冬のにおい
私は冬が好きだ。どの季節もいいところはたくさんあるが、冬は結構贔屓している。
以前、冬のよさについて友人連中と話していたとき、それぞれ冬のよさを出していく中で、「食い物がうまい」が圧倒的支持を得ていたのが少し歯がゆかった。確かに冬の食い物はめちゃくちゃうまいが、春も夏も秋もうまい。それぞれ冬にはないうまいものがあるから、冬のよさとしてはまだ足りないと思うのだ。
フラワーカンパニーズの「冬のにおい」という歌がある。私が思う冬の素晴らしさをドンピシャで歌い上げている名曲だ。
歌詞を転載するのは避けるが、「冬のにおい」は冬の街のようす、その中で暮らす人々のようすを描写しながら、冷たいようでいて内側で沸々とたぎる思いや、何かが起こりそうな予感を歌っている。
本当は、冬の良さを伝えたければ、「この歌を聴いてくれ」で済むのだが、自分の言葉で伝えられなかったから「食い物がうまい」に負けたわけで、頑張って冬のよいところを言語化しておきたい。
冬の好きなところはいろいろあるけれど、「陽が低い」というのは大事なポイントだ。そこが好きという人はあまりいないと思うが、これは写真をやっていて気づいたことだ。陽が高いと、いわゆる夏のギラギラした日差しになるわけだが、陽が低いと、斜めから光が差し込み、とてもドラマチックな光景になる。逆光になったり、都会ではビルが一部の光を遮って、舞台のスポットライトのようになったりする。10~11月くらいに写真を撮っていると、光の差し込み方の変化がわかって、「冬がくる!」とワクワクする。
光の層ができるのも良い。日の差し込み方によるものなのか、空気が乾燥しているからなのか、原因は分からないが、奥行きが表現しやすくなる。空気が澄んでいるから、遠くまで光が通りやすいのかもしれない。
あとのいいところは、「冬のにおい」を聴いてください。