#15ショートショートらしきもの「野次馬」
「うわぁ。すげぇ燃えてる。」
「すごいですよね。通報から30分近く経ってるんですよ。」
「え!そんなに経ってるのにまだ燃えてるんですね。」
「今燃えてる家は通報があった家の隣なんですよ。最初は奥の岡田さん家が出火元なんです。ここよくとおるんですか?」
「そうなんですよ。この道真っ直ぐ行ったとこが家でして。しかし隣の家の人はまさに災難ですね。」
「そうですよね。ちなみに岡田さんの息子が放火したって。」
「え!放火?その息子さんは?」
「まだ捕まってないんですよ。リョウっていう25くらいなんですけど、引きこもりで。」
「うわ。ぼくらとそんなに変わらないくらいですかね?」
「そうですねー。しかも両親がどちらも教師だから、息子が引きこもりだと周りの目がね。余計に厳しくして、毎日怒鳴り合いのケンカだったんですよ。」
「そのケンカの延長でってことですか。怪我人とかはいないんですかね?」
「今燃えてる家は誰も居なかったみたいですけど、岡田さん家からさっき真っ黒ななにかが担架で運ばれてたとか。」
「え。それってまさか。」
「まあ誰もしっかり見てはないんで。」
「そうですよね。怪我人がいなければ良いけど。それにしても親がどちらも教師なのにそんなことあるんですね。分からないもんですねー。」
「引きこもりは中学の時にミズキちゃんって子に振られたのが原因なんですよ。」
「それだけ?」
「元々学年で1番の成績でスポーツも万能だったのにですよ。」
「あぁ。だからプライドがあったんですかね。」
「文武両道なのにふったんですよ。ミズキちゃんは。」
「え・・・まあそういうこともありますよね。」
「それだけじゃないんです。教師の両親がまあ厳しくて。テストは全部100点じゃないと殴られるんです。」
「殴るんですか!?ぼくはそんな事された経験ないなぁ。」
「それは幸せですよ。98点でもダメなんです。」
「98点かー。そんな点数取ったこともないかも。そんなの虐待ですよね?そんなふうにされてたらどっかでおかしくなるのも分かる気がします。」
「そうですよね!普通じゃないんですあの家は。」
「ていうか詳しいですね。そんな前の話まで。」
「有名な話ですよ。この間なんか部屋で音楽聴いてたら母親がうるさい!って怒鳴り込んでそのまま平手打ちですよ。」
「引きこもりになってまで暴力振るうんですか。全く反省してないですね。」
「そうなんですよ!引きこもりになったのも親のせいだと1ミリも思ってないんです!そんなやつがよく教師なんかやってられますよね!」
「学校の先生が家だとそういう人だって想像したら怖いですね。あ。もうこんな時間。すみません。明日も早いんでぼくはこれで。」
「すみません。長々と話してしまって。」
「いえ。不謹慎かもしれないですが楽しかったです。近所なんでまたお会いするかもですね。」
「そうですかね?」
「あ。ぼく村田タケシです。」
「岡田リョウです。」
〜おわり〜