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校内駐車で料金を徴収する制度と教員の業務の現状には齟齬が発生している
沖縄県、宜野湾市で教職員から校内駐車に関して有料化する条例が可決されました。
宜野湾市内に勤務する小中学校の教職員が校内に注射する場合、一定の料金を払う必要があるということです。
駐車場有料化は全国的な動き
今回の条例に関して、教育のための学校敷地を駐車場として使うのは「行政財産の目的外使用」に当たるため、としています。
こうした制度は全国でも多く存在しているようです。
教員が車通勤していてずるいという電話が定期的に教育委員会にあるらしい。教員の車通勤が禁止になってもあなたが車通勤できるわけじゃないのにね。学校に止めて駐車料金払わないのはおかしいという意見もあるらしい。一番おかしいなと思うのは、その声に負けて駐車場代金を有料にしているうちの自治体
— アイムフリー☺︎ (@TeacherhaGreat) December 10, 2020
大都市などでは公共交通機関による通勤が原則のようで、仮に自動車通勤が可能な場合も、都市部では駐車料金を取られるケースが多いようです。
教員の業務と自家用車
教員の業務において、家庭訪問などが緊急で入るケースは少なくありません。
そうしたときに、基本的には自家用車を利用することになります。また、今回のコロナ騒動などではICT整備が間に合わず、教材の配布を個別訪問したケースもありました。
そもそも学校は公共交通機関が便利な場所に必ずしも立地しているわけではなく、生徒の居住先も公共交通機関だけでは訪問が不可能な場合もあるからです。
今回の宜野湾市においても、記事内に「教職員が家庭訪問などで自家用車を使っている実態を踏まえ、駐車料金の徴収を見送ってきた経緯がある。」とあるように、業務の状況を鑑みて料金の徴収を行っていなかったとのことです。
「自家用車の公的使用は引き続き可能で、学校長が許可する。徴収した駐車料金は学校施設や職場環境の改善に充てるという。」とあるように、今後も公務において自家用車を利用することを是としています。
にも関わらず、駐車料金をそこから取ろうというのはどうにも納得しかねる制度です。教育活動に利用する目的での自家用車に対し「行政財産の目的外使用」とするのは無理筋ではないでしょうか。
道理を通すのならば、全面的に自家用車の利用は禁止すべきです。
そして、地方の教員希望者をさらに減らしていくことでしょう。
平等性の観点とかさむ費用負担
平等性の観点から考えた場合、外部の業者や学校利用者に対しても同様に料金を徴収すべきです。
出入りの業者やPTA関係者、市や教育委員会の関係者などの車両を止めることは「教育活動」とは言えず、「行政財産の目的外使用」に該当するはずです。
(教員の通勤手段を「目的外」とする以上、外部の講師や関係者の来校手段も「目的外」とするのが自然でしょう)
また、「条例改正を受けて2023年度から、各校に公用車を1台配置し、さらにタクシーチケットを配布する方針。」とあるように、公用車を配置し、タクシーチケットも準備するとなると、現状よりもはるかに高い費用負担となります。
公用車は車検や整備など細かな負担が発生します。業務利用の場合は車検も毎年となります。そこにタクシーチケットを配布するとなると、明らかに教員の自家用車駐車を黙認していた方が税金の拠出も少なく済むのではないでしょうか。
地方私学の状況
幸いなことに、私の勤務先の私立高校ではこうした制度は導入していません。
また、私学の場合は広報活動などで同時に教員が出張するケースも多い(しかも行先は中学校などの公共交通機関だけでは行きにくい場所)ため、業務における自家用車利用をするケースも少なくありません。
勤務先の学校では、公用車を複数台準備してありますが、外部の行事などで全て出払ってしまう場合も多く、果たして宜野湾市の学校は1台で回せるのか疑問が残ります。
学校の業務に即した制度を導入する必要性
こうしてみると、役所の職員が役場の敷地に自家用車を止めるのとは全く異なる状況が学校には存在し、杓子定規にその制度を当てはめること自体が難しいように感じます。
近年、学校の特殊性を伝える情報発信を行っている方も増えています。しかし、学校と教員という場所と職業を誰もが知っているからこそ、その内実が伝わらないことも多いようです。
残業させ放題と揶揄される公立学校の勤務体系なども含めて、学校という業務に即した制度の必要性を強く感じます。