大阪・多良福 (たらふく)さんの「ぜんざい」
もうすぐ創業100年。さらりとおっしゃる女将さん。ここは、大阪市西成区の甘党・うどんのお店「多良福 (たらふく) 」さんです。にじみでるのは、きのうきょうでは出せない味。
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多良福(たらふく)さん
「福が多い」「お腹いっぱい」そんなイメージのパッピーなお店です。多良福さんは、アーケード商店街・動物園前を入ってすぐのお店。通りすぎにご注意ください。
もより駅は……
●大阪メトロ(御堂筋線・堺筋線)
動物園前駅…徒歩約3分。
●JR・南海電車・新今宮駅
●阪堺電車(チンチン電車)新今宮駅前駅…各線5~10分
多良福さんの店先、ガラスケースには和菓子。甘味もほしい労働者のまち、西成。いまや貴重の「甘党」のカンバンが目印です。
動物園前駅・おとなむけ
大阪のディープな、まちあるき。ここは名所の通天閣にも近い。有名無名の安い宿が多く、外国人観光客にも人気のエリアです。
大阪メトロの御堂筋線・動物園前駅は、むかしのタイル絵を活かした、どうぶつホームになっています。
おとなの皆さま、大阪に慣れたら「動物園前一番街」にも足をのばしてください。
昭和の戦前のたたずまい
商店街の名前は、「動物園前一番街」。なにやら可愛らしい名前とカンバンです。
中に入ると、人生の黄昏時のようなアーケード商店街が展開します。
入り口・右手のコーヒー屋さんは、香豆里(ゴーズリー)さん。雑誌にも出てくるお店です。きょうはアーケードに入りますので、コーヒーは次の機会に。
昼間なのにうす暗い。道行く人もみな濃いキャラクターに見えます。あまり写真を撮るのも、はばかられる雰囲気です。
ちっちゃい提灯。ドリンクの販売機こそありますが、いかにも正統派のうどん屋さんの外観。多良福さん特筆すべきは店内。遺跡といっても過言ではありません。
前払い制
シックな暖簾をくぐると手書きの短冊。
やさしげな女将さんが熱いお茶をくださいます。急須でいれたお茶は……おいしい。お水が出てくるお店も多いのに。お茶だけで、じ~んとしました。
おそれいりますが何方様にかぎらず、前金にてお願いいたします。
注文と同時にお金を出します。
ぜんざいは別格。餅2個入りもあります。やっぱり、ぜんざい一択です。
大阪では、おしるこよりも、小豆つぶつぶの餡だれの「ぜんざい」が主流です。関西の土壌でできる豆は皮がやわらかく、粒あんがおいしい。
関東の豆は皮がしっかりしているので、皮をとりのぞいた、口あたりのよい「こしあん」が好まれるそうです。
それにしても、映画のセットや新喜劇で出てきそうなお店です。
現役の石油ストーブ、大きな業務用クーラー、ほんとうに、むかしからのお店というのがわかります。
「撮影の話きたけど断ったわ」
木枠のガラスケース、おはぎや赤飯などが入っていたのでしょうね。いまは、からっぽ。
黒いマーブル模様のタイルも妙にマッチしています。今のタイルでは、なさそう。
「代金すみ」の札がテーブルに置かれます。
厨房に目を向けると、すりガラスの小窓。右側はミラーガラスになっていますが、これだけでも見る価値があります。
おもわず女将さんに、ステキなお店ですねと言ってしまいました。
「タイルも父が。この店、もうすぐ100年になるわ」
創業100年、テレビもない戦前のお店なのです。やはり遺跡級。
せんざい
厨房の小窓から、ぜんざいが登場。
焼き目のついた、まるいお餅。
餡だれは甘すぎず、水分多めのあっさりタイプです。
お餅がおいしい。もち屋の餅かしら? 歯ごたえがあります。
うつわのフタはありません。よぶんなモノがなくていいのです。
この雰囲気でいただくぜんざいは最高です。
きつねうどん
さて、次の来店日。いちばん高いうどんは「カレーうどん」600円。それでも安いです。
ベーシックな「きつねうどん」を注文しました。やわらかい、うどんに甘いあげが2枚。ダシは大阪の甘め、スタンダードなタイプ。
六方焼き(サイコロ状の和菓子)を追加しました。
シックなタイルと記念撮影。
上の細長いタイルは生地に粒々の緑色ががっています。下の部分も段々になっていて特注品では?
おおきな四角いタイルも、一枚いちまい柄が違います。このタイルも、いまやあまり見かけない、貴重品ですね。
女将さんいわく、
「和菓子は、同じ西成区の和菓子屋さんで仕入れてる」
それで、お餅もおいしかったのか。
甘党・うどんのお店で、アルコールはなし。営業時間は短いので昼間にどうぞ。
まとめ・西成のまち
「動物園一番街」の奥は異空間。
はじめてだと、ちょっと腰が引けるかも。飲み屋さんや銭湯もあるし、むかしからのお店がひしめくアーケード商店街です。
◆ちかくの記事・西成区◆
いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに
さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。
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