「ゆっくり丁寧」な授業は逆効果
学校の授業や業務におけるプレゼンテーション、講演会など、多数の人々に何かを訴えかけたり、説明するという機会はオンラインのやり取りが進み、増加傾向にあるのではないでしょうか。
こういった機会が全くない人もそう多くないでしょう。
「ゆっくり丁寧」に話しなさい、というアドバイス
そうした機会において、『「ゆっくり丁寧」に話した方が良いよ』というアドバイスをもらった人は少なくないのではないはずです。
このアドバイスを受けた理由は、聞いていた人の中に、おそらく話の内容があまりよく理解できなかった、理解するのに苦労があった人がいたということです。
たしかにその点には改善すべきことがあったのでしょう。
しかし、実はこれが大きな罠なのです。話を「ゆっくり丁寧」にしても実際のところわかりやすさはほとんど向上しません。むしろ分かりにくくなる場合すらあります。
環太平洋大学の研究紀要に以下のような分析がありました。
査読論文ではないとはいえ、これは興味深い内容でしょう。
ちなみに、健常若年者の発話速度は1秒あたり6モーラ、いわゆる早口が7.9モーラぐらいとのことですから、8.5モーラはかなり早口になります。
ある程度スピード感のある話し方が好ましい
難しいと思われることを説明するとき、人はゆっくり説明すれば分かると考えがちです。
しかし、実際には聞き取りやすい速度はそれより上であり、理解に対してゆっくりであることはあまり寄与しないようです。
これは体験的にも納得できます。予備校などのカリスマ講師の授業はそのどれもテンポよくスピーディーです。明らかに学校教員よりも速い速度で話しています。
授業の組み立てをどう考えるか
この結果を踏まえたからといって、授業内容を増やしすぎても難しくなるため、一回の授業あたりの分量を増やすのは難しいでしょう。
しかし、話す速さを上げると時間は短縮できます。
そこで、前回でも触れたように、テンポよく説明を行い時間短縮を図り、授業中の演習に時間を割くというのが最適解のように思えます。
授業の前半部分に説明をコンパクトに纏める。その後はテンポよく説明し、演習をしっかり行う、このやり方は決して間違ってはいないようですが、どうでしょうか。
自分自身、あまり話すのが遅い人は苦手です。
次の話のことを頭の中で考えさせないぐらいのスピードの方が私には合っているようです。