国立単科大学という選択、福岡教育大と九州工業学:九州の大学別受験事情④
旧帝国大学が立地する県にはたいていの場合、必ず教員養成系の国立大学が設置されています。
また、工業系の単科大学が設置されていることも多いようです。
東京には東京学芸大学と東京工業大学、名古屋の場合は愛知教育大学と名古屋工業大学、京都には京都教育大学と京都工芸繊維大学などはその例に上がります。
これらの大学は旧帝国大学と明確に住み分けがなされており、旧帝大では賄えない初等中等教育や地域産業への人材供給を目的としてされています。
今回は九州の大学受験事情に関する記事の第4回目にあたり、いったん最終回にしたいと思います。
九州の教員養成の雄、福教大
福岡教育大学は初等、中等教育の教員養成を目的とした大学です。
福岡第一師範学校、福岡第二師範学校、福岡青年師範学校の3校を前身にもつ、国立の教員養成系大学です。金八先生こと、武田鉄矢氏の母校としても有名です。
(武田鉄矢氏は同大学を中退、しかし種々の活動を評価されて名誉学士号を授与されている)
福岡県内だけでなく九州内での人気も高く、卒業生の教員就職率も全国でトップ5に入っている大学です。
また、九州内の国立大学の教育学部の場合、中等教育に関しては中学校の教員の養成を前提としています。(もちろん、免許自体は高校も取れます)
しかし、福岡教育大学の場合は九州大学が教員養成を前提としていないため、高等学校教員の養成も前面に打ち出している点が他の教育学部と異なる点でしょう。
また附属小中学校を3校抱えるなど、教員養成の環境としては非常に整っています。
就職状況は先述のように高い教員就職率を誇りますが、総合大学ではないことから他職種への就職情報の入手が難しい傾向にあります。
そのため、教員への強い志望を持つ生徒が進学を希望する傾向にあります。
(この点は全国の教育大学も同様ですが)
就職力が断トツ、九工大
九州工業大学は旧制工業専門学校である明治専門学校をその前身に持つ、歴史のある工業系単科大学です。
創立者は安川電機の創業者でもある安川敬一郎で、九州北部の産業界と深いつながりを持つ大学でもあります。
「工学士」の養成機関が当時では珍しく、「西の明専、東の早稲田」と称されるほどの名門です。
現在は工学部のほか、情報工学部を抱える2学部の大学であり、工学部は北九州市戸畑区に、情報工学部は飯塚市に立地しています。
入試難度の関係から、九州大学が難しい高校生が出願する傾向が強く、熊本大学の工学部と比較されるケースが多いようです。
その場合、立地や通学の便を考えずに選択する場合は、
機械、電気、情報系を志望する場合は九州工業大学に、工業化学、建築、土木を志望する場合は熊本大学工学部に進学することが多いようです。
就職力は九州内の国立大学の中でも群を抜いており、有名企業の技術職となったOBOGは非常に多く、技術系での就職を目指すならば九州工業大学への進学目指すのが九州では常識となっています。
偏差値に依らない大学選びと九州で生きるということ
九州における進学指導を批判する向きは多いようです。
曰く、「田舎には都会の大学を知らない無知な教員しかいない」、「ベンチャー企業を知らない教員」、「東工大のレベル知ってます?w」などです。
もちろん、そうした批判を受けてしかるべき指導もあったのでしょう。地元の国立大学を無理やり受けさせられた話を聞くことは、決して少なくありません。(最近の話としてはほとんどありませんが)
強制課外授業や強制部活動参加といった負の側面を九州の学校が持っていた(一部の学校は今でも持っている)ことも事実です。
しかし、私文特化し、数学や理科を切り捨てた進学指導や、偏差値による輪切りだけで考えた進学先の選択が果たして本当に人間の幸福につながっているでしょうか。
伝統と人脈によって評価を受ける地元の大学に進学し、コツコツと社会のためになる目立たず平凡で単調な仕事で社会に貢献する。
決して高くはない給料でローンを組み、家を建て自家用車を買う。週末に家族と回転寿司に出かけ、休日には大自然の中でキャンプをする。
一方で、都会でクリエイティブでイノベーティブな仕事に取り組み、高い給料を受け取り、タワーマンションに住み、残業後には新橋のバルで一杯引っ掛けて帰る。
駅まで徒歩10分の立地の新築賃貸に住み、休日には表参道でブランド品を買って、銀座で回らない寿司に舌鼓を打つ。
どちらも幸せの一類型であり、どちらも真実であり、どちらも幸福で、どちらも不幸せです。
九州に住むということは前者の生き方を取り入れることであり、それは決して無知でも不見識でもありません。
(福岡市内だと、かろうじて後者の生き方を選べる人もいるかもしれません)
単に、幸せという概念に対する認識の違いに過ぎないのです。