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戯言
冬。
この地に暮らす弱き者にとって
寒さは死に直結する。
夏の日差しが照りつける季節から
凍てつく冬を越すために
薪を割り焚き付けの小枝を拾い集める日々を過ごし
山の恵みの保存食作りに精を出す。
それでも飢饉にでもなれば当然食べるものは僅かで
暖をとることも侭ならなくなり
そして病が蔓延する。
だからせめて身を守る為に着込む。
とにかく信じられない程の厚着をする。
厳寒の地で生き抜くという事はそういう事だ。
生半可では無い。
されどそんな厳寒の地で
自給自足様な生活をする者達は不幸だろうか?
もしそんな方々を哀れむというのなら
それは全くの驕りであり
蔑視以外何物でもない。
野に咲く花は野でしか生きられない。
それを命一杯体現しているだけの事だから。
憐れみからの心では無くすべき事がある。
それを忘れたくはない。
羨ましいと思う事さえある。
丹精こめて育てた野菜が沢山の煮物。
豆から育て手数をかけてこしらえたお豆腐。
収穫、粉挽きまでこだわって打ったお蕎麦。
それはこの空気の中でしか決して味わえない滋味である。
やはり私もこの土地の人間だと身にしみる程
脈々と続く深い思い入れなのだろう。
今年も、厳しい冬がやってきた。