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ダークソウルと金枝

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フロムソフトウェア制作のゲーム『ダークソウル』シリーズと、J.G.フレイザーの著書『金枝篇』について考察した記事シリーズ。 ダークソウルシリーズの1.2.3の重大なネタバレやそ…
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ダークソウルと金枝 ー結びー

ダークソウルと金枝 ー結びー

多くの文化、宗教で、やはり神というものは、その積み重ねにより特別視されてきました。

人間というのは彼らに選ばれた存在で、魂や精神を吹き込まれたために動物とも違い、分別を持ち、その神の教えに従い、悪魔たちとは袂を分かつ身である。という具合です。

しかしさらに過去にさかのぼって考えると、この魂(ソウル)というものと、精神(スピリット)もあまり区別はありません。さらには動物(アニマル=動くもの、命を

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ダークソウルと金枝 10

ダークソウルと金枝 10

さて一応の最終回となる今回では、いよいよグウィンの秘密について考察します。先回考えたように雷が竜の魂の力だとしたら、それを手にしていたグウィン自身の力は何なのでしょう。

火の時代を拓き、誰よりも輝かしい栄光を纏った太陽王。しかし同時に、それだけの野心を持ち、力を渇望し、誰よりも多くのソウルを求めた存在であったはずです。

グウィンの”流派”先の回でも述べましたが、グウィンの流派、剣の使い方には特

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ダークソウルと金枝 9

ダークソウルと金枝 9

前回では、この『ダークソウル』における”金枝”や不死の例をあげ、”薪の王”のそれが篝火ではないかという説を述べました。

しかし『ダークソウル』世界においてはまだまだ謎は多く、とくに人物としてのグウィン自身について、その謎ははっきりと多く残されています。

彼はなぜ火を継いだのか、なぜ人を恐れたのか、なぜその人の王やシースにソウルを分けたのか……

この先の記事でもわからないことは多いですが、今回

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ダークソウルと金枝 8

ダークソウルと金枝 8

さて、いよいよ『金枝篇』解説も終わり、本格的に『ダークソウル』世界の事を語っていきたいと思います。

前回はこちら。

前回までに解説した『金枝篇』における、”森の王”の風習。概ねそれは『ダークソウル』における、”薪の王”と対応したものでした。

”森の王”は太陽の化身とされたウィルビウスという神の称号で、聖なる枝を折った逃亡奴隷によって殺され、その魂が継がれた

”薪の王”は太陽の光の王グウィン

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ダークソウルと金枝 7

ダークソウルと金枝 7

古い時代、私たちの祖先にとって、いまだ魔法や科学という違いはありませんでした。

そこには連想と発見と、認識と空想と、そして自分の行為とその結果だけがすべてでした。しかしそうした行いを経験として蓄積することで、多くの事が分かたれていき、少しずつ事実と迷信とがはっきりと分かるようになってきたのです。

そうした中で信じられた呪術や魔法の力というものは、一つの帰結としてより強い力を持ったものがいると信

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ダークソウルと金枝 6

ダークソウルと金枝 6

前回までで、生贄やそれを模した祭祀の概要をあらかた示せたかと思います。

一応おさらいしておくと

老いてしまう王の魂を保存する手段として、王殺しが行われた

若い体に魂を移し替える儀式だったが、その生贄という部分が後に残った

そうした生贄を模した祭りは様々に変化し、神話にモチーフを残している

今に残る祭りには、その生贄に象徴される存在を悼む悲劇性、彼を殺すことに対する理由付けとしての罪悪、そ

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ダークソウルと金枝 5

ダークソウルと金枝 5

こうして続けてきた「ダークソウルと金枝」、ようやく内容的には折り返し地点だと思います。

いいかげん長いな、とは思われるかもしれませんが、これからは駆け足気味で行くつもりですし、分量としてはこの倍はかからないと思います。わかりませんが。

前回はこちら。

さて前回までで、おおよそこの『金枝篇』のテーマの一つ、”森の王”という風習に対し、ある程度その理由は察しがついてきたのではないでしょうか。

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ダークソウルと金枝 4

ダークソウルと金枝 4

前回に続き『金枝篇』第二章「魂の危機」について語っていきます。

「ダークソウルと金枝 3」では、神と同一視された古の王たちが、様々な掟によって縛られてきた様。そしてそうした王たちのタブーが、彼らの命を守る、彼らの魂を抜け出させないために行われているのだ、という仮説を導きました。

今回は、そうした王たちの掟やタブーの例を改めて紹介し、それがどのような意味を持っていたのかを考えていきます。

外界

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ダークソウルと金枝 3

ダークソウルと金枝 3

さて、前回までのこの記事シリーズで、”森の王”や”薪の王”と呼ばれる存在が、超自然的な力を授かった神と同等の存在とされたことを説明しました。

したがってこれからの説明では、なぜそのような存在を殺さねばならないのか、ということ。あるいは、なぜそのような超常の存在が、一度死して蘇るという過程を持つ必要があるのか、という事を説明しなければなりません。

モータルとイモータル。死すべき人間と、不死の神々

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ダークソウルと金枝 2

ダークソウルと金枝 2

ダークソウルと金枝、第二回目です。
まだお読みでない方は、前回の記事から。

また、そもそもこの記事シリーズにくるのは初めてだ、という方はこちらから読み始めてください。

前回の記事では、”森の王”という風習とアエネーイスや他の神話との比較を行いました。
その結果、『金枝篇』という本が提示した大きな二つの問

なぜ新たな”森の王”となるものは、前任の”森の王”を殺さねばならないのか?

なぜ”森の

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ダークソウルと金枝 1

ダークソウルと金枝 1

さて、ダークソウルと金枝と題しまして、これからゲーム『ダークソウル』について、フレイザーの『金枝篇』を参考に、考察を進めていこうと思います。

当記事は、「ダークソウルと金枝 1」となっておりますが、この前回となる「ダークソウルと金枝 ―序―」という記事がございますので、未読の方はそちらからお読み下さい。

続、『金枝篇』第一章、第一節について前回、この『金枝篇』第一章、第一節では”森の王”と「ア

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ダークソウルと金枝 ー序ー

ダークソウルと金枝 ー序ー

私がこの『金枝篇』を初めて読んだのは、たしか「bloodborne」をちょうどクリアした後だったと思います。当初はこうしたブラッドボーンやダークソウル、いわゆる「ソウルシリーズ」の考察の材料という考えはあまりなく、映画「地獄の黙示録」や、そうした洋画等のストーリーを理解する上での参考という思いで、この本を手に取っただけでした。

しかし実際にこの本を読んでみると、驚くほどに『ダークソウル』の世界観

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