見出し画像

文理横断教育の重要性は同意するが、なればこそ早稲田大学が「先ず隗より始めよ」


文理横断教育

日本中の普通高校では在学中に文系、理系を選択します。

そのため、文系に進めば理科や数学の発展的な内容を扱わずに大学に進学します。

理系の場合は社会や国語の内容が軽量化したものを学ぶことになります。

そのため大学進学後や就職後に知識の偏りが発生し、それが社会のひずみとなる可能性が指摘されており、そうした偏りが行政判断に影響を与える可能性も指摘されているようです。

そういった事情からも、近年は文理横断教育を謳う大学が増加しています。

国立大学の文理横断型学部

ここ最近特に増加しているのは情報データ系の学部を文理融合型として設置している学部です。

特に国公立大学にこの手の学部が多いようです。

また、そもそもが国公立大学の場合は一次試験として共通テストを課していることもあり、入学前段階から文理を問わない学力を要求する傾向が強いでしょう。

文理分けは何のために行うか?

そもそも文理分けは何のために行っているのでしょうか。

日本の中等教育における文理分けの始まりは旧制高等学校の試験にあるようです。

当時、旧制高等学校では文科と理科に分けて入試を行っており、その入試への対応から文系、理系という分け方は一般化したようです。

もちろん人文、社会、自然科学という分類は他国にも存在しますが、入試に関わる分け方という点ではここが最初のようです。

ちなみに本来は予算不足による理系を絞る目的であったという説があるようです。

そもそもこんな区別があるのは、発展途上国の特徴である。黒板とノートがあればすむ文系にくらべ、理系は実験設備に金がかかるので、明治時代の日本は、学生数をしぼらざるをえなかった。そこで数学の試験をし、文系/理系をふり分けることにした。入試問題が別々なので、その前の段階で文系/理系を選択しなければならない。

Wikipedia 文系と理系
— 橋爪大三郎、『橋爪大三郎の社会学講義2』(夏目書房、1997)63頁

受験生確保と入試の簡便化の軽量入試

多くの大学、特に私立大学の一般入試は上位大学でも3教科、少ない場合は2教科です。

私立文系を受験する場合、英語、国語、歴史の3教科しか受験で必要ありません。

私立大学の学生数は全大学生数の7割、私立大学の文理に関しては65%が文系ということになります。

つまり私立文系の学生は全体の4割以上、ということになるわけです。

大学入試に必要な教科数を減らすことで入学者を確保しているのが私立大学であり、その対応のために文理を分ける制度が定着した側面は決して否定できないでしょう。

「先ず隗より始めよ」

現代における教養教育の重要性や文理融合型知識の獲得の必要性を考えると、早稲田大学総長の文理横断教育や共通テストの前倒しという提言は非常に納得できるものです。

しかし、肝心の早稲田大学の一般入試はどうでしょうか。

ほとんどの場合は英国社、あるいは英数国の軽量入試です。
(昨年度から政治経済学部は共通テストの数学ⅠAを必須化しましたが)

もし仮に総長の言葉を体現するのであれば、早稲田大学こそが率先して共通テストの全教科利用や、入試科目の増量を行うべきです。

早稲田大学レベルになると私立文系特化型の受験生がそれほど多くは無いようですが、中堅私大志望者を見ると高校入学から英国社に全振りして理系教科をおろそかにするケースも少なくありません。

早稲田大学にこそ「先ず隗より始めよ」という姿勢を示してほしいところです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?