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西武労組のストライキに感じる不毛感
西武百貨店の労働組合のストライキ
そごう・西武の売却をめぐって反発している労働組合は31日、ストライキを実施し、西武池袋本店の全館で営業を取りやめたというニュースが報道されていました。
昨今の日本においては労働組合によるストライキは珍しいこともあり、注目していました。
しかし、そうした関心の気持ちの一方で、かなり冷めた印象を抱いていたのも事実です。
ストライキは労働者、労働組合の権利
労働者の権利を確保するものとして、労働三権が認められています。
団結権
団体交渉権
団体行動権
ストライキは団体行動権の代表的な行動の一つで、給与未払いや賃上げ、下げなどの待遇改善、悪化防止時に行うのが主な目的です。
近年の日本ではストライキを目にする機会は少なく、私の年齢であっても工業会のストライキを思い出すくらいで、それ以外のストライキはほとんど覚えていません。
有名な国鉄ストや、九州ということもあり歴史的知識としては三池争議を知ってはいますが、目にしたことはないのです。
ですから、今回の西武労組のストはとても物珍しい、というのが第一印象ではあります。
さらにストに慣れていない人は反感を抱くケースもあるようです。
しかしながらこうしたストライキは労働者に認められた権利であり、権利の回復、確立のためには行使すべきものであります。
TBSアナウンサーの安住氏の言い切りには称賛の声もあがっているようです。
正当な権利だが、不毛感
今回の西武労組の活動も決して誰からも非難をされることのない正当な権利です。
しかしながら私は今回のニュースを最初見た時から現在にいたるまで、不毛感を払しょくできずにいます。
その理由は事業売却に伴うストであるということです。
ストライキは労働者が雇用者に何らかの要求を伝える、通すために行います。
今回も売却に伴う雇用条件の悪化を懸念したものと言われています。
しかし、雇用者であるセブン&ⅰにしてみれば利益が出ないために売却を考えているだけで、仮にストで収益が落ちたところで売却の方針を変える可能性は低いように感じます。
事実、9月1日にはアメリカの投資ファンドに売却が決定したようです。
仮にストを行うにしても、売却が近づくこの時期よりももっと以前に、あるいは売却後に雇用条件の悪化が見込まれる状況になってから行うべきではとも感じます。
企業別組合の限界
こうした不毛感はそれ以外にもストライキの効果に対する疑念からも来ています。
日本の労働組合は企業別組合制をとっており、ほとんどの企業の労働組合はあくまでもその企業に働く人のみで構成されています。
そのため、雇用者に対してデモやストライキは嫌がらせという意味では効果はあるのでしょうが、社会変化を促す起爆剤や世論を味方につけた待遇改善に関しては効果が乏しいのが実情です。
これと対照的なのがドイツや北欧で主流の産業別組合です。
産業別の場合、社会的インパクトが大きくストやデモで世論を動かしやすく、雇用者も組合の主張をおざなりにはできません。
とはいえ、産業構造の違いや雇用慣行や日本型雇用制度など、今さら北欧型に切り替えるのは難しいように感じます。
労働組合制度の限界
企業コンプライアンスが厳しく指摘される昨今、組合が元気だった昭和の時代よりも労働環境や権利の保護に関しては充実しているように感じます。
(収入に関しては低下の一途を辿っていますが…)
また、成長経済の中で労働組合は労働者や組合員の権利保護よりも、特定のイデオロギーに依った主張を行う団体となり、様々な業界では組合員の比率が低下していきました。
教員の場合、日教組、全教、日高教などを合わせても30%の加入率です。
労働組合全体の組織率は16.5%となり、2022年度は過去最低となっています。(ちなみに地方公務員の組合である自治労の加入率は7割弱という驚異的な加入率となっている)
そう考えると、もはや労働組合という従来型の制度は役割を終えつつあるのかもしれません…。