展示等への支援、これらに関する情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

文化芸術振興基本法 第二十一条

また同法第二十三条では青少年の文化活動の推進に関しても触れられており、実は日本においては国家が総出で文化振興を行っているのだ。こうした法的根拠もきちんと存在し、各地で多様な催しものが行われているのだ。

 したがって本義的には文化祭においては文化振興に関わる展示や公演を行うのが筋であり、模擬店を出すことは決して目的ではない。とはいえそうした野暮なことを言っても仕方が無いし、模擬店経営をする経験も高校生、勤め人の子供が大半である現代の子供にとっては貴重な経験の一つでもあるだろう。

 事実、普段の教室や学習面では全く目立たない生徒が指揮統率して運営を担ったり、授業中にまともに起きている様子がない生徒が殊更に熱心に調理をする姿を見るとその教育的意義は決して疎かにできないとも感じる。

 また文化祭中は美術や写真の展示も行われる。私自身はこうした展示を必ず見に行くようにしているが、ここでも普段の授業でそこまで目立つわけではない生徒の文化活動の成果を見て驚くことは少なくない。

 進学校の生徒はもちろんだが、教員側も得てして学業成績を生徒の評価軸の中心に据えがちである。もちろん進学を目指す以上その指標が進路決定において重要な要素であることは否定できない事実だが、それが生徒自身の人物像そのものを示すものではない。その点でこうしたイベントは生徒の多様な面に気づく機会を与えてくれる場なのだと感じる。

 そうは言っても模擬店に終始するだけでは文化活動の意義も薄れてしまうだろう。楽しかったで終わっても良いが、それ以外の付加価値を得る体験ができれば教育・文化週間という名目も立つというものだ。

 本来はそうした文化活動を学校の中で正当に評価することができれば望ましいのだろう。ところが評価という話を含めると学校組織においては成績と切り離せられなくなってしまう。それらを大学入試で使う、点数化するという制度となれば文化活動の本義を失うものともなるだろう。

 毎年のことではあるが、学校活動における文化活動の在り方について考えさせる一週間となりそうだ。

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