短歌と徒然なる小話4
春風が肌を撫でて知らせゆく一緒にケーキは食べれませんか
頬を撫でるような優しい春風は、忘れかけていたことを思い出させた。今日はあなたの誕生日か。ゴトーの日なんだよね、とくしゃっと笑うあなたの顔は風が吹いては消えていく。どんどん思い出せなくなるあなたの顔や仕草。今1番悲しいことがあるとすれば、あなたといられないことではなくて、あなたとの幸せは過去のものであると実感することだ。
ねえ、愛してほしかったな。終わりが見えていたとしても、あと少しだけ私をその目の中に入れてくれはしないだろうか。
もうどうやっても叶うことがない気持ちを抱えながら今日も会社までの道を行く。あなたと歩いた道を行く。そういえばあのとき一緒に食べたショートケーキは美味しかったな。今日は帰りに買って行こう、ひとりで。あたたかい陽だまりの中、また春風がそっと頬を撫でた。