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「THE 世界大学ランキング 日本版2022」
今年も「THE 世界大学ランキング 日本版2022」が発表されました。
最近は年度末の風物詩のようになりつつあるようです。
「THE 世界大学ランキング 日本版2022」とは
「THE 世界大学ランキング 」は英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」が実施している、世界中の大学を一定の指標の下に点数化し、ランキングを行うものです。
日本版は、同社の指標やデータをベースとしながらもベネッセが協力して編集し直したランキング、というものです。
「教育リソース」
「教育充実度」
「教育成果」
「国際性」
の4分野16項目で点数化されることになります。
本年度は273大学をランキング対象としています。国内の大学は800大学を超えたという話ですので、国内の大学の約3分の1が対象のようです。
ランキングとしての信憑性はあるのか
信憑性に関しては、細かい順位付けはベネッセやその他の関連組織の思惑等もあるので、全幅の信頼を寄せることはできません。
しかし、総合的には社会的評価とも一致していますし、あまり有名ではないが比較的評価される教育力や研究力のある大学も一定数含まれているので、妥当なラインではないかと思います。
住んでいる地域の大学の評判はわかりやすいので、例を上げると九州内でのランキングは
九州大学:78.8
立命館アジア太平洋大学:63.4
長崎大学:60.9
熊本大学:60.2
九州工業大学:58.0
ベスト5を見る限りでは、地域の評判や就職実績、研究力などから十分に納得できるランキングではないでしょうか。
ここでは上げませんが、ベスト10を見ても妥当であるように感じました。
ちなみに、首都圏は以下がベスト5です。
東京大学:81.7
東京工業大学:81.6
慶應義塾大学:71.7
国際基督教大学:71.3
早稲田大学:71.1
首都圏の方はこれをどう見るでしょうか。九州人からするとなるほど、という感想です。
少し気になる、ランキング指標
国際性の偏重
「国際性」に関しては
外国人学生比率(5%)
外国人教員比率(5%)
日本人学生の留学比率(5%)
外国語で行われている講座の比率(5%)
の4つで判断しているようですが、この比率が高すぎるように感じます。
日本は母国語で高等教育を受けることが出来る世界でも数少ない国の一つであり、それはメリットでもあります。
逆に留学生からは魅力が少ない留学先ともなります。
極東の母語話者1億人の、超マイナー言語で高等教育を受けることにメリットを見出す外国人はそう多くはないでしょう。
国際性で全体の2割を占めるため、ランキング自体も国際性の高い大学に有利な順位がつきやすいようです。
ランキングを見る事前知識として押さえておくと良いかもしれません。
先程の九州での立命館アジア太平洋大学、首都圏での国際基督教大学が上位にランクされているのもこの影響でしょう。
高校教員の評判調査???
また、もう一つ気になるのが
高校教員の評判調査:グローバル人材育成の重視(6%)
高校教員の評判調査:入学後の能力伸長(6%)
これです。実は私のところにも毎年調査用紙が来ます。
しかし、高校教員が自校の卒業生がどれだけグルーバル人材になったか、入学後能力が伸びたか把握できているのでしょうか。
正直、私は全くわかりません。実際に卒業生を定量的に評価する機会もありませんし。
これが全体の指標の1割を占めるのは、割合が大きすぎるように思います。
(まあ、ベネッセお得意の先生方への行き届いた「配慮」でしょう)
偏差値表以外のランキングの存在意義
いろいろ文句の付け所は出てくるものの、こうしたランキングが世に出る事自体は大きく評価できます。
どうしても、高校生は大学をランキング表で評価しがちです。
これまでは予備校の作った入学難易度ランキングという偏差値ランキングしかありませんでした。
偏差値は入学難易度は表せていますが、大学の教育や施設設備などを評価するものではありません。
関東、関西圏の大学は人口の都合上難易度が上がりやすく、地方の大学を正確に評価する指標がありませんでした。
九州だけでなく、会津大学や長岡技術科学大学など、有名ではないが非常に評判の良い大学が上位にランクしていることで、進路指導担当者としては大学を紹介しやすくなりました。
この「THE 世界大学ランキング 日本版」がそうした意味で、生徒や保護者に大学の説明をする良い資料にはなっていることを考えると、その存在意義はとても大きいと言えるのではないでしょうか。
ランキングについては賛否はあれど、結局の所みんな好きなのでしょうね、そして私も…