「条件節」を理解できない人は増加したのか。
夏を迎え、感染症予防と熱中症対策の両立が難しい時期なっています。
そんな中、マスク着用に関して政府、厚労省のガイドラインが刷新されています。
このリーフレットから引用すると
以前と比べるとマスクの着用条件が緩和されています。
しかしあくまでも、「○○の場合は」着用する必要はありません、とあるように○○の条件を満たしていない場合は着用しなければならないとあります。
ところがどうしたことか、実社会にも、SNSなどのネット言論上においてもこの文章への理解が浅い人、条件節への理解が不十分な人が結構な数いるようです。
「マスクを着用する必要はありません。」という文言しか見えていない人が一定数存在するということになります。
「条件節」について、いつ学習するか
「条件節」については、中等教育において主に学習します。
英語や国語ではもちろん学ぶのですが、実は「条件節」の内容は数学でも学習内容に含まれており、数学Ⅰの「集合と命題」という分野での学習になります。
そこでは、「条件節」を仮言的な命題として取り扱っていて
$$
命題 p \Rightarrow q
$$
pを仮定、qを結論と言います。これが成り立つ(真である)とき、
$$
P \subset Q
$$
集合Pが集合Qに含まれる以下のようなベン図の状況と同一視します。
注:ベン図とは複数の集合の関係や、集合の範囲を視覚的に図式化したもの
厚労省のマスクガイドラインは、屋内、屋外は排反事象(同時に起こりえない)であり、2つの条件「2m以上」と「会話無し」を整理すると以下のようなベン図となります。
こうして整理すると、屋内でのマスクを外すことができる条件は厳しく、誰かと空間を共有する状況ではかなり難しいことが一目瞭然で分かります。
また、屋外の場合は比較的緩和されていることが図からも明らかです。
数学Ⅰのこの単元は特に苦手な人が多い場所であり、全体的な理解度も決して高くありません。
とはいえ、必履修科目である数学Ⅰに含まれており、すべての高校生が学ぶ範囲ではあります。
「条件節」を理解できない人たち
数学的な思考でもそうですが、言語的な点からも条件節を理解することが難しい人は決して少なくないようです。
こうしたツイートにいいねが大量につくことからも、同様の経験をしている人は相当な数に上るのでしょう。
では、そうした「条件節」を理解できない人たちという存在は、近年になって急速に増加してきたのでしょうか。
もしそうだとしたら、言語教育と初等中等教育の深刻かつ重大な問題になるはずです。
しかしながら、教育現場に身を置く個人的な実感としては、多少の言語能力の低下を憂う人や空気感はあれども、それほどの重大な変化があったとは感じられないのです。
SNSによって可視化された
その疑問に対して、堀江貴文ことホリエモンは以下のような主張をしています。
彼の言を要約すると、SNSがそうした人たちの存在を可視化させた、ということになります。彼の意見を踏まえた上で個人的な見解は以下の通りです。
ほとんどの日本人(日本語母語者)は日本語を表面上「読む」ことが出来ます。そしてそれはこれまでも、現在も変わりありません。
ただ、理解力には大きな差があり、テキストに含まれたニュアンスや意味を受け取ることが出来る人はそれほど多くありませんでした。
そうした一般大衆にとって、自ら発信活動をする機会はほとんどなかったため、自分の日本語力の「読めるが理解できていない」状態が顕在化することはほとんどありませんでした。
ところが、SNS時代の到来によって、一般大衆の一人一人が発信者として行動するようになりました。
その結果、「読めるが理解できていない」という人の存在が可視化されるようになった、ということになります。
そうした点から考えると、増えたように見える、が正解なのかもしれません。
自分は理解できているか
私自身はこの文章を書く段階で、自分を理解できている側において書いています。
ただ、自分自身の理解の有無を確認する術は少ないため、その判別は難しいでしょう。誰かに聞いたとしても、正確な評価を受ける保証はありませんし。
ただ、こうしてnoteに文章を書くという行為を普段から行う以上は、自分の理解力への疑いを忘れずにいたいところではあります。