2023年5月の記事一覧
十本の指「耳嚢」より
原題:怨念無しと極め難きこと
(怨念がこの世にないとは言えない)
苗字は忘れたが、佐助、という者がいる。
高松の松平家に勤めている男で、かつては湯島にある聖堂で儒学を学んでいた。
この男の、若い頃の話である。
深川へ儒学の講義へゆき、その帰り道。
すでに夕暮れ時で、日も沈もうとしていたので
「我が家はまだまだ先だからな」と言って、仲町の方へ足を向けた。
仲町は富岡八幡の南にあった遊郭である。
原題:怨念無しと極め難きこと
(怨念がこの世にないとは言えない)
苗字は忘れたが、佐助、という者がいる。
高松の松平家に勤めている男で、かつては湯島にある聖堂で儒学を学んでいた。
この男の、若い頃の話である。
深川へ儒学の講義へゆき、その帰り道。
すでに夕暮れ時で、日も沈もうとしていたので
「我が家はまだまだ先だからな」と言って、仲町の方へ足を向けた。
仲町は富岡八幡の南にあった遊郭である。