高校1、2年生の保護者が子供に発破をかける「おどしの国公立」がお勧めできない理由
保護者の声掛け
高校生、受験生を指導していると感じるのが教員の言葉の力の弱さです。
私たちの声掛けによって生徒のやる気や目標が変わったような経験は20年近く教員をしていればそれなりの回数があります。
しかしどれほど教員がアドバイスをしたとしても、それ以上に保護者の声の力は絶大です。
もちろんスポンサーであるという事実からの影響力もありますが、親と子のつながりの強さなのでしょうか、親の言葉の大きさには毎度のように驚きます。
特に昨今の高校生は保護者との距離感も近く、私たちの世代のように親の言うことに耳を傾けない、ようなケースは少ないようです。
したがって、受験生を指導するにあたって保護者との協力関係を構築することが極めて重要ですし、場合によっては保護者からの声掛けに関してアドバイスをしたりすることもあります。
言ってはいけないこと:「おどしの国公立」
受験生に言ってはいけない、言わない方が良いことというのは様々存在します。
マイナスな声掛けや自己肯定感を下げるような悪態などは受験生でなくとも傷つくものですし、いつでも気を付ける必要があるでしょう。
そうした総論的な家庭教育ではなく、私が受験生、むしろ受験から少し距離がある高校1、2年生に言わないように、と保護者に強く求める言葉があります。
それこそが「おどしの国公立」です。
「おどしの国公立」とは私の造語ですが、意味としては大学受験を控えた子供に対し、「うちは国公立大学以外は行かせない、無理なら就職しなさい」という声掛けをして、最低目標値を親の都合で決めて子供のやる気を引き出そうという言葉のことです。
そして多くの場合、この声掛けをしていた家庭の子供は国公立大外の大学に進学します。つまり本気でそう考えていない、という声掛けでもあります。
デメリット① 進路選択が遅れ、学習意欲が低下する
この声掛けの最も大きなデメリットは進路選択が遅れることです。
そもそもこの声掛けを受けた生徒の半分以上は、正直なところ国公立が難しいと分かっている学力層の生徒です。
したがって本来であれば推薦型や総合選抜型で受験をすべきだし、一般入試組よりもずっと前から受験の準備をしなければならないのです。
しかし、この言葉の呪いがあると、共通テスト直前や共通テスト後にしか私立大などの第2、第3の選択肢を検討することができません。
そのため、出願が間に合わなかったり、仮に間に合ったとしても自分が望む志望先を選びきれていないケースが多々発生します。
デメリット② 保護者の言葉への信頼感の低下
前段で述べたように保護者の言葉の力は大きく、子供の成績を大きく変えたり、学習態度を前向きにしたりする効果があります。
しかし、この「おどしの国公立」を言っていると、保護者がどこまで本気で話しているか生徒は混乱します。
本当に経済的に難しいのか、頑張らせたいから言っているのか、などが分からないのです。
特に学力下位層の生徒の場合、理想を押し付けて現実の自分を見てくれない保護者に対して失望をし、保護者の言葉をシャットアウトするようにさえなります。
結果として言葉、声掛けの効力を自ら手放すことになるのです。
デメリット③ そもそも成績が上がらない
この言葉をかける主目的は国公立大学の合格レベルまでは学力を高めてほしい、頑張って勉強してほしいということだと思います。
しかし、残念ながらこの言葉では成績が上がることはほとんどありません。
成績下位層の生徒の場合、国公立大学という目標値は現状と比べてあまりに高い目標です。
そのため、現状と目標があまりに乖離していると、そこまで歩く気力を失ってしまうのです。
さらに②で述べたように自分を見てくれない保護者に対して不満や怒りを感じるケースも少なくないようで、家庭内の雰囲気も悪くなってしまいむしろ学習環境を悪化させることにしかならないでしょう。
腹を割って話す必要性
家庭にもよりますが、高校生は自分の家庭環境た経済状況についてそこまで理解しているわけではありません。(うっすらとは分かっています)
したがって、自分の家庭の経済状況でどの程度の大学まで進学をすることが可能かの本当の部分は分かっていないのです。
だからこそ重要なことは家庭の経済状況をしっかりと説明し、実際に可能なライン、負担が少なく家計状況を損ねないラインなどを親子でしっかりと話し、理解した上で進学先を検討してほしいのです。
高校1、2年の段階からそうした話を進めていれば、低学年の段階から着地点を見据えた学習もでき、むしろ目標値に向けて順調に成績を上げる可能性も高いのではないでしょうか。
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