ベネッセは教育業界を支配していないし、学校現場と違法な癒着をしてもいない
デイリー新潮の妄想記事?
デイリー新潮がベネッセコーポレーションの闇を暴く、的なスタンスの記事をリリースしています。
教育現場に直接関わりのない人で、なおかつ一般的な公立高校を卒業した人が読むと高校時代に思い当たるような話がいくつも散りばめられており、納得感のある記事になっています。
確かに嘘がある記事であるとは言えません。少なくとも誤った事実が書いてあるわけではないようです。しかしどうにも解釈が恣意的であまりにも視野狭窄であるようにも感じます。
そのことについて、教育現場で職務にあたる一教員の視点から指摘、論じていこうと思います。
文科省との癒着
まず記事内では文科省との癒着について書かれています。
ベネッセが運営する英語技能試験GTECや共通テスト改革、東京都のリスニング試験などに関して、巧みに官の意思決定に食い込んで公金を自社の利益へ還元するような印象を与える内容となっています。
ベネッセが文科省の関係者の天下り先の一つになっていることは間違いありません。しかし、この関係はベネッセが天下り先を準備するから文科省の業務を受注しているという一方的な関係でしょうか。
この手の入試業務を総合的に扱える企業は国内でもほとんどありません。おそらくベネッセか、あるいはリクルート、そして河合塾あたりでしょう。つまり選択肢自体がほとんど存在しないのです。
そしてその中でも最も手広く教育事業を展開しているのがベネッセです。記事内にも同様のことが触れてありますが、なんとも陰謀論をほのめかすような印象となっています。実態としてはベネッセしかいないアウトソーシング先であり、双方の便宜のために天下りポジションが存在している程度ではないでしょうか。
(それが決して理想的な状況とは思えませんが、そこまで陰謀論めいた話ではないでしょう)
教育現場との癒着は存在するか
教育現場とベネッセの交流は同業他社と比較しても盛んです。各地域、学校にはベネッセの営業担当者が存在し、資料の提供や講演会など様々な業務を行っています。
彼らは現場教員とも懇意に接しており、多種多様な情報を収集し、それを学校現場に届けるという仕事も担っています。特に異動者が多く、進学指導経験の乏しい教員がいる中堅レベル以下の公立高校などでは情報収集から指導内容の計画までベネッセ頼みというところもあるようです。
また地域、学区二番手校などは特にベネッセとのつながりが密であり、ベネッセが提供する進路情報誌「VIEW」にもそうした学校の「ベネッセ」を活用した教育成功の事例が数多く掲載されています。
では学校や現場教員がバックマージンを受け取っているようなことはあるのか、というとそんなことは当然ありません。あくまでも公平に見比べた結果、ベネッセが自校の生徒の学力層やニーズにマッチしていると判断しているから利用しているに過ぎないのです。
昨今はリクルートなどがスタディサプリを携えて学校現場に営業をかけてくるような状況も増えました。確かにスタディサプリは非常に有用な動画教材ですし、リクルート社の分析力も高く信頼できるパートナーとなれる可能性は秘めています。
しかし自社模試を1学年、40万人以上が受験するなど大量のデータを持つベネッセと比較されるとデータの量、密度が段違いであり、どうしても分が悪い勝負となるでしょう。河合塾なども同様のサービスを提供することがありますが、やはり地方の学力で言えば中間から下位層のデータがスカスカで一般的な進学校では利用しにくいのが実情です。
結局のところ、ベネッセしか頼るところが無い、というのが現実だということなのです。
アウトソーシングの流れの中で
教員の働き方改革、行政機構のスリム化という昨今のトレンドを踏まえる限り、公的機関や学校が行ってきた業務のいくらかを外部に委託するのは必然でしょう。
ところが行政機関は言うまでもなく、学校組織もまたあまりにも多くの業務を抱えており、これらを一つ一つをそれぞれの業者に委託するのは難しい状況です。
その一方で、これまでも学校組織と伴走し、そして多種多様な業務をに関してのノウハウを蓄えてきた企業こそがベネッセです。
確かにベネッセに依存した教育業界の状況は問題であり、競争相手となるべき他社が成長すべきであるのは間違いありません。しかしそれはベネッセを叩くのではなく、教育産業に参入しようとする他業者にフォーカスを当てていくことではないでしょうか。
デイリー新潮の記事以下のように結んでいます。
無責任に駄文を量産する仕事の慣れの果てがここに見える気がします。
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