
子供への福祉やサポートをいかに「直接」行うか
先日、ReHacQ−リハック−という動画チャンネルで「NPO法人あなたのいばしょ」代表の大空幸星氏のインタビューが印象に残ったので、そのことについてまとめたいと思います。
ReHacQ−リハック−とは
「ReHacQ−リハック−」とはYouTube上で経済や情報をソフトな切り口で、かつ社会問題を提起する番組を公開している動画チャンネルです。
代表の高橋弘樹氏は元テレビ東京のプロデューサーで、「日経テレ東大学」というチャンネルを運営していましたが、内部的な問題で退社して個人でその内容を引き継ぐ番組として「ReHacQ−リハック−」というチャンネルを立ち上げました。
リンク先の「新ファンタスティック未来」という番組は前身の「日経テレ東大学」から引き継いだ企画の一つで、未来を変えそうな人を招いて話を聞くというものです。
今回はそのゲストとして大空氏が話をしています。
大空幸星とは何者か
大空幸星氏とは何者でしょうか。以下、Wikipediaから引用します。
1998年、愛媛県松山市生まれ。(中略)2020年3月に早稲田大学の友人と2人でNPO法人「あなたのいばしょ」を設立した。日本初の24時間365日無料でチャット相談できる窓口であったが、同時期に新型コロナウイルスが猛威を振るったこともあり、家庭内での虐待を匂わせる小学生、うつになってしまった大学生、自殺を考えるシングルマザーなど、年末までの9ヶ月間で約3万人以上の相談が寄せられたという。
彼は現在、NPO法人の代表として若年層の自殺対策などの活動を行っています。中でもチャットツール(LINEのようなUI)を利用した相談を夜間に受けることで自殺予防を行うなどの活動が有名です。
Abema Primeなどでゲストコメンテーターとして出演していることも多いため、そちらで知っている方も多いのではないでしょうか。
電話ありきの支援の限界
今回の動画の中で彼が訴えていることの一つが、行政や多くのNPOなどの団体が支援の窓口を準備しているが、その多くが電話を最初の入口しているということに関してです。
電話の場合、自分が何を悩んでいるかを口にする必要があったり、場合によっては自分のことを説明する必要があります。
また全く知らない人の自分の身の上話をすることへの抵抗感は少なくありません。
さらに若年層の場合は電話という手段自体を持っておらず、アクセスする手段すらないことが問題であると主張しています。
GIGAスクールによって端末を一人一台持っている子供たちならば、チャットツールなどのテキストベースのやり取りの方が物理的にも心理的にも相談のハードルが下がります。
特に保護者からの虐待を受けているような子供の場合、なおさら電話以外でアクセスできるセーフティネットが重要であると述べてします。
既存の民生委員制度の限界
それに加えて、民生委員制度に関しての改善に関しても話をしています。
現在、地域の問題に対して行政から委託を受けて、ほぼボランティアという形で地域の問題の課題解決に尽力する民生委員(児童委員、主任児童委員)という人たちがいます。
彼らはこれまでも地域の相談役として行政や福祉に繋がる仕事をしてきました。この制度は100年を超える伝統のある制度であり、日本の経済成長の負の部分に対してケアを行ってきました。
しかし、これらの制度はすべて「世帯」をもとにした支援業務として制度設計が為されています。
そのため、子供への支援も保護者を通じて支援をする、という前提で行われることになります。
ところが、近年は家族制度が崩壊し、保護者への支援が必ずしも子供への支援に繋がっていないケースが増加しています。
こうした矛盾点を解決するためにも、リンク先の動画でも直接的に子供を支援する制度の必要性に関して言及しています。
学校を経由させないシステムの必要性
その中で学校を経由させないことに関しても触れています。
実際に例えば平成7年僕生まれる3年前ですけど、これスクールカウンセラーの数って全国で154カ所なんですよ。
今もう30年ぐらい経ってですね3万550カ所が増えてるわけですよ。200倍に増えた、この約30年で全国で154カ所しかスクールカウンセラー設置されてなかった時の子供の自殺は139人、平成7年ですかね。
去年、2020年514人でスクールカウンセラーの数を200倍に増やしてるのに子供の自殺は約4倍に増えてるわけですよ。
これをどう見るかで、もちろん増やしたから防げてるって考え方も成り立つが、おそらく200倍と4倍だからあんまりそうではないと。
学校っていうこと自体でもう子供たちはいや学校で問題を抱えてるんだと。学校が頼れる先にないから、頼りない学校をいかに大人たちが頼れる場所 っぽくしたとしてもですね、なかなかそこに行けない。
その壁を絶対に取り払うことができないと。
だから学校は学校でそのスクールカウンセラーを増やしたりとかスクールソーシャルワーカーを増やしたり学校の教育の人変えたりとかでやりゃいいと思うけど、それ以外の道をやらなきゃいけないっていうことなんだと思うんですね。
以前も記事で触れましたが、学校は教育機関であって福祉や支援を行う機関ではありません。
ところが保護者や地域の人々は子供のことは学校に、という感覚で丸投げをします。
さらに言えば、学校の中でさえ教員はスクールカウンセラーやソーシャルワーカーにはならず、まして福祉や支援の中心とはなり得ないのです。
学校を通さない仕組みの必要性
学校を通しての間接的な支援ではなく、直接的な支援を行う仕組みは必要ですし、その存在自体や必要性はもっと広く周知をする必要があるでしょう。
残念ながら現在においても、多くの人たちは子供のことはすべて学校に言えばよい、という価値観があまりにも広くいきわたり、警察沙汰からちょっとしたクレームまで学校が窓口になっています。
しかし、それでは全く何の解決にもなっていません。
学校の負担云々関係なく子供の諸問題解決のために制度の変更を考えるべき時期来ているように感じます。