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臨時講師不足が問題なのではなく、臨時講師を前提としたシステムそのものが問題


臨時講師不足で回らない教育現場

教員不足に関してはこのnoteで何度も取り上げている話題ですが、AERAのネット記事にそのことに関する記事が上がっていました。

記事の内容としては以下のようなものになります。

  1. 不足しているのは教諭ではなく臨時講師

  2. 採用試験倍率低下による臨時講師「人材バンク」の枯渇

  3. 団塊世代の大量退職を想定しない採用計画

  4. 今後、数年で教員不足は解消される見込み

記事内では少子化によって教員不足は10年以内には解消されるが、それまでのつなぎをどうするか、という問題提起がなされている結びとなっています。

しかし果たして本当に教員不足、講師不足は解消するのでしょうか。

臨時講師の不足が問題なのではなく、臨時講師を前提としたシステムが間違っている

この記事で指摘されているように、現在の教育現場における問題の原因は臨時講師の不足です。

病休や育休、突然の退職などの教員の急な不足を支えてきたのが臨時講師制度です。実際、私の知人などでもそうした急な不足に対して臨時講師の声がかかり教員として働いていた人が複数存在します。

かつては現在のような教員不足問題が発生していなかった理由は、この講師の「人材バンク」がうまく機能していたからです。現場での不足に対し、教員をしたいという順番待ちの人が山ほど存在したためにその山から人を借りてくれば不足を補うことができたわけです。

したがって、この「人材バンク」を充足させさえすれば、現在の教員不足問題は解決すると考える人も相当数存在します。

しかし、本当にそれで解決するのでしょうか。

そもそもこの「人材バンク」制度は人間を使い捨てすることを前提としたシステムです。年度途中に着任、中途半端な時期に契約解除といったことは少なくありませんでした。

例えば10月末に産休に入る職員の代替教員として配属される場合、当然ながら11月初めからが着任になります。産休職員の復帰が1年後になるか、あるいは育休を取るかによって不足人員の数は変化し、その復帰によって代替教員は振り回されることになります。

仮に契約が10月までの場合、そこから次の仕事(特に教員の場合、私学などでは4月採用がほとんど)を探すのはかなり難しくなります。

これまで教育委員会は正規採用ではない講師が困窮しても知らぬ存ぜぬの対応を繰り返してきました。そして、現在の講師不足はこうした冷遇が確実に影響しています。

しかし時代は変わり、国内では労働人口の減少から多方面で人不足が問題化しています。こんな状況において、どうして身分が不確かな単年度契約の職業を好んで選ぶ人が存在するでしょうか。

臨時講師前提としたシステムはこれまでも道徳的に疑問符が付く点が多々ありました。とはいえ少し前までは人員供給のシステムとしてはそれなりに機能してきました。しかし、今日においてはもはやその供給システムとしても機能していないのです。

少子化でも教員不足は解決しない

恐らくですが、少子化が進み団塊の世代の大量退職、氷河期世代の中堅教員空白期間をある程度抜けたとしても教員不足は解決しないでしょう。

学級定員の削減は世界的な潮流ですし、国土の特性上、ある程度の小規模校に関しては維持をしなければならず、集約化にも限界が存在します。加えて、余剰人員無しで乗り越えたという教育委員会や文科省の成功体験(彼らの中だけの、ですが)が余剰人員を配置するという「甘え」を許すことはないでしょう。

一方で講師に対して現行の待遇以上のものを準備できるはずもなく、「人材バンク」としての縮小は今後も継続していくはずです。

教員不足の解決を考えた場合、学校現場はこの講師システムから脱皮し、コスト増を受け入れてでも現場の正規教員の増員へと舵を切るべきでしょう。しかしそれをできるわけもなく、じり貧状態が続くこともまた目に見えています。

教育現場はこれまでの手直しではどうにもならない状態に陥りつつあり、抜本的な制度改正無しにはこの解決はないと私は考えています。政治的リーダーの登場か、技術革新か、あるいは外的圧力か、何が契機になるのかいまだ見えません。

それがいつになるのか、その日まで教育現場の戦線を維持できるのか、それが現在の最も大きな課題なのかもしれません。

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