5年間の“無駄な仕事”と引き換えに、権限委譲の大切さに気づいた話
スタートアップの経営者が必ずぶち当たるのが「権限委譲の壁」です。
会社が小さいうちは、経営者がさまざまな領域を兼任するもの。そもそも人がいないうえに、誰よりも会社とサービスについて理解し、仕事を進める力や時間があるのが経営者だから当然です。
しかし、その状況のまま組織が大きくなると、気づかないうちに、経営者の仕事の持ちすぎが、事業成長のボトルネックになってしまうこともあります。
今日は、そんな「権限委譲」のコツについて、自分の経験を通じて学んだことを話したいと思います。
自分の限界を知った経験
私はoViceの前に初めて創業した会社で、ジェネラリストとして働いていました。
「他の人が1日かかる仕事が、私なら10分で出来る」という自負があり、エンジニアリング、デザイン、セールス、マーケティング、財務など、複数のファンクションを1人で担当していたんです。
しかし、その状況は長く続きません。会社が大きくなるにつれて仕事を捌けなくなり、私自身が事業成長のボトルネックになってしまったんです。
会社の成長鈍化の原因が自分であることに気づいていましたが、誰にも協力を要請することなく、1人で解決しようとしました。しかし、すでに手いっぱいなところに、さらに仕事を増やしても上手くいくはずがありません。
徐々に会社の経営は傾き、最終的にはリカバリーが効かない状況に。5年間の自分の仕事が、一瞬で無駄になったんです。
この時、私は初めて自分の限界を知りました。そして、二度と同じことを繰り返さないために、「権限委譲」を徹底しようと心に決めたんです。
任せ切るけど、任せっぱなしにしない
私と同じような境遇を、いままさに経験している経営者は少なくないと思います。そうした方々に向けて、私自身が大切にしている権限委譲のポイントを2つ共有します。
1つ目は「任せ切る」ことです。
一度任せた役割に対して、ちょくちょく口を挟むほど邪魔なことはありません。あれこれ管理しようとすると、その人本来の力が発揮できなくなります。
たとえ、現時点の自分よりも、その人のパフォーマンスが低かったとしても、ポテンシャルがあると判断したのなら思い切って任せることが大切です。
ポイントの2つ目は、「任せっぱなしにしない」こと。
最悪その人がミスしても、自分や他の誰かがリカバリーに入るプランを用意しておきます。また、任せた仕事が失敗に終わっても、会社全体に大きな影響が及ばないような環境づくりをしておくんです。
任せ切ることと、任せっぱなしにしないこと、一見矛盾する二つを両立させることが、良い権限委譲の条件だと考えています。
いま、タスクは持っていない
権限委譲の価値は、もっともレバレッジが効く仕事に、経営者自身が集中できることです。
oViceにおける私の役割はどんどん変化しました。
創業当初は開発を担当。サービスリリースのタイミングで開発の権限を人に移し、ビジネスサイドへ。カスタマーサクセス、マーケティングと、次々に仕事を変えながら、ある程度形ができたら他の人に権限委譲するというのを繰り返しました。
そしていま、私はなんのタスクも持っていないんです。
やっているのは、「scrum」と呼ばれる、各チームで開催する30分の定期MTGに出席すること。極端にいえば、みんなから情報をインプットして、こうした方がいいんじゃないかと、提案をするだけです。
※scrum式会議についてはこちらの動画で詳しく話しています
だから、私が事業成長のボトルネックになるケースはほとんどなくなりました。その体制を早く築いたため、前職と比べてスムーズに事業がスケールしてこれたんです。
スタートアップの経営者にとって「権限委譲」の大切さは周知の事実。でも、本当の意味を理解し、良い権限委譲ができるようになるためには、失敗体験も必要なのかもしれません。
今後も、私の体験を踏まえた経営に役立つ情報を、発信していきたいと思います。みなさんのお役に立てれば幸いです。
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(編集協力:oVice 編集部)