厚労省「睡眠指針改訂(案)」に学校始業時刻の指針を出さない文科省
「睡眠指針改訂(案)」
厚労省は今月、「睡眠指針改定(案)」を公表し、健康な生活を維持するための睡眠時間の基準などを設定しました。
これによると大人でも6時間以上、小学生は9時間から12時間、中高生でも8時間から10時間の睡眠を推奨するということが書かれています。
学校始業時刻との兼ね合い
ところが多くの学校の始業時刻はこの睡眠時間を可能とするシステムになっていません。
例えば小学校の場合始業時刻は午前8時です。12時間の睡眠時間を確保する場合、準備を考慮して1時間前に起床する場合は午前7時を起床時刻としても午後7時、9時間の確保であっても午後9時に就寝する必要があります。
中高の場合、始業時刻は午前8時~8時半、8時間の睡眠としても午後11時就寝、10時間を確保したければ午後9時には就寝をする必要があります。
正直なところ、この就寝時間は受験勉強などの状況を考慮するとあまりに現実離れしており、睡眠時間の確保は学校制度との整合性があまりにとれていません。
つまるところこうした厚労省の公表した指針はあまりにも現状を無視した理想論になっていて、実効性の乏しい空虚なものであるということです。
始業時刻の指針を文科省が示すべき
これに加えて、思春期においては朝に起きることが難しい子供が多いという問題が存在します。
上の動画は筑波大学で睡眠を専門に研究する柳沢正史教授が研究内容に関してフランクに説明したものです。
この中でも子供が朝型になりにくい傾向などが述べられています。
こうしたことからも、学校の始業時刻が極端に早いという問題がこの根本にあり、児童生徒の睡眠時間の確保、生理的なものを複合的に踏まえると始業時刻を遅くする必要があるはずです。
そしてここまでのデータが存在している以上、文科省は始業時刻を遅くする指針を打ち出すべきでないでしょうか。
教員の働き方改革
この問題にはさらに加えて教員の働き方改革にも関わってきます。
一般的には午前8時に始業する民間企業は現在ほとんど存在せず、午前9時からの始業が多いと言われています。
さらに販売店などの営業開始時刻は午前10時であり、始業時刻から1時間をかけて準備をすることになります。
一方で学校は8時に生徒の始業時刻になります。ということは教員は何時までに来る必要があるのでしょうか。
もちろん、規則上は生徒と同じ時刻でも問題はないのでしょうが、このゆとりの無さが準備を終業後に行う残業時間の増加につながっています。
(そしてその残業手当は発生しない)
午前9時30分という案
個人的には午前9時30分ぐらいを生徒始業時刻に、教員や学校職員の始業時刻を8時半~9時にすべきだと考えています。
生徒側からすれば、午前9時半始業ならば午前8時~8時半起床、睡眠時間は8時間確保したとして午前0時就寝、午後9時に就寝すれば11時間の睡眠時間を確保できることになります。
また、この時間差があれば準備や早く来た生徒への突発的な対応も可能でしょう。差し引いて、終業時刻は午後4時半、生徒終業時刻は午後3時半となって、かなり現実的なスケジュールを組むことが可能です。
時間設定は私の主観的な部分を含むため客観性を欠きますが、少なくとも文科省はこうした現状を踏まえた上で学校の始業時刻に関わる指針を打ち出すべきではないでしょうか。
生徒、教員の健康を維持し、学力の向上と持続的な教育活動の維持を踏まえて検討してほしいところです。