2024/11/11週|『戦略ごっこ』を読んだ:何より市場浸透率を
今更ながら感はありますが、『戦略ごっこ マーケティング以前の問題』を読みましたのでメモを残しておきます。
印象に残った点
まず、個人的に印象に残った点を中心にまとめてみます。
エビデンスベーストマーケティング
エビデンスベーストマーケティングとは、異なる状況や国、時代背景にかかわらず、繰り返し観測される規則性に基づいたマーケティングアプローチ。従来のマーケティング理論や「常識」を、実証的なデータで検証し、再評価することを目指しています。
ダブルジョパディ(Double Jeopardy)の法則
小さなブランドの二重の不利を指摘する法則です。
小さなブランドは、顧客数(浸透率)と購入頻度の両方が少ない
大きなブランドと小さなブランドの主な違いは顧客数であり、ロイヤルティの差は僅かである
顧客数が増えればロイヤルティも高まるが、その逆は成立しない
顧客獲得の重要性
新規顧客の獲得が成長の鍵であることを強調しています。
既存顧客やヘビーユーザーのロイヤルティだけでは成長に限界がある
ブランドの成長には未顧客への浸透(顧客獲得)が重要
従来のマーケティング理論への批判的検証
差別化戦略の限界:消費者は必ずしもブランドの差別化を認識していない
STPアプローチの問題点:ターゲティングやポジショニングだけでは成長できない
態度変容モデルの限界:消費者の購買行動は、態度や意向だけでは説明できない
購買行動の理解
消費者の購買行動に関する新しい視点を提示しています。
購買は主にカテゴリーエントリーポイント(CEP)によって決定される
具体的なジョブやニーズがあってこそブランドが想起される
アンケートは過去の経験を反映するものであり、将来の購買を正確に予測できない
マーケターとして、事実とエビデンスに基づいたアプローチを取るべきであると主張しています。
感想メモ
過去読んだ他の本では下記あたりと関連性がありそうです。
ダブルジョパディの法則や新規獲得の重要性についてはバイロン・シャープがブランディングの科学で述べているものでありますので、既知ではあったものの、普段仕事をしていると、既存のマーケティング理論に基づく議論に触れる機会が多いので(ロイヤルティなど)、そのあたりを議論する時に認識しておくべき内容であると感じます。
ひとたびブランドが成長していくと、ブランドに触れてくださる顧客の中にもグラデーション(それがブランドへの好意度などの態度によるものなのか、購買量によるものなのかなどはさておき)が生まれてきます。
したがって、よりブランドにとって忠誠心(ロイヤルティ)の高い層を守り続ける施策や、選び続けるためにロイヤルティを高める施策の重要度が上がってくるのが、過去何度も直面してきたシーンです。
上記の指摘で興味深いのは、「ブランドの成長にあたっては量が重要だよね(大きくても小さくてもロイヤルティに大きな差はない)」という示唆でして、これはマーケティングに従事するものとして優先する順番や力点の配分を間違えてはいけないことを示唆しています。
一般的に「ロイヤルティを高める施策でブランドを成長させる」の方が耳馴染みがありますし、一見コスト効率も良く見えるケースが多いように思われ、ついそちらの優先順位が過剰に上がりやすい状況はあり得るかなと思います。この辺りは気を付けるべきポイントですね。
ここで付け加えておきたいのは、ロイヤルティに分類される施策には、既存顧客向けの付加価値提供も含まれることが多いように思います。そもそもブランドの商品力として他の比較対象と比べた時に明らかに差分になる状態はケアしていく必要があるのは同意、でして、ロイヤルティ醸成に分類される施策全てに否定的なわけではありません。
なぜなら、基本的な価値提供で比較対象に劣ってしまっている状況ですと、新規獲得をしたとしても顧客が残らないため結局ブランドが成長していかないからです。
この基本的な価値提供と、過度なロイヤルティ施策のラインを敷いて議論していくことも重要そうです。
実務的には市場への浸透度を高めることであっても、ロイヤルティを醸成することであっても、実行することの難易度があるので理論を知っていれば万事OKということはないかとは思いますが、それでも時に、業界で 常識となっているものを疑うことが重要であるということを普段の実務の中で示してくれるという意味でも、とても学びになる一冊でした。感謝です。
今週はこの辺りで。
お読みいただきありがとうございました。
📓この記事について
株式会社タイミーで執行役員CMOを務めている中川が、マーケティング関連の仕事をしている中で感じたことを綴り、コツコツと学びを積み重ねる『CMO ESSAY』というマガジンの記事の一つです。お時間あるときにご覧いただければ幸いです。オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしている節があり、自分も週次更新をしています。
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