教育学部の「地域枠」は正真正銘の現代の「奴隷制」
「地域枠」入試という受験形態を聞いたことがある人はどれぐらいいるでしょうか。
受験から遠ざかった親世代には耳慣れない言葉かもしれません。
医学部の地域枠
地域枠入試の走りは医学部です。
医師不足、医師の偏在を理由として実施されている制度で、一般入試とは別枠で受験をする制度です。
自治体などが奨学金を支給するケースも多く、入学段階から在学中まで様々な優遇を受けることができます。
しかし、うまい話には裏があり、当然ながら引き換えにするものが存在します。
それは未来の時間です。
地域枠で合格した学生は、基本的にその地域で10年前後にわたって就職をする必要があります。
入学時に誓約書を書いており、これに反する場合には違約金を支払わなければなりません。その額は1000万円と言われており、医師であっても大学卒業後すぐに準備できる金額ではありません。
制約が厳しく、卒業後のイメージのわかない高校生の未来を縛る契約を行わせることから現代の「奴隷制」と呼ぶ人もいるようです。
教育学部の地域枠
この「奴隷制」を教育学部でも実施する動きが全国で始まっています。
当該地域の教員になることを条件に受験できる制度で、入学後も地域の教員となるプログラム(洗脳講座)を義務化する制度のようです。
記事を読む限りでは現時点では違約金などの罰則規定は存在しません。
しかしながら、教員を志望しない場合は単位を認めないなどの報復措置を大学は取ることも可能なわけで、首根っこをつかまれた状態になるのはまちがいありません。
医師と教員の職業特性、所得の差
医師にしろ教員にしろ、地域枠によって未来を強制されるというのは決して望ましい状態とは言えません。
とはいえ医師の場合は医師免許というゴールドパスと引き換えであり、また勤務先も自治体内であればある程度自由が利くなど、必ずしも行政の言いなりになるばかりではありません。
しかし、教員の場合は身分自体が公立教員は公務員であり、自治体が市民に金を貸し付けて職員としてこき使うという図式がそのまま当てはまる状態となります。
なによりも医師と教員では所得に大きな格差が存在します。
(格差自体は当然のものです。)
この格差を無視して、残業代も出ない給与で人材を無理やり確保するやり口は余りにも下衆な行為でしょう。
地域枠で確保するのではなく、教員の労働条件を常識レベルに
何よりも問題なのは、職業選択の自由を奪う制度となっているからです。
医学部地域枠は、医学生たちは医師になりたいが勤務地は都会が良い、という傾向が強いために地域枠によって残って医師として活躍をしてもらいたい、という制度の妥当性が存在します。
教員志望者(絶滅危惧種ですが)の場合、多くはその地域の教員になりたいと思って進学した学生です。
そして教員の道を諦める学生の多くは、適性の問題や職業意識の変化によってその選択を行います。
こうした挫折者に対して、無理やりにでも地域の教員にさせるという制度は道義的にも問題があるように感じます。
(だからこそ、違約金を今のところは取っていないのでしょう)
そんな入学時点での小手先の技を駆使するよりも、残業問題や業務のスリム化、部活動の地域移行など顕在化した問題の解決を行うべきではないでしょうか。