「大阪府の高校無償化で大混乱?私立人気と公立崩壊の真相とは」
大阪府の高校無償化の影響
大阪府では私立高校を含めたすべての高校(いわゆる一条校がほとんどですが)で授業料無償化がスタートしました。
その件に関しては以前私自身も記事化しています。
この制度の影響は大きく、公立高校の半数近くが定員割れを起こす自体となりました。そこでこの状況を改善し、公立高校の受験倍率を引き上げるために入試日程を早める制度を差来年度にも大阪府教育庁は導入するというニュースが報道されました。
入試時期を早める効果はあるのか
記事内では報道デスクが教育庁の方針を分析しています。
要は私立の日程が早く、公立は遅いために人気が無い。日程を早めれば勝負になるという考えなのでしょう。
もちろんこうした施策が全く功を奏さないということはないでしょう。しかし本当に私立人気は日程だけの問題なのでしょうか。
記事にもありますが、大阪府の私立高校の進学者は無償化以前から微増を続けています。少子化の昨今であり、公立高校の進学者が減少を続けている状況であるのにです。
ここから分かるのは費用の問題を抜きにしても私立高校を選択する子供や保護者が増加しているという事実であり、そこには費用を度外視した魅力がそこに存在するということでしょう。その上で費用がある程度近づいた(私立が無償化になったとはいえ、諸費用は私立がやや上回る)ことでその流れに拍車がかかったに過ぎないのではないでしょうか。
公立高校の魅力向上案の的外れ感
もちろん教育庁の担当者や審議員もその点は理解しており、同時に公立高校の魅力向上に対しても発言を残しています。
特色入試によってクラブ活動を評価したり、情報共有を前倒しすることできめ細かい対応ができるということのようです。
正直このあたりの考えがあまりにもお役所的で的外れ感が否めません。
私立高校の魅力とは
私立高校の魅力とは学校独自の教育目標、部活動や就職、進学指導への手厚さです。これは言い換えれば生徒全員に一律でない教育を施すことでもあります。
つまり、部活動で全国レベルの生徒、有名企業の就職斡旋や難関大学への個別指導などを学校の中で個別に対応できるということです。これは学校内でのノウハウの蓄積に加え、学校外の団体や機関、私企業などとも自由に連携をとれる柔軟性であるとも言えます。
この点で公立高校はどんなに学校内で整備をしても対応できない部分があります。何らかの制度的変更や特例に関して役所の認可を必要とするからです。
また教員人事においても、専門家を育成し技術の継承や伝達をしやすい私立と比べ、公立は人材の流動性の観点からどうしてもノウハウの蓄積が難しくなります。
教育を受ける対象は個々人で状況が異なり、個別に対応策を変えることが望ましいことは間違いありません。この点でいかに公立高校が改革を行ったとしても、縦割り行政の変わらない日本においては私企業でもある私立高校に一歩も二歩も及ばないのです。
実際、公立高校で人気の高い北野、天王寺、三国丘などは進学校であり、一律の対応で問題の無い学校です。もちろん伝統校である、進学実績が良いというのも理由の一つでありますが、そうした個別対応を必要としない(あるいは塾、予備校などで対応できる)がゆえに人気を保っているとも言えるのではないでしょうか。
決して勘違いをしてはいけないのは、教員単体で見れば公立も私立も玉石混淆であり、どちらに優れた人材がいるということはありません。ただ、その人材の運用面において、最適化とアウトソーシングを利用しやすい環境が私立にはあるというだけなのです。
淘汰の時代
とはいえすべての私立高校が魅力的と言うわけではなく、少子化が進む中で淘汰は免れないでしょう。しかし逆に言えば私立は今後、さらに淘汰が進み生徒や保護者などの消費者が望む学校がさらに残っていくでしょう。
一方で公立はどうでしょうか。大阪府は定員割れの進む公立学校を廃校する予定のようですので淘汰が進むでしょう。仮にこの手を緩め、人気の無い学校を地域配慮から過度に残すことになれば、ますます定員割れを学校を増やすだけになるはずです。
本当に公立高校の変革を望むのならば、役所の慣例主義から切り離す必要があるでしょう。それらは間違いを起こさない、ミスを減らすというシステムとしては決して否定するものではありませんが、教育には不向きなシステムでもあるからです。
大阪府は間違いなく日本の教育のモデルケースになるでしょう。今後に注目をしたいと思います。