第9回 薬師寺執事長・大谷徹奘 withコロナ 新しい生き方 <イベントレポ>
こんにちは! ライターの金子です。
本日は薬師寺執事長・大谷徹奘さんによる法話の講座レポートをお送りします。
第1部では「コロナ禍での新しい生き方」について、第2部ではゲストに教育コンサルタントの小西好彦さんを迎え「人と寄り添うこと」についてお話しいただきました。
コロナ禍だからこそ聞くべき心のあり方を存分に語ってくださいましたので是非ご一読ください。
◆第1部「withコロナ時代 新しい生き方」
・コロナウイルスの蔓延で垣間見えた人の本性
コロナウイルスの蔓延によって「外出できない」「マスクをつけなくてはいけない」「お店の営業ができない」など、不自由が増えた今。そんな状況において人間の種類が見事に2つに分かれた、と語る大谷さん。
1つは、身勝手に生きて周囲の信頼を失っていった人たち。
もう1つは、不自由な世の中でもより良い生き方を模索して新しい機会を獲得していった人たち。
法話ではそれぞれの人たちの特徴と、どのような心持ちでいればより良い生き方を求めていけるのか? について語ってくださいました。
・3つの“慢”に気をつけよう
身勝手な行動をとった人たちは、3つの“慢”が出てしまった、と大谷さん。
それは、「慢心」「傲慢」「怠慢」のこと。
自分は特別だからコロナには罹患しないはずだと考えたり(慢心)、
人の話を聞かず、自粛や要請に応えなかったり(傲慢)、
不自由な世の中において、現状から自分を変えようとしなかったりする(怠慢)
こういった人たちは、自分のことしか考えないで行動するためゆくゆく周囲の信頼を失ってしまいます。
3つの“慢”を心に留めて自分ごととして捉え、こうなってはいけないという1つの指針にして欲しい、と大谷さんは語っていました。
法話ではこの3つ言葉を会場の全員で復唱する場面も。
読者の皆さんも、心に留めるために声に出して読んでみると良いかもしれません。
・より良い生き方を模索するために重要な考え方は「ダイヤ改正」
では、どうしたらより良い生き方を模索していけるのでしょうか?
コロナ禍で変わった世の中を“ダイヤ改正”のように捉え、新しいダイヤを受け入れてどう生活を整えていくか? を考えることが重要だと大谷さんは語っていました。
ダイヤ改正とは、もう変えられないことのたとえです。
今まで目的地まで片道30分かかっていたところ、ダイヤ改正で乗り継ぎがうまくいかなくなり片道が60分かかるようになったとしても、それはもう変えられないことですよね。
ダイヤ改正を受け入れて伸びた移動時間で英語の勉強をするなど、一見無駄と思える時間でできることを探し、行動に移していくことが大切です。
実際、大谷さんもコロナで対面での法話ができなくなってしまったため、オンラインでのやり方を考え訓練に励んだとのこと。すると、海外在住の方から「普段こんな話は聞けないから嬉しい!」という感想をもらい、今ではオンライン法話での海外進出を検討するほどになったそう。
このように、変わった環境を受け入れどう生きるか? を考え行動に移すことで、結果新しい機会を得られることもあるのです!
・新しい生き方を求めるポイントは“少しずつ、着実に”
第1部の最後では、より良い生き方を模索していくにあたってどのような心持ちで行動していけばいいか? という指針を教えてくださいました。
ポイントは3つです。
1、下手から始めよう
2、高望みはやめよう
3、少しずつ上手になろう
生活環境が急に変わっても、そう簡単に人間は変われません。いきなり新しいことが上手くできるわけでもありません。
そのため失敗することを恐れ、行動するをためらってしまうかもしれませんが、一歩踏み出さなければ何も変えることはできません。
そこで大切なのは「下手なのは当たり前で仕方のないことと捉え、過去の成功体験にとらわれず、少しずつ上達していけばいいという考えを持ちやってみることだ」、と大谷さんは語っていました。
コロナ禍で不安定な世の中だからこそ、今一度心持ちや行動を見つめることが大切ですが、大谷さんの教えてくださった3つの“慢”や、この3つの行動指針は変わりゆく世の中を生きていく上でいつでも大切な考え方だなと感じました。
◆第2部「人と寄り添うこと」
第2部は教育コンサルタントの小西好彦さんをゲストに迎えた対談です。テーマは「人と寄り添うこと」。
少年刑務所での法務教官や大学講師、高校教員を経験してきた「人に寄り添う天才」の小西好彦さんに、様々なお話を伺っていきました。
・「人と寄り添うこと」ってどういうこと?
「出来事」、「認知」、「感情」、「行動」というフレームで小西さんは説明をしてくださいました。
人は発生した「出来事」に対しての「認知(捉え方や意味付けの仕方)」によって、そこにひもづく「感情」と「行動」が変わるというフレームです。
例えば待ち合わせ場所で「人を30分待つ」という出来事があった際、
「なんてズボラな人なんだ」と認知すると、付随して「怒り」の感情が芽生え、遅刻してきた相手に「何分待たせるんだ!」と叱責する行動に至ります。
一方で、「何かあったのかな? 日時や場所を間違えたのかな?」と認知すると、それらは「心配」や「不安」の感情となり、相手に対して「来てくれてよかった!」と安堵する発言に結びつきます。
「出来事」に対しての「行動」はわかりやすく相手に伝わりますが、その人がどう「認知」しているのか、どういった「感情」を抱えているかは相手に伝わりづらいですよね。
その、相手の「認知」「感情」の部分に目を向け理解してあげることが寄り添うことだ、と小西さんはおっしゃっていました。
さらに、相手が「認知」「感情」を自己理解できていないケースもあるため、その人が今置かれている状況も踏まえ、相手の心を絶えず観察し、問いを投げかけてその人の気持ちを引き出すよう心がけているとのことでした。
この話を聞き、いかに自分が相手の「行動」にのみ目を向けてコミュニケーションをとっていたかに気づきハッとさせられました。
人に寄り添う時に重要なのは「行動」に対するアドバイスではなくて、相手が事象をどう捉えていて、どのように思っているかに目をむけ理解・共感したり、受け入れたりすることなのですね。
・「人は変わる」と信じる心を持ち、人に寄り添い続けることが大事
人は必ず救える、という信念をお持ちの小西さん。その考えはどこから来ているのでしょうか?
「信じることが大事だと思っている。
たとえ残虐な犯罪をした人でも、人である以上希望と可能性がある。
その人のことを信じて向き合い続ければ人は変われるし、救えると思っている」
と、慈悲深い自論を展開されていました。
イベントでは犯罪を犯した少年たちの例をたくさんお話いただきましたが、全然他人事のようには思えませんでした。親子間や職場での揉めごとなど私たちの身近な人間関係にもあてはまるエピソードが多かったのです。
私自身も、家庭や職場で思い悩むことがありますが、「人は変わることができる」という前提に立ち、相手を信じる心を持って接することが重要なんだな、としみじみと感じました。
さらに「人はどんなに悪いことをした人でも、ちょっとは現状を良くしたいという想いが無意識にある。その想いを本人が意識できるようにしてあげることが重要」と小西さんは続けます。
その想いを本人が意識できるよう、日々小西さんは相手の「認知」と「感情」に耳を傾けているそうです。
人から「あれをしなさい」、「これをしたほうがいいよ」とアドバイスをされてもなかなか行動に移すことは難しいですよね。
自分が心から納得していることでないと、実際の行動には至りません。
小西さんは相手の「認知」や「感情」に向き合って対話することで、本人が気付きを得る手助けをしているのだろうな、と感じました。
コロナ禍で人との関係が希薄になりがちな今だからこそ、人に寄り添うという意味を理解し、実践してみることは非常に大切なことなんだ、と大変気付きの多いイベントとなりました。
最後に、大谷徹奘さん、小西好彦さん、参加してくださったみなさま、このレポートを読んでくださったみなさま、ありがとうございました!
編集/小川利奈子 文/金子杏奈
2021.1.13 作成