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ファンと一緒にブランドを育てるSNSマーケティング実践法(全文無料公開)

どうも
BOKURAししどです
(約53,000字)

上記タイトルで、2018年1月に書籍を出しました。

起業してから3年くらいのタイミングでの色々な企業の事例をふんだんに盛り込んだ内容になってるのと、全175ページ程度と読みやすいボリュームになってます。

ぼくは毎回セミナー登壇などをする際は大体1時間で120~150枚くらいのスライドしゃべるくらいなので、良く1冊にまとまったな…とf^_^;

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さて、Twitterでもお伝えした通り、ほぼ全文無料公開したいと思います。


では、早速…

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宍戸 崇裕(ししど たかひろ)

1980年生まれ

Facebook:近況や仕事、会社のことを中心に投稿



Twitter:経営者としての苦悩やスポーツビジネス関連を中心に投稿


Instagram:ファッションや自身のバスケ動画を中心に投稿



◆日本大学(商学部)を2003年に卒業。
◆東京日産自動車販売(日産のディーラーの最大手)で4年半、車の営業
◆東建コーポレーションで約2年、不動産営業
◆Speeeで約2年、SEO営業
◆イー・ガーディアンで約2年、SNSコンサル営業及び事業企画
◆アライドアーキテクツで約2年半、SNS営業マネージャー及び、新卒教育
◆2015年8月にBOKURA創業(ファンマーケティング支援事業)

プライベートでは、野球を約10年以上、バスケを20年以上。
東京日産時代には全日本実業団で全国ベスト8。
※宍戸自身のプレイタイムは全然ないけどf^_^;
現在は渋谷区、世田谷区、品川区…などを中心にクラブチームに所属しながら各地区大会に出たりしてます。背番号は大体44番。

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はじめに

この本を手にとっていただき、ありがとうございます。
私は株式会社BOKURAを創業し、代表を務める宍戸崇裕と申します。
私たちBOKURAでは、さまざまな業種の企業を対象に、SNSを使ったマーケティング、集客、ファンベースづくりの支援を行っています。
製薬、出版、エンターテインメントなどの大手企業の他、知る人ぞ知るファッション・雑貨ブランド、老舗の菓子店など、幅広い企業のお手伝いをしています。
SNSが一般化した昨今、すべての個人が「主人公」である時代がやってきました。そして同時に、企業と個人の距離も大きく変化しつつあります。しかし、企業側は、意外とそのことに気付いていないこともあります。

「WebやSNSに広告を出したり、ツイッターに投稿したりして拡散を期待しているが、いっこうに効果が出ない」

――私たちのもとには、マーケティングや広報担当の皆さんから、そんなお悩みの声が寄せられます。

PR活動の成果が挙がらないことには、大きな理由があります。
例えば、アパレルショップに入ったとき、ゆっくり服を見たいのに、店員さんに

「試着をしてみますか」
「こちらも人気ですよ」
「こちらは入荷したばかりですよ」

などと執拗に声をかけられたら、不快に感じる方も多いでしょう。
それと同じように、SNSにおいても、まだそれほど興味を持っていない状態で、企業やブランドから広告がどんどん流れてきても、人はスルーしてしまうものです。
なぜならそれは、自分が望んでいない情報だからです。
情報提供も行き過ぎると、うっとうしがられて、逆効果になってしまうこともあります。 
そこでBOKURAでは、企業やブランドに対して、広告のように不特定多数に向けてPRをするのではなく、

すでにどこかに存在しているはずの「ファン」を探し出し、その人たちに「ありがとう」「大好き」を伝えることでさらに強力な「コアファン」になってもらい、その人たちから商品やブランドの魅力を発信・拡散してもらう……という提案をしています。

そうしたスタイルで、企業と二人三脚でSNSを運用しブランドや商品の認知度の向上、実店舗への集客、そして売上増につなげることを目指しています。
具体的には、SNSを使ったコミュニケーション施策やリアルイベントの協賛、キャンペーン支援、インフルエンサー活用施策などを実施し、実績を積み重ねてきました。
ただし、私たちは、企業に

「SNSマーケティングをずっとBOKURAに委託し続けてください」

と言うつもりはありません。
数年後には、自社スタッフだけで、SNSマーケティングの戦略策定、運用ができるようになってもらいたいと考えています。
そのためのノウハウをきちんとお伝えしていきますので、多くの方に学んでいただきたいと思っています。

本書では、
1章で、
近年の実店舗におけるコミュニケーション方法の現状と、私自身が考えるコミュニケーションのあり方をお伝えしています。

そして2章では、
私が自動車販売業や不動産業、ネットマーケティングビジネスを経験してきた中で感じてきた課題や解決手法を解説しています。
また私は以前に、SNSでの「炎上」や「風評被害」を防ぐサービスを手がけてきました。そのときに得た知見をふまえ、

3章では
企業にダメージを与える「炎上」の発生パターンや防御策について、実際の事例を挙げながらご説明します。

そして4章では、
SNSとSNSマーケティングのこれまでの変遷と現在のトレンド、今後の展望についてお伝えします。

5章では、
SNSマーケティングの成功事例を紹介。
店舗スタッフが個人アカウントを使ってお店の情報とプライベート情報を組み合わせて発信している『日比谷花壇』、企業側からユーザーにアプローチしてコアファンを醸成した『ユースキン』、SNS上でのファンづくりがリアルイベントでの売り上げにつながった『フェイラー』などの事例を通じて、その手法を解説していきます。

その他にも、私が個人的に注目した他社のSNSキャンペーンの取り組み、読者のリアクションが変わる、SNS用の写真の撮り方や演出方法についてもご紹介します。

そして、6章では
SNSマーケティングを実践するにあたり、その流れと具体的な進め方をお伝えします。
現代では、SNSをはじめ、一人ひとりの「発信するチカラ」が一昔前よりもずっと大きいものになっています

企業と個人が等しくチカラを持てる時代なのです。

日々変化する世界の中、その中心にいるのが「人」、すなわち「僕ら」なのです。
自社の商品やブランド、サービスを心から愛してくれる「本当のファン」を育てていきたいとお考えのすべての方に、本書が役立つことを心より願っています。



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1章『販売・サービス現場における 顧客とのコミュニケーションのあり方』

売り手と買い手の間には コミュニケーションギャップが発生している

◆アパレルショップでの「声かけ」を絶滅させたい


私は、買い物中に店員さんに声をかけられることが苦手です。 
アパレルショップでは、商品をなんとなく眺めているだけで

「どうぞご試着してみてください」
「他のサイズもお出しできます」

なんて話しかけられます。
ハンガーに手をかけただけで商品を見てすらいないのに、そんなふうに言われます。 
服を見ているにしても、
単なる暇つぶしでプラプラ見ている人と、
鏡の前で服を自分に合わせて見ている人の購買意欲は
まったく異なるはずです。

そういったことを見極めて、相手に応じて声のかけ方を変えている店員さんもいるでしょうが、多くの店員さんはそんなことお構いなしに、ただマニュアルどおりに声をかけてきます。
私はこれを苦痛と感じ、この習慣を絶滅させたいとさえ感じているのです。 


少し前に、あるアパレルブランドが、「声かけ不要バッグ」を導入したことが話題になりました。
「店員に声をかけられたくなければ、お店が用意したビニールバッグを持ち歩いてください」というものです。

ユーザーからは歓迎する声も多かったようですが、私から言わせると、少々ズレてるような感があります。
確かに、お客様の立場に立ったつもりで実施したサービスなのかもしれません。
しかし、よく考えてみれば、声をかけられたくない人は、なんとなく服を見たいだけだったり、下見をして比較検討をしたかったりすることが多く、購買意欲は低いはずです。
それにもかかわらず、なぜ「購入する商品を入れる」ことを前提としたショッピングバッグを持たなければならないのでしょうか。 

お客様の中には、「自分ではなかなか選べないから、声をかけてくれたほうがうれしい」という人ももちろんいます。ですから、声をかけてほしい人だけがバッグを持てばいいのではないでしょうか。

こういったことからも、「アパレルショップ側が考える声のかけ方」と「消費者が望んでいる声のかけられ方」との間に、おそらく大きなギャップがあるのだと考えられます。

【店員さんからの声掛けの場合】


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【友人、知人からの声掛けの場合】

これは、家電量販店にも同じことが言えます。 
フロアには常に店員さんがウロウロしていて、特定の製品の前で立ち止まろうものなら、画一的で流暢なトークに威圧されてしまうことが多々あります。 

家電量販店に来るお客様には、家電について
「何がわからないかすらわからないから質問しづらい」
という人もいますし、欲しい機能がすでに定まっている人や、特定のメーカーに決めている人、価格や機能の比較をしたい人、指名買いをしたい人など、事情はさまざまなはずです。

それにもかかわらず、心の距離も遠い状態の初対面の店員さんが、何の前触れもなく、いきなり詰め寄ってきて、判で押したようなセールストークをしてきます。

こうした対応は、「サービス」といえるものではありませんし、お客様の視点にも立っていないのではないでしょうか。
ただ「売りたい」、「買ってください」というのが見え見えのセールストークをぶつけられることは、お客さんにとって、わずらわしい以外のなにものでもありません。

当の販売員さんたちも、それが最善だと思ってやっているわけではないようです。私は、アパレル会社に営業に行くこともありますし、元販売員だったという方とお話ししたりする機会も多くあります。
そういった方々の前で、私は「店に入ったときの、あの店員さんの声がけ、嫌いなんですよ」という話を率直にします

すると、皆さん「実は私も声をかけられる側になると苦手なんです」とか、元販売員さんは「申し訳ないと思いつつも、やっぱり声をかけているんですよね」とおっしゃいます。上司や先輩から「お客様が来店したら声をかけなさい」と言われている手前、周りの目もあって仕方なく声がけをしている、という販売員さんも多いようです。

店側は人件費を投じて販売員を配置しているのに、その実態は、ただ売りたいがためだけのトークをしているだけに思えます
販売員自身も疑問を抱いているし、ためらいもある。声をかけられた我々もうっとうしい。ハッキリ言って、これはすごくムダなことだし、お互いに幸せとはいえないと思うのです。

◆心のうちを察してくれたらいいのに。

「店員さんの『声がけ』をやめさせるべき」と言っている私ですが、もちろん「店員さんに一切関わってほしくない」と言っているわけではありません。 
私も店員さんを頼りたいときがあります。私が店員さんを必要としているときは、本当に困っているときや迷っているとき。そんなときこそ、私たちお客の心の中を読んで、行動していくれる店員さんがいてくれたらいいのに……と思います。(わがまま…笑)

表情や仕草からこちらの気持ちを察し、しかるべきタイミングで声をかけてくる店員さんは、「センスがいいな」と感じます。

例えば、レストラン。
注文しようと手を挙げても、誰も気付いてくれない。
「すみません」と大きな声で呼んでも誰も来てくれなくて、彼女を目の前にしてちょっと恥ずかしい気持ちになる……なんてことを経験したことがある人もたくさんいらっしゃるでしょう。

その点、こちらが手を挙げそうなタイミングで目を合わせ、
「すぐ行きますよ」
という合図の微笑みを見せてくれる店員さんがいたら、私はすごく好感を持ちます。

店舗以外でも同じことがいえます。
例えば、カスタマーサポートに電話をしたとき。自分がした質問に答えるだけではなくて、質問の意図を汲んで、その上で回答してくれる人は、すごく心地がいい。

例えば、

自分が「Aですか?」と聞いたら「Bです」とただ答えるだけじゃなくて、「Bです。なぜならこういう理由があるからです」と説明してくれる人。

コミュニケーションがすごく楽だな、と感じます。

先ほどお話しした、アパレルショップや家電量販店も同じです。お客様をしっかり観察していれば、ただ何となく見ているだけなのか、比較検討をしているのかなど、その人が何を求めているかがわかるはずです。

ですから、誰に対しても同じ声がけや接客をしていても通じないのです。

声をかけるにしても「この人は何を思っていて、どういう行動を起こす人なのか」を見極めることが大切なのではないでしょうか。それを意識して店員さんが目を配っているだけでも、対応はずいぶん違ってくるのではないかと思います。

◆コミュニケーション上手は「一歩先」を読んでいる

これまで、ショップ店員さんを例にとってお話ししてきましたが、「心地よく感じるコミュニケーション」とは、ビジネスシーン、例えば営業やマネジメントの現場においても、同じことが言えると思います。

私の心の中を読みながら、私が言っていないことまで汲み取ってコミュニケーションを取ってくれると、すごくやりやすいと感じます。  

例えば、取引先の方が打合せのために当社に来られるとき。私が先方の担当者に「何人でいらっしゃいますか?」とたずねたとしましょう。
そこで
「2名です」
…と答える人と、
「2名で伺いますので、大きな会議室じゃなくて大丈夫ですよ」
…と言ってくれる人がいたとすると、後者の方に「仕事のできる人だな」という印象を持ちます。
相手は、訪問人数を聞いているということから、私の次の行動が「ミーティングルームを予約する」ことであると予測し、先回りをして気を配ってくれているからです。 

ちょっとした会話でも、こちらが口にしていないことまで汲み取ってもらえると、「なんてコミュニケーションが楽な人なんだろう」と思いますし、非常に気持ちいいものがあります。

こうしたことから、心地よいコミュニケーションをとる力とは
「先を読む力」
と言えるのではないかと私は考えています。

また、相手との距離感にも気を付けなければなりません。
そんなに親しくない人とのコミュニケーションでは、こちらも「なぜこういうことを言うのか」という背景・意図を伝えることが重要だと思います。  

よくあるシチュエーションを例にとってみましょう。

さほど親しくもない人から、いきなり
「今週末、予定は空いていますか?」
…と聞かれたとき。
ほとんどの人は、
「なぜ、この人に私の予定を教えなければならないんだろう」
…と不快に思うのではないでしょうか。
「なにかに誘われるのか?興味がないことだったら困るな」
…と、予定が何もなかったとしても「空いている」と即答するのはためらわれるでしょう。 

では、言い方を変えて、
「今週末空いていますか?こういうイベントがあって、AさんとBさんを誘ったんだけど、予定があるみたいなんです。もしよかったら一緒にいかがかと思いまして」
…と誘われたらどうでしょう。
同じお誘いの言葉でも、受け手の印象は格段に変わりますし、答えやすくもなります。 

関係が深まっていない相手とのコミュニケーションこそ、その背景に何があるのかを伝えたほうが、相手も反応しやすいというわけです。

企業と消費者の間におけるコミュニケーションもこうあるべきだと、私は思います。
誰に対しても同じ言葉をかけるお仕着せのセールストーク、一方的なコミュニケ―ションではなく、受け手の気持ちや背景を考えること。
わずらわしさを感じさせるような接客をすると、受け手は不快に思い、ブランドからはファンが離れる。
結果、誰も幸せになりません。
こうしたコミュニケーションの“歪み”を整えていきたいという想いで、私は株式会社BOKURAを設立したのです。

SNSの普及で変わり始める プロモーションスタイル

◆「誰がどんな意図で勧めているか」が選択の決め手

私が、店頭やコールセンターでの画一的な接客をやめて、相手の気持ちを考えたコミュニケーションが重要だと考える背景の一つに、SNSの普及があります。 
SNSには、育ってきたバックグラウンドや現在置かれている環境が似ている、あるいは価値観や志向が似ている人が集っています。

その中で商品やサービスの情報のやりとりがなされているわけです。
つまり、「自分を理解してくれている」仲間から手軽に、スピーディに情報を得られるようになりました。
これには、企業側が「自分都合」で発信する一方的なアピール文句は太刀打ちできないでしょう。

私自身も、買いたいものがあるとき、実際に店頭で手に取る前に、友人や知人に「どこのどんな製品がいいか」を聞いてみることがあります。いわゆる“クチコミ”です。

例えば、しばらく前に、約10年使った洗濯乾燥機が壊れたため、買い換えたことがあります。そのとき、家電量販店やネットショップを訪れる前に、まずはFacebookにこんなふうに投稿しました。

「今使っているドラム式洗濯乾燥機の調子が悪いので、買い換えを検討している。予算は*万円。次もドラム式がいいんだけど、誰かアドバイスをくれない?」


すると、いろいろな人がコメントをくれました。

「うちも調子悪いんだよね、買い換えようかな」

といった感想レベルのコメントもある中で、いくつか具体的なアドバイスも寄せられました。

「うちはA社のを使っているよ。ふんわり乾燥するし、しわになりにくい。ただ、たくさん入れると乾きづらい」

「A社からは、各メーカーのいいとこどりをした製品が出ているそうです」

「家電量販店の店員さんからB社の製品はバランスがいいって聞いて、うちはそれを買ったよ」

「個人的にはC社が気に入ってる。ただ、乾燥のときの温度が高温になり過ぎるとタオルが傷むらしいけど」

中には、自分が使っている製品の電気代についてもダイレクトメッセージで教えてくれる人もいました。
皆が勧めるメーカーがバラバラだったので迷いましたが、私が最終的に参考にしたのは、友人のF君からの「C社がいいよ」という意見でした。

F君には子どもが2人いて、私と家族構成が似ているから、製品に求めるイメージが近い。だから、最も参考になったのです。

そして、実際に家電量販店に行って、メーカー派遣の販売員さんではなく、量販店の販売員さんに相談しました。すると、家族構成をはじめ、いろいろとヒアリングしてくれた上で、「それでしたらC社がいいと思います。なぜなら……」と説明してくれたのです。

それはF君の意見とも一致し、店員さんもこちらのニーズを汲み取った上で勧めているとわかったので、私は最終的にC社のドラム式洗濯乾燥機を購入しました。 

こんなふうに、私は、最初に「誰が言っているのか」ということを重要視して購入しましたが、実際にすごく満足しています。
もし、これが失敗だったとしても、私はF君を責めることはないでしょう。この人の意見を選んだ自分が間違っていたと考えるのではないかな、と思います。

◆信頼性の高い情報が得られるのは、
 ソーシャルからではなくパーソナルから

こうしたことからも、ネットやSNSにおける情報においては、
「何が書いてあるか」ということよりも、「誰が言っているのか」が重要ではないかと考えています。 

今は情報が溢れている時代なので、正直、自分一人では最適な情報を選びきれないと思います。
一昔前は、検索して見つけた情報でだいたい事足りました。
しかし、
今は検索して出てくる情報が膨大すぎて、しかも信憑性が疑わしいものも多い。
検索結果への信頼性は低くなっていると思います。

急速に成長を遂げたグルメサイトが信頼を失いつつある一番の要因は、
「よくわからない人がコメントをしている」
…という点にあるのではないでしょうか。
食への感度や味覚は人それぞれ違いますから、自分が知らない人のコメントは信用できないという人が多いはずです。

だから、私が会食に使うお店を探す際には、社員に聞くことにしています。社員なら、会食相手のお客様のこともわかっているし、私の好みも知っている。それらをふまえて、「この店ならどうかな」と考えてから、教えてくれるでしょう。

単純に「どこの製品がいい」とか「この店がいい」ということ自体よりも、「誰が勧めているか」「誰の意見か」といったことを重要視したほうが、目的の製品やお店にたどり着ける可能性は高いわけです。

つまり、これからの時代は「誰が言っている情報なのか」ということが信頼性の基準になりつつあるのです。
こう考えると、これからは個人の発信力や影響力がどんどん大きくなってくると言えるでしょう。
そのうち、SNSではなくてPNS(パーソナルネットワークサービス)というワードが一般化するかもしれません。

ですから、私自身も個人の力を上げていかなければならないと思っています。 

私が運営しているBOKURAという会社、これから立ち上げるかもしれないメディアなどにおいても、プラットフォームそのものよりも、
「運営している人が誰なのか」ということのほうが、はるかに重要になってくるのではないかと考えます。

まずは「この人、この会社が言っていることなら間違いない」という信頼を得て、その上で相手の立場に立ち、気持ちに寄り添うコミュニケーションをとっていきたいと考えています。


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2章『販売の現場から ネットマーケティングの世界へ。現場でつかんだ課題と解決手法』


自動車、不動産―― アナログな接客スタイルで 消費者に向き合った

◆『20年通ってやっと名刺交換』は誇れるようなことなのか

私の社会人としてのスタートは自動車ディーラーの営業職でした。
特に「車が好き」というわけではなかったのですが、なんとなく、上場企業に勤めたほうが親が安心するだろう、とか車が安く買えるんじゃないかな、というふわっとしたことが入社の動機でした。

当時、私が入った自動車メーカーは、競合他社から追い打ちをかけられていて、厳しい状況にありました。そして新しい社長が来て、立て直しを図る時期だったのです。新車が7種ほど投入され、ディーラーも今後は売りやすくなるだろうと目されたタイミングでした。

そんな中、私が配属されたのはリース法人営業部。

ディーラーの子会社にリース会社が設けられており、そのリース会社で車のリース契約を取ることが仕事でした。
契約さえとれれば、メーカーは問わず車種はなんでも良かったので、私にとってはすごくやりやすくて、結構な台数の契約を取ることができました。

ただ、その営業のやり方に、私は疑問を抱いていました。
担当エリアを与えられて、その範囲内にある会社全てに飛び込み営業して来いとか、テレアポを取りまくれとか、そういう営業スタイルです。
研修に年配のOBが来て、地道な営業の尊さをこんこんと説いてくるわけです。

「一つの営業先に 20 年通って、やっと名刺を交換してもらった」
というエピソードを自慢げに披露してくれたのですが、私の感覚では
「それ、20 年をそうとう無駄にしましたね」
と言いたくなりました。

なんて効率の悪いことをやっているのだろうと、私は思っていました。
それよりも、一度結び付いたお客様と関係を深めることに時間を費やすほうが生産的ではないのか、と。

◆営業トークは一律であっていいはずがない

当時は7年に1台くらいが平均的な車の買い替えサイクルでした。
リースの多くは、車検のタイミングで契約が切れるので、4年か5年のリースがほとんどでした。
ですから、車を購入するよりもリース契約をしたほうが、代替サイクルが短くなる可能性が高い。
リース会社としての思惑もあり、当時の営業トークは

「車を買って7年乗るよりも、5年おきぐらいに新しい車に乗り換えたほうが、故障もなくトラブルも防げますよね」

というのが基本でした。
私も上司に言われるがままに、とりあえずはそういうトークをしていたのですが、その頃から、

「営業トークは一律ではないはず。むしろ一律ではダメなんじゃないか」

と感じていました。


あるお客様が

「会社の車は経費だからリースでもいい。だけど個人的には車が好きだから、自分の車は何年かおきに乗り換えるのではなく、愛着を持って乗りたいんだよね」

という話をされたことがありました。
そのお客様とは、早朝、一緒に草野球をするほど仲良くさせていただいたのですが、その話を聞いて、

「自分のやっていることが、本当にこの人の幸せになっているのかな…」

とちょっと疑問を感じるようになったのです。
その一方で、競合の自動車ディーラーを見渡すと、ある会社は店舗で待っている営業スタイルをとっていました。店舗設計をしっかりして、来店したお客様が気持ちよく帰れるような接客をしているし、むやみに試乗も勧めていない。私は、それがすごくいいなと思っていました。

ただ、勤務先の会社は上場企業で給料もどんどん上がるし、好きなバスケも実業団チームでプレイできる。営業の仕方に疑問を感じながらも、なんだかんだ自動車ディーラーには4年ほど勤務しました。

しかし、自動車業界にずっといたのでは、将来的に「車を売る」というスキルしか身に付かないことに危機感も抱いていました。そこで、他の営業もやってみたいと考え、不動産業界の営業に転職したのです。


入社した大手不動産会社では、土地活用の提案営業を担当しました。土地の所有者に向けて「この田んぼをマンションにしませんか?」といった提案をする仕事です。さらには、地域に根差して賃貸仲介や土地管理をしている“町の不動産屋さん”に対して、自社のフランチャイズチェーンへの加盟を促す営業も行いました。
このフランチャイズ営業についても、私は営業スタイルに疑問を感じていました。


例えば、渋谷駅の半径何メートル以内にある不動産屋さん全てに飛び込み営業をするという活動。でも、その範囲内にある不動産店は店舗ごとにコンセプトを持っていて、自社の方針とは合わないかもしれない。一方で、そのエリア外の店舗でも、実は困っていることがあって自社のシステムが助けになるかもしれないのに、そういうお店は対象外として切り捨ててしまっている。ここでも、お客様のニーズを汲んだ営業活動ができないことにもどかしさを感じました。


◆AI時代、人だからこそできるのは「感情を込める」こと

自動車ディーラーと不動産会社。この2つの会社での営業経験を通じて、私は「非効率な営業は悪だ」ということを学びました。


なぜなら、これからは営業の仕事の一部は、AI(人工知能)やロボットに取って代わられていく時代だからです。電話やメールでの新規アプローチ、飛び込み営業などは間違いなくそうなるでしょう。

AIの時代だからこそ、人間がやらなきゃいけないのは、「感情を込めた」営業活動を行うことです。それが重要なのではないでしょうか。

感情を込めるということは、相手の感情も理解しなければならない。

でも、飛び込み営業やテレアポでは、感情を込めにくいと思うのです。

電話をかけてもガチャンと切られるし、飛び込み訪問しても名刺すら受け取ってもらえないことがほとんど。

そのうち、感情を押し殺してひたすら機械的にやるしかない状況に陥りがちです。もちろん中には、営業をかける会社のホームページを熟読したり、社長や担当者のSNSを見たりするなどして、その人の人となりや考え方をある程度理解して営業に挑む人もいるでしょう。でもおそらくそこまでできる人は多くないのではないでしょうか。なぜなら、面倒くさいから。

そこで私が伝えたいのは、人だからこそできる営業スタイルの一つとして、「今いるお客様に感情を込めて接する。それによって信頼を得て、次の信頼につなげていこう」ということです。

◆信頼を築けば、その輪が広がっていく

私は自動車ディーラー時代、初対面からすぐに買ってくれる人には2パターンあることを学びました。

1つめは、
自ら買いに来てくれる人。ちょうど買い替えのタイミングであるとか、息子に買ってあげたいなど、目的が明確な人です。来店時にたまたま対応して、説明をしたら「じゃあ、これでお願いします」と即決してくれる人です。 

2つめは、
誰かの紹介で来てくれる人。初めから信頼を得られているパターンです。「あの店良かったよ」、「この人が良かったよ」と紹介されて来た人の場合は、スピーディに契約に至ります。
すでに自分と取引があるお客様に対して、日頃からきちんと対応していると、その人が知人を紹介してくださることがあります。だから、待っていればそのうちタイミングが来る。ディーラー時代、こうした紹介による来店や契約はかなりの数ありました。テレアポや飛び込み営業をしなくても、誰かの紹介による営業は成約率も高いし、効率も良いのです。

起業した今でも、大体2日に1回くらいは、過去に関わりを持った方からの問い合わせが来ます。「SNSといったらBOKURAししどさん」といったイメージができあがっているようで、

「ちょっと困っているんだけど、どうしたらいい?」

…といったご連絡をいただきます。

この状況から考えられるのは、私が今まで関わってきた人たちに「きちんと対応してきたから」ではないかということです。


中には、私がまだ自動車ディーラーで働いていると思っている人もいるのですが、車の相談が寄せられた場合は、私の先輩を紹介しています。実はディーラーに勤務していた当時から、私は自分の友達と

“お客さんと営業マンの関係”

になってしまうのが嫌で、友達から「車を買いたい」と相談されたら、先輩を紹介していました。
その先輩は、管理職になれるほどの高い実績があるのですが、「ずっと現場で営業をしていたい」という方。今もディーラーに勤務しているので、車の相談を受けたら必ずこの先輩を紹介しています。私の親の車も、彼が担当してくれています。
先輩からしますと、私がたくさんお客さんを紹介してくれるということにメリットを感じてくれているようです。だから、私に対して自分がどんなメリットを返せるかを考えてくれているようで、よく車に関する情報やサービスを提供してもらっています。

例えば、オイル交換を無料でしてくれますし、〇〇という新しい車種は自動運転機能がついているとか、車そのものの情報や整備や保証についてもさまざまな情報を伝えてくれます。私がなかなか実家に帰れないから、代わりに実家の様子を教えてくれることもあります。 


また、先輩は、役所から一般企業まで幅広い顧客を持っていて、お客様を私に紹介してくれることもあります。先輩は私が知らないところで、BOKURAの事業内容や私の人柄を話してくれている、いわば私の代わりに営業をしてくれているようなものです。先輩を信頼している会社の社長は

「この人が言っているんだから、きっと宍戸という人も信頼できる人物だろう」

と思ってくださるのではないでしょうか。


このように、先輩からたくさんのメリットをいただいているから、私も車の相談を受けたら、必ず先輩を紹介すると決めています。
つまり、先輩は、私の満足度を高めることを、ごく自然にやってくれているのです。
人に対してそうした姿勢で向き合える人と、私は一生付き合っていきたいと思います。もしいずれ亡くなったとしても、その人のお葬式には必ず行くし、しょっちゅう思い出すでしょう。
私自身も人からそう思われる人間でありたい。だから人が喜ぶこと、満足することをやり続けたいと思います。そうして信頼をつないでいくことで、私の葬式に来てくれる人を1万人、命日に私のことを思い出してくれる人を数多くつくることを目指しています。


モバイルSEO業界で ネットユーザーの行動パターンを学んだ

◆検索で上位にある情報を無条件に頼ってしまう人たち

不動産会社を退職したあと、私はSpeee(スピー)というモバイルSEOのベンチャー企業に転職しました。モバイルSEO業界の中では、ほぼトップクラスといえる技術力のある会社です。入社当時、私は29歳でしたが、社長は24歳で役員も23歳。
私より年上の人は1~2名という環境でしたが、優秀な人ばかりで、皆ガムシャラに仕事をしており、高い営業力もありました。

私は自動車ディーラーでも不動産会社でも高い業績を挙げていましたが、「これで天狗になっていたらヤバイ」と感じていたので、とにかく言われたことは何でもやる、誰よりもやる、という気持ちで取り組んでいました。
当時はまだスマートフォンの普及率は低く、いわゆる「ガラケー」を使っている人がほとんど。スマホと違ってガラケーには検索画面が2つあり、1つめは通信キャリアの公式サイト、もう1つは「Google」「Yahoo!」といった一般検索と呼ばれる検索画面でした。
実際、多くの人に使われていたのは、通信キャリアの公式サイトの検索画面でした。
こちらの検索は「Google」や「Yahoo!」よりも、検索結果を上位に表示させるアルゴリズムが単純。
簡単な例でいうと、「リモコン」というワード検索で、サイトを上位に上げたい場合、サイトのページの中における「リモコン」というキーワードの含有率を一定の割合に高めると、上位に持っていきやすいということです。

上位に上げられるということは、検索から入ってくる人たちの流入数をかなり稼げる。流入数が上がれば、同時に収益も大きく向上するということです。この仕組みにおいてSpeeeの技術力はトップクラスでした。
ここで私は、ネット検索をするユーザーの行動属性を学び、情報に踊らされる人はやはり一定数いると感じました。
SEO業界にいない限り、どういう手段で検索結果を上位に持ってきているかということを知らないと思うので、「誰が言っている情報か」ということよりも、検索で上位にあるものが良い情報だと信じてしまう人たちがたくさんいる。 
こういう人たちが変な情報に踊らされないようにするには、「誰が発信している情報か」をしっかり見たほうがいいと思ったのです。

◆ネット上の情報に対する信頼性が揺らぐ

私がそう気付いた頃から、グルメサイトの問題が注目され始めました。「レビュアー」と呼ばれる人たちが、いいことを書きこむとお店の点数が上がる。
しかし、その多くの公式サイトはキーワード含有率によって上位に上げられるので、極端に言えばアダルトサイトの中にも一定のキーワードをたくさん埋め込んでしまえば、検索上位にアダルトサイトを上げてしまうこともできました。
このときに私は「そういうのは嫌だな。もっといい形にできるんじゃないか」と考えるようになったのです。 

 
そして、Speeeに在籍していた2年の間に、どんどん時代は変わっていきました。2010年頃、SNSが台頭してきたのを目の当たりにしたとき、
私はこれからは検索の時代ではなくなってくるのではないかと感じ始めていました。
検索をかけると、トップ画面には大体1位から10位ぐらいまでの結果が表示されますが、11位以下(2ページ目以降)を見る人は10%以下です。それは上位に出てくるサイトを信頼してい るというよりも、次のページに行くのが面倒くさいということが一番の理由だと思います。
この「面倒くさい」は、人間が絶対に感じるものですから無視することはできません。


こう考えると、多くのネットユーザーは、やがて検索すること自体も面倒くさくなるのではないかとも思いました。現在ではすでに、考えただけで物を動かせるといったIoTの技術も出てきていますが、遠い未来ではテレパシーの世界になってくるのではないか、と。
こうして私は、「検索」以外にもいろいろな仕組みがありそうだということ、これからは検索の時代ではないということ、そしてSNSに可能性があることを感じて、Speeeを退職し、イー・ガーディアンという会社に転職しました。


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黎明期のSNS分野で、 「守り」のノウハウを身に付けた

◆一般ユーザーの書き込みが、企業にダメージを与える

イー・ガーディアンは、ブログや掲示板、SNSにおける不正な書き込みや投稿を監視して炎上や風評被害を防ぐ「ネットパトロール」事業を中心に、ソーシャルゲームのデバッグサポート、ソーシャルメディア、コミュニティサイトの運営代行を行っている会社でした。


その中で私がやっていたことは、2ちゃんねるをはじめとした掲示板の監視です。そこに不適切な投稿があったら削除依頼をしたり、場合によっては通報対応を行ったりしていました。

SNSの流行に伴い、掲示板だけではなく、大手メーカーのFacebookページなどに

「この商品、全然ダメだった」
とか
「店員の態度がすごく悪かった」
といったクレームを書き込む人も現れるようになりました。

こういうコメントがずっと残ってしまっていると、それは企業にじわじわとダメージを与えていく。そこでメーカー側から「ここを数時間おきに監視して、変なコメントがあったらすぐ通報してください」、あるいは「投稿を非表示にしてください」といったご依頼を受けました。

こうした背景を受けて、私は、そもそも投稿内容が炎上しないようにライティングも含めた監視を行えばいいのではないかと考えるようになりました。つまり、SNS投稿の代行事業やSNSの運用代行はビジネスになるのではないかと思い付いたのです。

そこで、会社の中で2~3人のメンバーとともに取り組んだところ、年商(売上)1億円ぐらいまで持っていくことができました。

この事業に手応えを感じましたが、イー・ガーディアンのコンセプトは“ブランドを守る”ことが第一です。顧客からは

「SNS始めたいけど、炎上したくない。どうしたらいい?」

とのご相談が多くありました。

「炎上が怖いなら、やらなければいい」

という話でもあるのですが、“なりすまし問題”が発生することもあるのでそういうわけにもいきません。

“守り”を求められる中で、私は

「SNSをもっと上手く使ったらいいのに」

と思っていました。しかし、顧客からは

「SNSの上手な活用方法はありませんか」

という相談は少なかった。

そこで私は、SNSの積極的な活用方法の提案をするなら、マーケティングの会社に行った方がいいと考えたのです。
イー・ガーディアンでSNSの“守り”の重要性を学んだ私は、今度はSNSの“攻め”の部分を開拓するため、アライドアーキテクツに転職することを決めました。

SNSを活用した キャンペーンの企画・運営実績を積んだ

◆「いいね!」を獲得し、フォロワー数の拡大へ

アライドアーキテクツは、SNSのビジネス活用やマーケティング支援をしている会社です。

現在は広告事業が主軸のようですが、私が入社した頃はキャンペーン事業が中心でした。キャンペーン事業で多くの企業から支持を集め、上場を果たした会社です。

SNS上におけるキャンペーンとは、例えば、Facebookなどの企業ページから情報を発信し、「いいね!」を増やしてフォロワー数を獲得していくことがミッションとなります。

しかし、Facebookのように色々な人が利用しているプラットフォームの中に、企業がポンッと入ってきて、情報をポーンと発信しただけだと、「いいね!」がなかなかつかないし、フォローもされません。そこで、Facebook上でキャンペーンを告知して、参加者に「いいね!」を押してもらい、フォロワーを増やしていくのです。

例えば、あるアパレルブランドのケースだと、
「いいね!をしてくれた人の中から 50 名にオリジナルハンカチをプレゼント!」
という内容でキャンペーンを行いました。

すると、「ハンカチが欲しいから参加しようかな」という人がたくさん「いいね!」を押してくれるわけです。さらに、キャンペーン専用のアプリを開発していたので、個人情報の入力が簡単だったことも参加者を増やすことができた要因でした。

◆一時的な盛り上がりに終わり、効果が続かないことも

その中で私が学んだことは、キャンペーンでは「もの欲しさ」で入ってくる人、いわゆる「懸賞ユーザー」の方が多いのではないか、ということです。

キャンペーンを開催すると、参加者の2割ぐらいは「本当にそのブランドが好きだから景品も欲しい」という人で、残りの8割は景品だけが目当ての人だといっても過言ではありません。

ですから、キャンペーン開催中の短期間でフォロワーが1万人に増えたとしても、そのうちの4,000~5,000人は「いいね!」を解除してしまうこともありました。 

企業はこの1万人を集めるために、「いいね!」の獲得1つあたりに100円ぐらいのコストをかけます。にもかかわらず、半分以上は離脱していってしまう。たとえ抜けていかなかったとしても、キャンペーン後にこの企業のページを見なくなってしまうと、Facebookのアルゴリズム上、その人にあまり情報が届かなくなってしまうのです。そうなると、結局は「幽霊会員」を増やすために、企業はお金を支払っているともいえます。


もちろん、すべてのキャンペーンがそうした状況に陥るわけではありません。例えば、キャンペーンのインセンティブをamazonギフト券とかにするといいねは増えるし、ファンイベント参加券などにすると、「もの欲しさ」で入ってくる人は少なく、コアなファンになってくれる人が集まります。
私はここで約2年半、営業マネージャーを務めました。そして、これらの事例を通じて、SNSにおけるキャンペーンの運用方法とユーザーにとって参加しやすいキャンペーンの設計の仕方を学んだのです。

でも、懸賞ユーザーの多さを目の当たりにしたとき、もしかしたら、キャンペーンそのものも、企業からの「一方的な」コミュニケーションにすぎないのではないかと感じたのです。アパレルショップ販売員の「試着いかがですか?」という一律なセールストークと同じように、来店したお客様に対してポンっと投げているだけなのではないか、と。

ですから、これからはもっと違う方法でSNSをビジネスに活用して、ブランドや企業のコアなファンを増やしていけるような手法を展開していきたいと考えるようになりました。

それが、BOKURAの創業につながっているのです。


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第3章
【企業にダメージを与える SNSの炎上パターンと防御策】

の章をお送りしていきます。

◆個人のうかつな発信が、所属企業のイメージを失墜させる


企業でも個人でもSNSの活用が活発化していますが、不適切な発信をすることによって、企業がダメージを受ける事件が増えています。
企業がどんなに注意を払っていても、従業員の安易な発信により企業に矛先が向くことも少なくありません。一部から出た批判が広がり、「炎上」となってしまうこともあります。 
この章では、「炎上」の代表的な発生パターンを3つご紹介します。自社の従業員に注意を促すためにも、ぜひどんなリスクが潜んでいるのかを知っておいていただきたいと思います。

【炎上事例︱1】

2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。それからしばらく、多くの企業がテレビCMを控えました。テレビCM枠はACジャパンが占め、バラエティ番組の多くが災害報道に切り替わりました。
そんなとき、都内のTSUTAYAのある店舗が、ツイッターで次のように発言します。

「営業再開しました!テレビは地震ばっかりでつまらない、そんなあなた、ご来店お待ちしています!」


社会的にSNSリテラシーが向上した今となっては、瞬時に「これはマズいだろ」とわかりますよね。しかし、2011年当時は、SNSの拡散力や影響力を理解している人は今ほど多くありませんでした。案の定、ツイートは炎上します。

企業の真価とは、アクシデントやトラブルへの対処の仕方によって問われると言われます。こうしたことが起きてしまった場合、企業は誠意をもって対処しなければなりません。ところが、同店は批判を受け、次にこう発信したのです。

「先ほどは不謹慎な発言してしまい申し訳ございませんでした! 気分を害された方たいへん申し訳ありませんでした!!!!!!!」

発信者本人は、申し訳ない思いを「!」の数で強調したかったのでしょう。しかし、社会的には真摯に謝罪する場面で「!」の連発はふさわしいものではなく、むしろ軽薄な印象を与えてしまいます。

当然ながら火に油を注ぐ結果に。

事態はネット上の炎上にとどまらず、店舗のガラスが割られたり、直接抗議が来てしまったりと、店舗側は対応に追われました

店長が実名を出し、正式な謝罪文を公表することでようやく収束したのです。 
ツイートした店員は、軽い気持ちで発言をしたことと思います。大震災は東北での出来事であり、東京圏とは別世界で起きたことという感覚だったのかもしれません。

東北の被災者の方々、また東北にいる家族・友人を心配する方々の気持ちを思いやる想像力が欠如した状態で、来店客を呼び込もうとする気持ちが先走ったことが失敗につながってしまいました。



従業員によるプライベートアカウントでの不適切な発言

次は、従業員が個人のアカウントで不適切な投稿をした結果、雇用している企業に批判が寄せられるパターンです。

「飲酒運転しちゃった」
「ケンカをふっかけられたんで、相手をボコボコにしてやった」


――など、身内しか見ていないものと思い、違法行為や暴力的・非倫理的な行為を告白。それをたまたま見つけたユーザーが当人の過去のツイートなどをたどっていき、所属先が判明する、というパターンです。
所属先企業には、「このような人間を雇用している企業は信用できない」といったクレームが寄せられ、その批判はやはりネット上で拡散していきます。世の中で起こっている炎上で圧倒的に多いのが、このタイプです。

【炎上事例︱2】

2011年、国内のとあるスポーツブランドのショップに、有名なプロアスリートが来店しました。すると、その店に勤務する女性社員が個人のツイッターアカウントでこんなツイートをしたのです。

「そういえば今日、〇〇が来た。ビッチを具現化したような女と一緒に来てて、何かお腹大っきい気がしたけど結婚してんの( ^ ω ^ )??」

同行していた女性はその選手の妻でした。
この侮辱発言でツイッターは大炎上。本社に批判が殺到し、スポーツ誌でも大きく取り上げられる事態に。その会社は公式サイトにお詫び文を掲載することとなりました。
そしてツイートした女性社員は自主退職に追い込まれたばかりか、ネット上に本名や顔写真、彼氏と見られる男性と撮ったプリクラなど、さまざまな個人情報がさらされることになったのです。こうした情報を消すサービスも出てきていますが、すべてを消すことはできません。その女性の名前や写真は、今もネット上に残っています。一度炎上してしまうと、個人にとっても会社にとってもネガティブな情報が、半永久的にネット上を漂うことになるのです。


【炎上事例︱3】

北海道のホテル従業員が投稿したツイートも瞬く間に広まりました。その従業員はとある男性アイドルが宿泊していることを、興奮気味に発信したのです。

「やばい。やばい。うちのホテルに〇〇くんが泊まったんだが、これから泊まった部屋に行ってくる」
「使用済みタオルhshsしといた」

※hshs(ハスハス)=匂いをかぐというニュアンスを含んだ、興奮したときの呼吸音を表すネットスラング。

さらには、友人と見られるフォロワーからの

「〇〇くんが使った空き缶がほしい」
というコメントに対して
「ペットボトル取っておいたから会うときに持って行く」
と返信。また、部屋にあったお酒やタバコの吸い殻まで写真に収め、投稿したのです。 
未成年ではないので男性アイドルが法律違反をしていたわけではないにせよ、アイドルはイメージが命。ファンをはじめ、炎上の仕掛け人たちからの攻撃は避けられませんでした。
「ヤバい」と思った従業員はすぐにツイッターアカウントを削除するも、先ほどの事例と同様、個人情報がさらされてしまったのです。企業の社員教育が甘かったということで、ホテル側も謝罪をするはめになりました。


いたずら・悪ふざけ投稿 
三つめの炎上発生パターンは、常識外れな悪ふざけ投稿です。寿司屋でお客さんが醤油差しの注ぎ口を直接舐めたり、コンビニの冷蔵庫の中に入ったりする様子をSNSや動画サイトに投稿する事例が頻発しています。

【炎上事例︱4】

2016年、28歳の男性が、コンビニで販売されているおでんを指で突く行為を動画で公開しました。この「おでんツンツン男」は、器物損壊と威力業務妨害の疑いで逮捕されるに至っています。
このケースにおいては、企業側に落ち度はなく、事故に巻き込まれただけの完全なる被害者です。しかし、これにより企業イメージがプラスになることはありません
コンビニでおでんを買おうとした人が、あの動画を思い出して何となく気持ち悪くなり、買うのをやめてしまうこともあり得ます。そうすると売上ダウンにもつながることになります。不特定多数の個人がお客となる業態では、なかなか予測・予防が難しい炎上パターンです。

ネット上では 「炎上仕掛け人」たちが目を光らせている

◆ツイートからわずか 1 時間で個人情報が丸裸にされる

有名人でもない一般個人のSNS投稿が、どのように炎上に発展し、世間に広く知られ、企業まで巻き込むことになるのか。その経緯についてご説明します。
前提として、炎上経験者の多くは、投稿内容の公開レベルを「限定公開」、つまり特定の友人にしか見られない設定にしています。しかし、フォロワーの中に一人でも強く問題視する人がいたり、炎上させたいという悪意を持つ人がいたりしたら、投稿のスクリーンショットとともに、瞬く間に広まっていきます。 
このとき拡散を得意とするのが「2ちゃんねらー」たち。彼らは情報収集力に長けており、ときに異常なほどの結束力を見せます。 
2ちゃんねらーの恐ろしさがわかるのが次の事例です。


ある女子大生がツイッターにこんな投稿をしました。

「テスト、カンニングしたら楽勝だったよ」
彼女のフォロワーは49人。さほど多くありません。
このツイートが14時49分時点。その2分後に、2ちゃんねらーがそのツイートを発見。当人の知らぬところで、そのツイートが取り上げられ、スレッド(掲示板上で共通の話題の投稿をまとめたもの)が立ちます。

「こういう場合、リツイートすべき?」
「いや、まだだ。情報が出そろってからにしようぜ」

彼らは、その女子大生に関する情報収集へ動き出します。情報収集手段としての王道は、別のSNSでのアカウント検索。多くの人は、SNSの箱が変わっても同じアカウント名を使用することが多いからです。こうして、女子大生はmixiやブログなどを暴かれ、幼稚園~大学までの経歴、住所、バイト先、部活など、ことこまかに調べ上げられてしまいました。これらの個人情報が出そろったのは15時33分。ツイートから 1 時間も経たずにこれだけの情報をつかまれてしまうのです


ここからは「祭り」と言われるフェーズに入ります。別サイトへの拡散や、「電凸」という関係各所への抗議電話が一斉に始まるのです。
電話での抗議を受けた大学側は、突然のことで「現場を押さえていないから、処分はできない」と回答。
すると、その大学の反応までもがネット上にさらされます。こうして大学には、さらなる批判が押し寄せ、関係者は通常業務を中断して対応に追われることになるわけです。
この頃になると、本人の周囲が気付き始め、「カンニングしたの?炎上してるよ」と本人に告げます。そこで急いでアカウントを削除しても、後の祭り。ほぼ全ての投稿を魚拓(スクリーンショットによるアーカイブ)という形で記録されているため、拡散は続いていくのです。

このような事例では、トラブルを起こした過去が実名とともにネット上に残るわけですから、就職活動などにも影響を及ぼすことになります。何気ない発信が、その後の人生を大きく狂わせることにもなるのです。


こうしたリスクは企業においても同様です。

雇用する従業員が炎上対象となった場合、企業にも火の粉が降りかかります。抗議の電話やメールに対して、事態を把握しないままに煮え切らない対応をしたり、ましてや無視したり不遜な態度をとったりすると、それまでもがネット上にさらされます。クレーム電話への受け答えが録音され、ネット上に投稿された事例もありました。その対応が真摯さや誠意を欠くものであった場合、「企業姿勢」への糾弾が始まります。攻撃対象が個人から企業へ移っていくのです。そしてその経緯は、ネット上でさらされ続けることとなります。

企業としては、自社が炎上に巻き込まれるリスクも踏まえた上で、対応方針を決めて従業員に周知させることも重要といえるでしょう。

炎上を防ぐために、炎上してしまった後に 企業がやらなければならないこと

◆攻めたつもりが、守る立場に追いやられないために

企業がひとたび炎上に巻き込まれると、対応に追われて通常業務の遂行ができなくなるばかりか、対応を誤った場合は企業イメージを損ない、売上にもマイナス影響を及ぼしてしまいます。自社の炎上は何としても避けたいものです。しかし、何が火種になるかは予測がしづらいものです。尖った面白いコンテンツを作って仕掛けたつもりが、その感覚が世間に受け入れられず、意図せず攻守逆転してしまうケースもあります。


炎上に対して企業がやらなければならないこと。

それは、
「事前に防ぐこと」

「事後に誠実に対応すること」
この2つだけです。


当たり前のように聞こえるかもしれませんが、私の感覚でいうと、できている企業はそう多くないと思います。
「自社に限って、そんなことが起こるはずがない」
という慢心から事前の対策を怠る企業。
そして、炎上後に
「これ以上ダメージを大きくしたくない」
という自己防衛の意識が働き、少し事実を隠すつもりが、つじつまが合わなくなり嘘に嘘を重ねてしまう企業
――こう聞くと、他人事のようには思えないのではないでしょうか。
では、企業ができる対策についてご紹介しましょう。


◆社員教育によりSNSリテラシーを高める

事前の対策は「教育」につきます。
炎上には3つのパターンがあることをお話ししました。

多くの企業は

①「公式アカウントからの不適切な発言」
を不安視しています。そのため、私たちのようなSNSマーケティング専門企業に対しては、
「ソーシャルメディアポリシーやSNS運用マニュアルを作りたい」
といった相談がたびたび寄せられます。


もちろんそうしたルール作りも大切ですが、炎上案件で圧倒的に多いのは
②「従業員によるプライベートアカウントでの不適切な発言」です。
限られた予算を使うのであれば、社員教育に費用を割く方が賢明だといえるでしょう。 
日常生活とSNSは、切っても切り離せない関係になってきました。ならばSNSを禁止するのではなく、上手に付き合っていく方法を考えた方がいい。そんな考え方が浸透し、最近では企業だけでなく、高校生へのSNSリスク講座のニーズも増えてきています

「教育」といっても、発信内容の善悪の判断は、個人の道徳観によるところが大きいといえます。人の倫理観を正すのは難しいこと。
しかし、方法論を学べば、情報を知らなかったことで起こる炎上は避けることができます。そのために、私たちが提供する講座では、
「なぜ炎上したのか」
「どうすれば避けられたのか」

といったことを、実際の事例にもとづいて紹介しています。


例えば細かいところで言うと、個人が画像をアップする前に、不都合なものが写り込んでいないかチェックすること。背景に写ったダンボールの文字から所属企業を特定されたり、車のミラーに写った背景で住所を特定されたりと、思わぬところから情報が漏れていくからです。
軽いノリのつもりが、SNSの拡散力で一気に広がってしまう。その一度の炎上が、個人や企業の運命を左右するという意識を持ってもらうことが大切です。


◆さまざまな人の視点でのチェック体制を整える

企業の場合、「公式アカウントからの不適切な発言」に近い事例で、CMや広告に不適切な表現が含まれていたとして炎上するケースもあります。
例えば、女性に対しての差別的な内容になっていたり、過度に性的なものを彷彿とさせる表現が含まれていたり。
炎上してから見ると
「これは明らかにアウトでしょ」
というものも多いのですが、制作過程で誰も指摘することなく進んでいく事態が起きています。 
そこで湧いてくる疑問は
「どこかで止まらなかったのか」
ということ。
おそらく、CMプランの決定に関わった人が全員男性であったり同世代であったり、視点が画一的だった可能性があります。チェックがザルにならないためにも、いろいろな立場の人の視点でチェックするのが望ましいでしょう。


◆炎上してしまったら…とにかく真摯に謝り続ける

思いがけず炎上してしまったときはどうするか。あれこれと言い訳をしたり、自社をかばいたくなったりする気持ちもわかりますが、まずは誠実に謝ること。これ以外にありません。

実害の大きさによって対処法も変わってきますが、真摯に謝る姿勢は、絶対に必要です。どこかで聞いたような「こっちだって寝てないんだ」などと逆上するなんていうのは論外です。また、謝罪会見が必要なのであれば、会見での発言内容はもちろんのこと、会見までのスピードや、しかるべき立場の人間が登壇するかどうかの検討が重要です。これらを見誤ると、2次炎上を引き起こすきかっけになるので注意が必要です。

基本のスタンスは、

①真摯に謝罪すること
②謝り続けること
 (「一度謝ったからもういいでしょ」という姿勢は絶対にNG)
③どのように改善できるか提示し、約束すること

この3つです。


直接的な被害を受けた人以外は、時間の経過と共に、怒りは収まっていくもの。この基本を徹底的に守れば、事態は沈静化していくのです。


◆消費者と信頼を築いておけば、炎上も乗り切れる

企業が炎上を防ぐためにできることをお話ししてきましたが、最も重要なのは
「消費者と信頼を築いておく」ことだと思います。
ファンが多くいるブランドには、自浄作用があるからです。

たとえ、企業のメディアが発信すべき情報を誤るなどして「炎上」したとても、その運営者に人望があって、普段から信頼を築いていれば、過ちを受け入れてかつ応援を続けてくれる人はたくさんいます。「炎上した」という事実よりも、そのメディアのブランドや運営者の人となり、それまでやってきたことが評価されるようになるのではないかと感じています。

以前、炎上した食品会社を例に考えてみましょう。
まるか食品株式会社のインスタント焼きそば「ペヤング」が、消費者から異物混入の指摘を受け、自主回収をした事案がありました。ペヤングは昔から愛されてきた商品。販売停止が決まると、悲しみ嘆く声がツイッター上に溢れました。それだけでなく、異物混入を訴えたツイッターユーザーにまで批判が寄せられる事態となりました。

八つ当たりのように、被害者にまで批判の矛先を向けるのは間違っていると思います。
ですが、ペヤングの販売が再開されたとき、「本当に大丈夫かよ」といった懐疑的な声より
「待っていました!」といったポジティブな声の方が大きかったのが印象的でした。
これはやはり、そのカップ麺のファンがそれだけ多かったということになります。


会社がそれまで、味の追求を続けるなどしてファンを大切にしてきたからこそ、たとえ炎上しても、顧客が離れなかったのです。


ファンを獲得しておくと、炎上とまではいかないにしても、否定的な意見やクレームを、ファンが打ち消してくれるという作用が働きます。


例えば、とあるWEBサービスがリリースされたとき、入力フォームに不備があり、スマートフォンからアクセスしづらい状態が何時間か続きました。ネット上に「できないじゃん」という不満が噴出する中、とあるユーザーさんが
「iPhoneだったら〇〇のやり方でできるよ」
と、対処法を自主的にシェアしたのです。
企業が考え及ばないようなトラブルが起きたとき、ファンが自ら火消しをしてくれる。企業にとっては、本当にありがたい存在です。
このように味方になってくれる「ファン」を増やすこともまた、SNSを活用することで可能となります。次の章からは、SNSをうまく活用してファンを獲得していく方法をご紹介しましょう。


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第4章

『SNSとSNSマーケティングのこれまでとこれから』

「友人・知人からつながるコミュニティ」から 「拡散力のあるツール」へ

◆震災を機に、情報入手ツールとしての注目が高まる

SNSが一気に広まるきっかけになったのが、2011年3月に発生した東日本大
震災です。ちょうどこの頃、「Twitter」が広く使われ始めていました。

震災発生当時にどんなことが起きていたか、皆さんの記憶にも残っているのではないでしょうか。

甚大な被害があった東北はもちろんのこと、首都圏でもかなりの揺れを観測し、交通機関が麻痺して多くの人が帰宅困難者となりました。

そして、テレビのニュースでは、東北沿岸部の町が次々と津波に呑まれる映像が流れました。 

当然ながら、家族や親しい人たちの安否や状況を確かめようと、皆が一斉に電話をかけ始めます。

そのため電話回線がパンク状態となり、かけてもかけてもつながらない状態が数日続きました。

当時、連絡手段として一般的だったキャリアメール(携帯電話キャリアが提供するメールサービス)も届きづらい状況となりました。

そんなとき重宝されたのがTwitterです。物資情報や避難所情報が、Twitterの特徴である「拡散」の力を借りて、多くの人に情報を届けることになったのです。

誤情報が拡散されて混乱を招くなど、必ずしも良いことばかりではありませんでした。

しかし、緊急時においては、電話回線に比べ、インターネットの優位性が発揮されたのは誰の目にも明らかです。

これにより、Twitterは災害時にも強い連絡手段として、広く知れ渡ることになりました。

Twitterが流行したのと同じ頃、当初は「本名での登録だから」と敬遠されていた「Facebook」もどんどんユーザー数を増やしていきました。

一方、手軽な連絡・コミュニケーション手段として、キャリアメールから「LINE」に遷移。その数年後には、画像や短時間動画を共有するInstagramが出てきます。

こうしたSNSはそれぞれに特徴があります。Twitterは20〜30代が中心。

「140文字」という短いメッセージにより、瞬発的に広く浅く広がるのが特徴です。

一方、Facebookは実名制をとっており、ユーザーは20代〜60代と幅広く、ビジネスシーンでも活発に利用されています。

Instagramはユーザーの年齢層が下がり、10〜30代がメイン。LINEは家族・友人・知人との日常のやりとりに使用され、ユーザーは10〜60代まで広がっています。

※2020年5月現在


企業はSNSをどのような形で マーケティングに活用してきたか


◆SNSマーケティングの始まりは「広告の投下」から

では、企業は自社商品・サービスのプロモーションのためにSNSをどう活用してきたか。初期の頃は、SNSへの広告出稿が中心でした。 

SNS広告は、ユーザーが登録時に入力した情報(年齢・性別・家族構成・出身大学・所属企業・居住地など)をもとに、セグメントされたターゲットに広告が表示されるものです。情報を届ける対象を絞って、関係ない人には届かないようにする。

不特定多数に向けたテレビCMや雑誌広告よりも効率的です。 
ただし、属性を絞ったところで、例えば「中野区在住・30代・女性」の興味関心は皆一様かといえば、当然そうではありません。ですからこの方法も、結局のところ、これまでのマス広告の考え方とそれほど大きく変わらないのです。 

しかし、これが進化すると、ユーザーの「興味」「関心」に応じた広告投下が可能になりました。自社商品・サービスに興味を持ちそうな人を狙ってアピールするのですから、費用対効果に優れています。

ただし、場合によってはユーザーの反感を買うこともあります。

例えば私の場合、バスケットボール関連のアカウントをフォローしているので、バスケの動画がよく流れてきます。

例えば、「NBAのトップ10プレイ」といったものです。興味を持ち 10 位からスタートして見入っていると、3位ぐらいの動画の手前で、こんなアナウンスが表示されます。

「まもなく広告が流れます。続きの動画は広告の後で」。

私としては動画が見たいのであって、広告には興味がない。

広告動画の終了を待っているのももどかしいので、3〜1位を見ることなく閉じてしまいます。 
こうした広告の投げ方は、私は失敗なのではないかと思います。

うっとうしがられて飛ばされ、結局見てもらえない。

それだけならまだしも「せっかく楽しんでいたのにジャマされた」と、広告を割り込ませてくる企業を嫌いになってしまうかもしれないからです。

SNSに対する広告投下は、今後も手法を高度化しつつ、よりターゲットをピンポイント化しつつ、続いていくでしょう。

活用するにあたっては、逆効果とならないようにユーザーの心理をとらえて行うことが大切だと思います。


◆企業が公式アカウントを開設。 「フォロワー」獲得のため投稿を増やす

Twitter、Facebook、Instagramなど、拡散性が高いSNSが浸透するに従って、世の中に広がった新たな価値観がありました。

それは、「フォロワー数」です。フォロワーの数が多ければ多いほど、当然ながら情報の届け先も多くなります。

フォロワー数の多さが、その人の影響力やユニークさを表す要素の一つだという考え方が広まっていったのです。
SNSの活発化に伴い、多くの企業は自社の公式アカウントを開設するようになりました。

しかし、SNSはPR効果の測定がしづらく、KPIに設定できる要素が少ない。そのため、わかりやすい形で現れる「フォロワー数」が効果の指標となり、フォロワーを多く獲得することに価値があると考えられました。

そして、運用を開始すると、「思ったよりフォロワー数が増えない」という壁にぶつかることになります。

では、フォロワーを増やすために何をするか。

当初は「とにかくたくさん投稿する」ことが目標となりました。しかし、広報担当者がかけられるパワーには限界があります。

そこで、「投稿代行」を行う会社が登場しました。しかし、参入しやすい事業のため、類似会社が続々と増え、結局は価格競争となり、工数がかかる割にあまり収益性の良くないビジネスとなってしまいました。

その結果、「いいね!」がつかないような、安かろう悪かろうな投稿が増えたのです。 
そして、やみくもにたくさん投稿をすればいいというわけでもありません。皆さんもご自身が使っているSNSのタイムラインをイメージしてみてください。

SNSでつながった人が 1 日に何回も何回も投稿する人だった場合、最初は「いいね!」を押すかもしれませんが、いずれスルーするようになりませんか?

それより、「あ、珍しく投稿しているな」という人に対しての方が、「いいね!」を押す心理的ハードルが低くなるのではないでしょうか。

Facebookだとわかりやすい傾向なのですが、「いいね!」やコメントをしなくなると、その人と自分とのエンゲージメント(親密度)が下がり、独自のアルゴリズムにより、タイムラインに表示されなくなっていきます。

企業がユーザーとつながり続けるためには、「適正な量」と「読まれ続ける質」が重要というわけです。


それがわかってきた昨今は、以前と比較すると「内容」や「質」にこだわる企業がずいぶん増えてきました。「フォロワーの数は、結局のところ売上増につながっているのだろうか」という疑問を、企業が持ち始めたからだと私は考えています。
今では大量に投稿するのではなく、センスの良い投稿にするために、コーディネーターに発注する、あるいはプロのカメラマンを使うなど、コストの投じ方が変わってきているのです。

また、2章で触れたとおり、私は前職でSNS上でのキャンペーンの企画・運営を手がけていました。

その当時の事例としてもご紹介しましたが、「フォロワー数を増やす」という目的のためだけに景品を用意して多くの人を呼び込んでも、ほとんどが離脱していく…という結果に終わることがあります。

SNSを活用してキャンペーンを行うにしても、どんな人を呼び込むか、どんな景品を用意するか、どんなコミュニケーションをとるか…といったことを工夫する必要があるのです。


◆「インフルエンサー」に自社の情報を発信してもらう

企業が自社の公式アカウントで情報発信するほか、「ターゲットに対して影響力がある人に、自社の情報を発信してもらう」という取り組みも広がってきました。

これが「インフルエンサーマーケティング」と呼ばれるものです。 


例えば、20代女性をターゲットとする企業が、20代女性のフォロワーをたくさん持っている人に商品とギャラを渡し、「使った感想を投稿してください」と依頼するものです。

投稿を見た人は「憧れの〇〇さんが取り上げているものだから使ってみたい!」と、その商品を購入するわけです。
なお、インフルエンサーへのギャラの相場は、人や状況によりますが、フォロワー数×2〜4円ほど。

つまり1万人のフォロワーがいる人であれば、2万〜4万円程度のギャラで1投稿してもらうことになります。

こうしたインフルエンサーへの依頼を代行する会社も増加しています。

依頼する企業側としては、インフルエンサーへのギャラに加え、インフルエンサーに対する交渉、商品情報の提供、進行管理、効果測定などの業務に対する報酬を支払う形となります。
なお、そうした会社の姿勢には2パターンあるようです。

ネガティブな感想は載せないように指示し、いいことだけを言ってもらう。いわゆる「ステマ」(=ステルスマーケティング。広告だと気付かれないように宣伝すること)でも構わない、気付かれて叩かれたらやめればいい、という考え方の会社。

一方、ハッシュタグに「PR」というワードを入れたり、インフルエンサーの投稿内容を操作しなかったりと、良心的な会社もあります。おそらく前者のタイプは淘汰されていくでしょう。

インフルエンサーにも嫌がられるし、ステマに積極的に加担するインフルエンサーであれば、やがてフォロワーの信頼を失うでしょうから。 

なお、こうしたインフルエンサーマーケティング代行会社の多くは「インフルエンサーに投稿してもらって終わり」という形態です。

そこで私は、インフルエンサーを動かしてリアルイベントを企画・運営したり、インフルエンサーのみならずインフルエンサーのフォロワーをも巻き込むような企画・運営をしたりするービスを立ち上げ、irodoriという会社で手がけています。


どのように行うかというと、自社でプロモーションイベントを企画し、インフルエンサーに「こんなイベントがあるから一緒に行こう」と呼びかけてもらい、フォロワーの皆さんを連れてきてもらいます。

そして、イベントの場で、インフルエンサーとフォロワーが交流する仕掛けをします。

例えばアパレルブランドであれば、インフルエンサーがフォロワーに似合うコーディネートを見立ててあげる、といったようにです。

日本人の特性として、「イベントに参加したからには何か買わないと」という心理が働きます。

そのため、単にイベントを楽しむだけでなく、購買にもつながります。

このように、インフルエンサーは仕事をしてギャラを受け取ることができる、フォロワーは憧れの人と直接交流してコーディネートもアドバイスしてもらってうれしい、そしてイベントを主催したブランドは売上増になる……と、まさにWin-WinWinの効果が期待できるのです。

また、このイベントで撮影された画像や動画をSNSで発信したり、公式サイトのコンテンツ化したりすることで、次のプロモーションにもつながっていきます。

テレビCMや雑誌広告を打つよりもずっと低コストで、自社に顧客を呼び込み、売上増につなげられるのです。

なお、インフルエンサーの活用方法にも、少しずつ変化がみられるようになりました。

企業側が自社商品・サービスをPRしてもらうインフルエンサーを選定するとき、初期の頃はフォロワーが100万人以上いるようなトップインフルエンサーに目を向けがちでした。つまりはタレントのような存在です。
しかし、「伝えるべき人に届いているか」という観点から見ると、現在は特定のコミュニティにおいて強い影響力や拡散力を持つ「マイクロインフルエンサー」と呼ばれる人たちが重宝されるようになってきました。

「狭く、深い」影響力を持つマイクロインフルエンサーのほうが、コンバージョンにつながりやすいからです。

昨今よく耳にする「インスタグラマー」も、その一例といえます。


SNSマーケティングの これからのあり方とは

◆ユーザーの情報入手元は「有名人」から「身近な一般人」へ

SNSとは、「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」というくらいなので、社会的な大きな箱の中でつながりができていくイメージです。

コミュニティのようなものですね。

そして今後は、「その中に誰がいるか」が重要になっていきます。

もっとパーソナルに寄っていくのではないかと、私は考えています。 

私の実家は八百屋でした。

学生時代、当時の昼番組『おもいッきりテレビ』で、みのもんたさんが「カイワレは身体にいいらしい」と言うと、あっという間にカイワレが売り切れました。 

12時台にその放送が流れると、13時頃には在庫が尽きる。親から「すぐに市場に行って仕入れて来い!」と言われ、急いで買いに走ったものです。

このように一昔前は、有名人が発信する情報によって多くの消費者が動いていました。

そして、そうした影響力はどんどん「一般レベル」に降りてきています。

読者モデルが発信する情報をもとに、若い女性が服や雑貨を購入する、といったようにです。 

それがさらに身近になってきて、今では「顔見知り」の人が発信することに影響を受けるようになっています。

SNSでは、友人を通じ、その友人ともつながります。

会ったことはなくても、友人の友人だけに価値観や志向が似ていて、「この人が言っていることには共感できるな」「この人が好きなものなら自分も気に入りそうだ」など、「自分に影響を与える人」が増えているのです。

一昔前は、みのもんたさんに「大根を食べるといいよ」と言われて動いていた消費者が、今では好きな読者モデルが「最近、大根鍋がお気に入り」とか、友人が「昨日、大根サラダつくったら美味しかった」と言うのを聞いて、「今日の夕食は大根料理にしようかな」と思うわけです。

実際、私もSNSでつながっている友人の影響で、行動を起こすことがあります。

例えば、私の友人に、毎日必ず1食はカレーを食べている「T」という男性がいます。

かつてのバスケ仲間で、今はWeb制作会社を経営しています。彼は 1 年以上、毎日カレーを食べ続けて、その感想をFacebookやInstagramに投稿しています。

「1年以上、毎日カレーを食べ続けている人」というパーソナルな情報を知っているから、私が「カレーを食べたい」と思えば、必ず彼にお勧めの店を聞きます。

必ず、です。

要は「食べログ」よりもTに信頼を置いているということです。
仮に、TのSNS上の友達が5人しかいなかったとしても、「カレー」というテーマに関しては、その5人に対して絶大な影響力を持つわけです。

同様に、家電だったら〇〇、映画だったら△△といったように、そのテーマにくわしい個人が発信する情報を求める人が増えていくはずです。

そうなると、受け手にとって、もはや彼のフォロワー数は関係ありません。

情報元が信頼に足るかどうか。

これだけが基準です。

リーチ数を重視するのであれば、芸能人の情報の方が何百倍も多くの人に届きます。

しかし、影響力という意味では、芸能人もTには及ばないと思うのです。

カレーを毎日食べているTが全力でオススメするカレー店があったら、私は90%くらいの確率でその店に足を運びます。

一方、好きな芸能人がインスタで「ぜひ行ってみて!!」と声高に叫んでいても、「この子はこのカレー屋で感動したんだな」とほっこりするくらいで、実際に足を運ぶには至らないと思います。

では、カレー屋の立場になってみましょう。私が店主なら、数多くのフォロワーを有するインスタグラマーより、「Tを自分の店のファンにしよう」とアプローチします。

そして、どうしたらTを唸らせるカレーができるかを必死に考え、完成度をさらに上げようと努力します。

店側としては、

「うちのカレーこうなんです。食べに来てね」

とSNSで投稿するのが、これまでのプロモーション。

近い将来には、カレーオタクをSNS上で見つけ出して、一緒によりよいメニューやサービスを共創していこう、という使い方がされるのではないかと思います。

プラットフォームとしてのSNSという場は残ると思いますが、細かい機能はさらにパーソナルに特化した作りになっていくことが予想されます。

何を言うかより、誰が言うか、の時代が来ているのです。


◆消費者は友人のSNSの書き込みで意識・行動を変容させている

こうした傾向は、データにも表れています。2011年、電通ソーシャル・ラボが日常的にSNSを利用している全国の15〜59歳の男女を対象に「ソーシャルメディアが企業ブランド・消費者に与える影響」調査を行いました。

その結果、SNS利用者の約4割が「友人・知人が企業やブランド・商品を褒める書き込みを読んだ」経験があり、
「その書き込みを読んで自身も共感」した人は約35%
「書き込みを読んで商品購入」した人は約26%に達していました。 


一方、「友人・知人が企業やブランド・商品を批判する書き込みを読んだ経験がある」と回答した人の割合は約35%。そして、読んだ後にそのブランドや商品に対するイメージが悪化した、購入や利用を中止した経験がある…という人が約2割いることも明らかとなりました。
つまり、消費者は友人のSNSへの書き込みを見て、企業やブランドに対する態度を変容させていることがわかります。


◆一般の人の中から「コアファン」を増やしていく

このように、SNS上においては「個人」がそのコミュニティに対し、発信力と大きな影響力を持ちつつあります。
ですから企業側としては、有名人を広告に起用する以上に、個人のファンを増やすことでプロモーション効果につなげることができるわけです。

そこで、これからのSNSマーケティングでは、まず「自社のファンを増やし、コアファンに育てていく」ことが重要です。

ブランドを好意的に利用してくれているファン層をあたため、コアファンに育成していくことで、コアファンが自分の身の回りの友人を中心とした新たな潜在層に、能動的かつ好意的に情報を発信してくれます。

結果、中長期でのマーケティングコスト削減や、半永久的なファンベース構築につながるのです。
では、「ファン」は、どのようなプロセスを経て「コアファン」になっていくのでしょうか。

私がずっと通っているラーメン屋さんを例にお話ししましょう。

そのラーメン屋さんは、私が自動車ディーラー勤務時代から十数年通っているお店で、つけ麺がすごく美味しいのです。

友達に「美味しいラーメンが食べたいな」と言われたら、大体ここに連れて行きます。

そして、友達が「美味しい」と言ってくれると、私は「このお店に連れて来てよかった」と、すごくうれしい気分になります。

それまで、自分の中だけで「このお店は美味しいな」と思っていたのが、誰かを連れて行って、その人が喜んでくれるという「成功体験」を積むことで、そのお店がさらに好きになる。

そして、そのラーメン屋さんに頼まれたわけでも何でもないのに、さらにいろいろな人を連れて行くことになります。

今ではそのラーメン屋さんの店長とFacebookでつながり、お互いの誕生日にはお祝いのメッセージを送り合うような関係になりました。

本や映画でも同じ。自分が勧めた本や映画を、友達が「面白かった」「感動した」と言ってくれれば、自分がその本や映画に抱いている「面白い」「感動する」の感情がさらに増幅するのではないでしょうか。
こうして「コアファン」になれば、また他の友人にもそれを紹介したくなり、友人・知人との共有が広がっていくことになります。


◆ファンに「成功体験」を積んでもらう

これを、企業のSNSマーケティングに置き換えてみましょう。
企業は、すでに使ってくれているユーザーさんが、「成功体験をどのように積んでいくか」というポイントを重視してあげると、ファンベースでのSNS構築を促進することができます。
例えば、私のクライアント企業にアパレルブランドがあるのですが、「#(ブランド名)」で検索すると1,200件ぐらいの投稿があり、そのブランドを好きな人たちが、自分が持っているアイテムを投稿しています。

それに対して「いいね!」が押されていたり、「素敵ですね」といったコメントがついたりしているので、きっと投稿者は「自分のセンスが認められた」とうれしく思っていることでしょう。

つまり「承認欲求」が満たされるのです。

このブランドと関わったことで承認欲求が満たされ、「投稿してよかった」という成功体験をすれば、その人はこのブランドをもっと好きになるに違いありません。
こうした投稿を眺めていると、「このブランドをかなり好きなんだな」というユーザーさんが目に留まります。そこで、ブランドの公式アカウントから、例えばこんなコメントを送ります。

「〇〇さん、投稿いただきありがとうございます。素敵なお写真ですね」
すると、このユーザーさんは「商品がいいだけじゃなく、顧客に感謝を伝える姿勢もすばらしい。なんていいブランドなんだ」と好印象を抱き、もっとファンになってくれるかもしれません。

さらに、こうした方々にダイレクトメッセージで、「今度ファンイベントがあるので、ぜひ来ていただけませんか?」と声をかけます。

そして、商品をプレゼントしたり、少し安く買えるサービスを提供したりしてあげると、さらにコミュニケーションが密にとれるようになるでしょう。

リアルにファンとブランドの担当者が会って、商品の説明をしてあげたり、「これからはこういう展開をしていくんですよ」というような少し先の情報を教えてあげたりする。

それにより「自分は特別に扱われている」という心地よさを感じていただければ、その人は一生のファンになるのではないでしょうか。

そして友人・知人にも、そのブランドの良さを積極的に伝達していってくれるのです。 

世間一般のSNSマーケティングでは、ようやく「量」より「質」に目を向けるようになったばかりです。ですから、BOKURAが取り組んでいるような「ファン創り」に注力する方法が一般化するのは、もう少し先なのかなと思います。

まだまだ事例も少なく、費用対効果も明確ではありませんから。

しかし「ファンがいる」というのは、本当に強い

それは確信を持って言えます。

ファン歴が長くなるほど、ユーザーの愛は強まります。

だからこそ、ファンを大切にするという取り組みを、いち早く始めるメリットは大きいと思います。 

今後、私たちのクライアント企業の競合会社が同じようにファンづくりを始めたとしても、すでに私たちのクライアントとファンの絆は深くなっている。

だから、あまり負ける気がしないのです。

もちろん良い商品を作り続けていることが大前提ですが。

SNSというマーケティングツールはここ数年の産物ですが、私たちがやっていることの本質は、優良企業が昔から大切にしてきた「消費者との接し方」と何ら変わりありません。企業はこれからの時代、SNSを「拡散ツール」ではなく、「ユーザーと距離を縮めるためのツール」として使っていくことが大事だと思います。





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第5章
SNSマーケティングの成功事例

ファンとの関係を深めることで さらなるファンの拡大と売上につなげられる

◆ファンを獲得できれば、情報提供するだけで 自主的に盛り上がってくれる

『宝塚歌劇団』と聞いて、皆さんはどんなイメージを持たれているでしょうか。


私は前職で、宝塚歌劇団のFacebookページの立ち上げに少し関わっていたので、ゲネプロ(最終リハーサル、通し稽古)を見学させてもらったことがあります。
そこで初めて宝塚の舞台を見ました。宝塚に「豪華絢爛」というイメージを抱いている方が多いと思いますが、まさにそのとおり。華やかで、熱量がすごく高い。

そして熱烈なファンがたくさんいるのも大きな特徴です。
しかし、2012年頃には集客数の下落が課題となっていました。

熱烈なファンは何度も会場に足を運びますが、新規や単発のお客様がなかなか来てくれない

以前のように行列ができることはなく、空席も見られるようになっていました。 
ネット掲示板では、「〇〇組の△△さんはすごくいいよね」とか「□□の初日舞台を観に行った」など、宝塚の話題ですごく盛り上がっているのですが、それが集客増加につながっていない

そんな課題の改善にSNSを活用しようと、専用アカウントを立ち上げたのです。
宝塚歌劇団のFacebookページは、2020年5月現在約19万人のフォロワーがいます。

基本的に情報発信をするのみで、コミュニケーションはとっていません。

それでも投稿をすると、多くの人にシェアされ、コメントもたくさんつきます。

「〇〇さんと△△さんのコンビが新鮮で美しい」
「難しい一幕ものだと思っていたら終始笑える喜劇で、とっても楽しかった」
「人と人との出会い、触れ合い、優しさ。こういう心温まる作品が観たかったんです」
「男役の〇〇さん、新しい時代を見せてくれそうな期待が満載で好きになりました」

投稿されたコメントに対して宝塚歌劇団側はレスポンスをしないのですが、ファン同士の間では活発なコミュニケーションが生まれています。

「この演目の〇〇組の△△さんの、このシーンのこの台詞が一番の見どころ」
――そんなコメントも書かれているので、

「その演目はまだ観ていない。ぜひ観に行きたい!」

と、ファンのリピート率アップにつながるでしょう。

また、宝塚に興味はあるけれど観劇したことはない…という人がここを見れば「なるほど、こういう風に楽しむのね」ということが分かります。

何より、ファンたちの「よかった!」というコメントを目にするうちに「行ってみたい!」というモチベーションが高まります。
このように、「ファン」を獲得すると、一方的な情報発信のみだけでも、それを受け取ったファンたちが自主的に盛り上がってくれて、さらにファンではない人たちも呼び込んでくれるというわけです。

では、どのようにファンを増やしていくか、事例を踏まえてご紹介します。

◆【成功事例― 1 】

店舗スタッフが個人アカウントを持って お店情報に加え、プライベート情報も発信

全国に200店舗を展開するフラワーショップチェーン『日比谷花壇』。

店舗スタッフに個人アカウントを持ってもらい、「日比谷花壇のPRをどんどん発信してください」という取り組みを行っています。

個人アカウントなので、お花の情報だけでなく、プライベートの話題もどんどん発信して「自分らしさを出していってください」という方針。

例えば、お花とまったく関係なく
「友達とランチした」
「旅行に行った」という投稿もOKです。

その狙いは、読者の皆さんに、より親近感を抱いてもらうため。「フラワー」は、特別なイベントのときにしか縁がないという人が多いでしょう。

しかし、自分に近い感覚を持った人がお花の情報を発信することで、より身近なものとして受け入れてもらいやすくなることを目指しているわけです。

また、スタッフさんも会社の看板を背負いつつ、自分自身も発信していくことで、モチベーションアップにもつながるようです。
こうした取り組みは、例えば美容業界などでも効果的なのではないかと思います。
美容師さん一人ひとりにファンがつくことで、美容室への集客にもつなげられると考えられます。

◆【成功事例― 2 】

ユーザーに企業側からアプローチし、 コミュニケーションを通じてコアファンを醸成

ハンドクリームで知られるユースキン製薬株式会社。

オレンジ色のパッケージの商品は、ひび・あかぎれ・しもやけに対処する『ユースキンAシリーズ』で、最もポピュラー。

昔ながらのハンドクリームというイメージがあるかもしれませんが、実は若い世代からも厚く支持されています。

確かな商品力はもちろんのこと、地道な「ファン創り」が功を奏しているのです。

「ファン創り」というと、ブランド側から質の高いコンテンツを定期的に発信し、インフルエンサーのような立ち位置でフォロワーが増えていく構図が想像しやすいかもしれません。
もちろん、公式アカウントを開設した以上、発信は欠かせません。

しかしユースキン製薬では、オピニオンリーダーのように一方向的に発信するのではなく、SNSを「ユーザーと親密なコミュニケーションをとるための場」と捉えています
では、ユースキンブランドはどのようにユーザーとコミュニケーションをとっているのでしょうか。
インスタグラムで「#ユースキン」と検索すると、2020年5月現在、10,000件を超える投稿が確認できます。


◆普段使っているブランドからフォローされたらうれしい

このハッシュタグ検索により、ユーザーの商品に対する反応を確認するだけでなく、投稿によってはコメントを残します。

クチコミを信じて購入してくださったお客様に感謝を伝えたり
オススメの使い方を伝授したり
ときには会話に入っていってツッコミを入れたりと、
カタくなりすぎないトーンで話しかけます。

例えば、唇の荒れに関して 2 人の女性の会話がインスタグラム上でこんなやりとりをしていました。


「友達のオススメで買ったユースキンリップケア。唇が割れて血が出てたのにホントに一発で治った♪」

その投稿に対し、その友人が

「まてまて、あたしが教えたのこれじゃねえよww」

――と思わぬ展開に。 
そこにユースキン公式アカウントが切り込みます。

「思わずコメントしてしまいました f^_^;)何はともあれ、唇割れ良くなってよかったです!」

すると女性は、

「わお!ありがとうございます笑」
――と、少し驚いている様子。

このように、公式アカウントからのコメントはまだ一般的ではないため、コメントやフォローといった行為自体にインパクトがあるので、ネタにしてもらえることが増えます。
ツイッターでは、ユースキンがフォローした人たちからのこんなツイートが見られます。

「ユースキンにフォローされたwwかわいいw」
「ユースキンのリップのこと呟いたら公式さんがフォローしてくれたwwお世話になってます( ^q^ )」


普段使っているブランドからフォローされたりコメントされたりすると、嫌な気はしないですよね。

「ユースキンさんがわざわざリプをくれた上にフォローまでしてくれて、今年も断然ユースキンにする !!」
また、あるときはこんなツイートがありました。

「あーカミソリ負けってやつか。オロナインかユースキン買わな……」
 
それに対して公式アカウントがフォローしたところ、その 3 時間後には、

「ユースキンかオロナイン買おうとしたけど、ユースキンからフォロー来たんでユースキン買いますね」

まさに、ユーザーとコミュニケーションをとることによる理想的な形がこれです。

直接的な言い方ですが、ファン創りの目的は、フォロワーを増やすことではなく、リピーターを増やし売上を伸ばすこと。

SNSを始めるとフォロワーを増やすことが目先の目標になりがちですが、その先の目的を忘れてはいけません。

ユースキンはSNSを通して、コミュニケーションをとるべき「コアファン」の潜在層を開拓しているのです。

◆ユースキン認定コアファンが「インフルエンサー」になる

ブランドの知名度を上げるための手法として、昨今は「インフルエンサーマーケティング」が流行しています。

多くの人に影響力を持つ人=「インフルエンサー」の知名度にあやかり、商品を紹介してもらうものです。

この手法では一般的に、インフルエンサーに報酬をお支払いして商品を紹介してもらいます。

ですが、普段から使用しているものではない場合や、そのインフルエンサ
ーが持つ世界観からズレていた場合、宣伝臭が出てしまうことから、インフルエンサー側もユーザー側も取り扱いについてナーバスになっている側面があります。

ユースキンでも、何人かの有名人がSNSに投稿してくださったコンテンツが広まり、彼ら彼女らの影響力の大きさを実感する出来事がありました。しかし、ユースキンが相手にお金をお支払いしていたかというと、そうではありません。

もともとユースキンを愛用してくれていた方々でした。

まずは、SKE48の松村香織さん

2015年の総選挙で13位を獲得し、「かおたん」の愛称で知られています。

何年もユースキンを愛用しているらしいかおたんのもとに、彼女のファンからこのようなツイートが届きます。


「かおたんが前に紹介してたユースキンをね、ずっと使ってたら肌荒れが治ったよ!すごく嬉しかったのでお礼を言いたかったの!ありがとう!」

これに対し、

「本当に ?! それは良かった♡みんなも使ってみてね。わたしもユースキンは何年も愛用してるから ^ ^# ユースキン # ユースキンLFF」

――と、かおたんはリプライを送っています。
(現代のアイドルは、ファンの方々にきちんと反応するのですね)。


「#ユースキンLFF」とは「LookForFan」の略で、ユースキン愛用者
とコミュニケーションをとるためのハッシュタグです。こちらからお願いしたわけでもないのに、コアファンでなければ知らないであろうそのハッシュタグまで、見事につけてくれていました。

それに対してユースキン側からすかさず返信。

「ご利用いただいているだけでなく、ご紹介までしていただき、いつもいつもありがとうございます(*^_^*)ユースキン認定コアファンになってください♪」

すると、SKEまとめサイトやAKB48最速ニュースに『SKE48松村香織が
ユースキン認定コアファンに !? 』という記事が乱立。




かおたんファンだけでなく、AKBグループのファンに広く知られるきっかけになりました。

これだけでも、商品のマーケティング担当にとっては願ってもない出来事だと思いますが、かおたんパワーはこれだけでは終わりませんでした。

さらに商品を提供したいという旨のDMを送ると、事業担当者とつながることができ、かおたんだけでなく、他のメンバーにも商品を届けることができました。 
その半月後、ライブ配信サービス「SHOWROOM」で、ユースキンが提供したポンプ式の商品を片手に、長年愛用していると紹介してくれたのです。
かおたんは、ファンとの距離が近いアイドルでもあり、同年代の女性ファンのみならず、普段ハンドクリームを使わない男性ファンまで、SHOWROOMを視聴したファンの皆さんが次々と購入につながりました。

ツイッターには「かおたんオタさんのユースキン購入率高過ぎスゴイ」といった投稿も。

もちろんこれに対しても

「社内、嬉しい悲鳴です(*^_^*)」

とユースキン公式アカウントから返信をしています。 

これはステルスマーケティングのようなやり方では、起こりえなかった現象でしょう。

松村香織さんが一消費者として実際に商品を愛用していたから、信ぴょう性のある形でファンに商品の愛着が伝わり、周囲も購入に至ったのです。

芸能人はイメージが大切と言われますが、同じくらい信用が生命線。

数年前にも芸能人によるステマが問題視されたことがありましたが、自分が使ったことのない商品をあたかも愛用品のように紹介するのは、このご時世、すでに消費者もシビアになっており、リスクが大きい。

「騙された」とファンに受け取られ、信用を失いかねません。インフルエンサーも自分の信用をかけて発信をしているのです。


続いては、プロスポーツ選手の事例です。
2016年、当時プロバスケットボールチーム「京都ハンナリーズ」で活躍していた佐藤託矢選手が、ユースキンを使用しているとの情報が入りました。
情報源はまたしてもツイッターです。


佐藤選手が試合の合間にユースキンを使用している様子の動画をファンの方がSNSに投稿したのです。

季節は夏。

夏にハンドクリームを使っているなんて、コアファン以外の何者でもありません。 
そこで佐藤選手にコンタクトをとったところ、期待通り

「家にはポンプ式があるし、カバンにはいつもユースキンを持ち歩いています」

との嬉しいお言葉。SKE48の松村さんと同様、送付先を聞き、商品をご提供しました。すると送付した商品一式をSNSで紹介してくださったのです。
この投稿には、いつもより多いリプライ、リツイート、「いいね!」が付きました。


以来、佐藤選手のファンの方々の間で、色紙ではなくユースキンのフタにサインをしてもらうことが流行っているそうです。そして、佐藤選手の投稿により、ファンの方々がユースキンに興味を抱くようなコメントが多く付き、実売にもつながったのです。


◆「ファンボード」を設置し、ファンの盛り上がりを促進

ファンをコアファンに。コアファンが増えれば、新たな潜在顧客層開拓のための、強力な助っ人となります。

自分の好きなものやこだわりは、人に話したくなるもの。

コアファンが周囲に推奨してくれることにより、おのずとファンが増え、売上が増えるのです。

ユースキンでは、ファンをコアファンに育てあげる過程において、「(コ
ア)ファンと共に創り上げる」
ことを意識しています。

コンテンツ作りに、ファンの皆さんにも一役買ってもらっているのです。
その取り組みの一つが、ユースキンのホームページのコンテンツ「ユースキン公式ファンボード」です。
これは、「#ユースキン」や「#ユースキン L F F 」というハッシュタグと共にアップされたインスタグラム・ツイッターの投稿を自動で抽出し、内容を確認後ファンボードへ掲載するというものです。写真だけでなく、アカウント名やテキストも一緒に公開されるため、公開でシェアしているユーザーにとっては、SNSのプラットフォームを越えて多くの人に見てもらえるメリットもあります。



またファンボードは、自分たちの商品が誰に使われているか、どのように評価されているかが可視化されていることで、社員のモチベーションアップという副次的な作用もあります。
ファンの投稿を連日チェックするようになり、あるときインスタグラムで美容ブロガーのKyonさんを発見します。

Kyonさんは、30代女性で2人の子どもを育てながら会社に勤務し、プライベートで美容に関する情報を発信している方です。

特にコスメに詳しく、眺めているだけでは分からない肌の上での発色具合や使用感を細かく発信しています。 
コンタクトを取る前も、何度もユースキンの商品を紹介してくれていたのですが、ある日「ユースキンAの日中の使い方」という動画を投稿しているのを発見。しかもテロップまでつけてくれていました。
実はこの頃、同じようにユースキンの塗り方を動画で公式ホームページに掲載しようという案が出ていました。しかし、動画コンテンツは制作会社に依頼をすると数十万円という大きな費用がかかってしまいます。


その点、Kyonさんの動画を活用させていただければ、そのコストをかけずに済みます。

何より、クオリティ面でもKyonさんの動画は優れたものでした。それにプロが作る完璧な動画より、リアルな消費者が作る「手作り感」のある動画の方が、ユーザーも親近感が湧くのではないかと期待できました。
すぐさま、 Kyonさんに動画を使わせていただきたい旨をダイレクトメッセージ。

Kyonさんからは即座に快諾のお返事をいただきました。 
しかし、公式ホームページに掲載するためにはいくつかの微調整が必要でした。


まず、Kyonさんは動画撮影に「VideoSmith」というアプリを使ってい
たため、ムービーの右下に常時ロゴが表示されている状態でした。これを消すためには、VideoSmithの有料版にアップグレードする必要があったのです。

そこでユースキン側は、有料版の負担をお願いできないか交渉し、ユースキン製品をお送りしたい旨を申し出ました。

また、オリジナルの動画には音声が入っていたのですが、音声の消去も合わせてお願いをしました。 
動画使用にあたり、ファンの方の厚意にずいぶん甘え、手間のかかる作業を次々とお願いしてしまったなと反省するところがあります。


しかしKyonさんは嫌な顔ひとつせず、動画制作に協力してくれただけでなく、お礼で送った商品まで紹介してくださいました。

今では、公式ホームページでKyonさんのアカウント名と共に動画を掲載しています。


ここまでくると、もはやKyonさんはユースキン製薬の社員のようなもの。

ブランドと消費者の距離感を「縮める」どころか、一緒にコンテンツを作ることによって、「一体化」した事例です。

この共同作業を経ると、その人にとってもユースキンは特別な存在となり、おそらくもう他社製品には乗り換えることはないでしょう。
ファンをコアファンに育てる過程には、大切な「絆」があります。その絆は自然と生まれるだけでなく、ブランド側からの働きかけにより創り出すこともできるのです。

◆ユーザーコンテンツはリアルで二次利用できる

ファンボードなどに集まったコンテンツは、リアルで二次利用することも可能です。
ユースキン製薬では、自社ギャラリーに投稿画像を掲示しています。ネット上だけでなく、リアルの世界を往来する人たちにも目に留まるようにしています。

◆長年の強力なファンを作れば次世代まで商品が生き残る

私は、ユースキン製薬のこうした取り組みを支援しています。

社員の一人になったつもりで、そしてファン代表として、ユースキンを使用したり語ったりしています。
おかげで塗り込みの一回の分量はどれくらいがオススメだとか、成分には何が含まれているか、今では空で言うことができます。
すると、私のリアルなネットワーク内にも影響が広がりました。なぜか、周囲もユースキンを使い始めるのです。

私は6歳と8歳の2人の娘の父親ですが、ある日、子どもが転んで擦り傷ができたときに「ユースキンどこ?」と探し始めました。

子どもだから、親が使っているユースキンしか選択肢がないということもあるかもしれませんが、それでも私が嫌々使っていたら、子どもたちは真似しないだろうと思います。
幼いころの記憶や身に付いた習慣は強力に残るものです。

きっと彼女たちも、大人になってもユースキンは身近な存在であり続けるし、子どもができたら子どもにもユースキンを使うことでしょう。
これからの時代、やみくもに広告を打つのではなく、長年の強力なファンで、周囲にも宣伝してくれるようなユーザーを増やすことを考えていったほうが、企業のマーケティングコストは抑えられます。

そうして節約できた分のコストを商品開発や人材の採用・育成に回していけば、よりよい商品を生み出せるし、サービスの向上を図れると思います。


「ワクワクする時間」を提供することが 企業への印象アップ、ファン獲得につながる

「#やさいドレス」というハッシュタグを見かけたことがある方もいらっしゃるかもしれません。


これは、有機野菜の宅配サービスを行うオイシックスが2017年の夏に行ったキャンペーンです。

撮影者が野菜を持ち、その野菜を被写体が着ているかのように、遠近法を駆使して撮影。

「#やさいドレス」とハッシュタグをつけてツイッターやインスタグラムに投稿すると、旬のお野菜セットが当たるというフォトコンテストです。
テレビなどでも取り上げられ、ママさん世代の間でちょっとしたブームを巻き起こしました。

これがまた「インスタ映え」するのです。例えば、ブロッコリーやチンゲンサイは逆さにすると裾が華やかに広がるカクテルドレスのように見え、ナスやズッキーニはふわっとしたバルーンスカートのように見えます。玉ねぎの一部を切り抜いておかっぱ頭に見立てたり、プチトマトを 3 つ並べてアンパンマンのように頬に添えたりする投稿者もいました。
モデルとなったのは、ほとんどが赤ちゃんや子ども。

可愛らしくて遊び心のある投稿に、周囲の「いいね!」もはずみます。ハッシュタグからの流入も多かったのか、例えばフォロワー数が147人の方でも 67 の「いいね!」がついています。

通常の投稿は、フォロワー数に対して 1 〜 2 割の「いいね!」がつくことが多いのですが、フォロワー数に対して約半数もの「いいね!」がつくのは、周囲にかなり好意的に見られたということができるでしょう。

◆絶妙な「ハードルの高さ」が参加者心理をくすぐる

これは「投稿すると賞品があたる」という類のキャンペーンでしたが、投稿者たちは賞品となる「旬のお野菜セット」を目当てにやっていたわけではないと思います。
キャンペーンのノウハウは、一般的に 3 つ挙げられます。

①企画の面白さ
②ハードルの高さ
③インセンティブ

です。

そのうち、「#やさいドレス」は企画の面白さとハードルの高さというポイントが上手く作用した例なのではないかと思います。
企画の面白さはそのままなのでわかりやすいですが、「ハードルの高さ」とはなにか。

それは、ちょっとしたひと手間で得られる特別感なのではないか、と。今回の場合は、野菜をドレスの形に切る手間と、遠近法を使って撮影をする手間です。

もちろん、時間や経費がかかりすぎるようなハードルはNGですが、「ちょっとひと手間」くらいの高すぎないハードルはユーザーの心理にうまく作用します。

インスタグラムで他の人の日常を気軽に知ることができる時代ですから、「皆とはちょっと違うことがしたい」という欲求が少なからずあると思います。

ハードルの低すぎる、誰にでもできるキャンペーンでは、この特別感が失われてしまいます。
そして「インセンティブ」というのは、つまり賞品のこと。

これをやったら、どんなバックがあるのかという、言わば「ニンジン作戦」です。

キャンペーンの手法として最も多いのがこれ。

しかし、「インセンティブを何にするか」は企画する側がきちんと戦略的に考えなければなりません。

例えば、インセンティブをギフト券にした場合、対象者の裾野は広がります。

一方で、ギフト券とブランドとはほとんど関係がないですよね。

誰でも欲しがる賞品にすることで数を集めることはできますが、一時的に投稿数やフォロワー数が増えたとしても、ブランドのターゲットに合致していないユーザーは結局離脱していくのです。
 
オイシックスの場合、メインターゲットは主婦層。

SNSを活発に使う層ですから、赤ちゃんや小さなお子さんがいるママさんたちがターゲットになっているのではないかと予測します。

「#やさいドレス」は前提としてインセンティブをフックにしたものではありませんでしたが、仮に賞品を考えるとしたら、そのキャンペーンのメインターゲットが欲しがりそうなもの、逆にいうと、それ以外の層の人たちはあまり欲しがらないものを選ぶと良いと思います。

若いママさんたちが欲しがりそうな、例えばオシャレな電動自転車や、離乳食が作れるフードプロセッサーといったところでしょうか。

「#やさいドレス」の素晴らしさは、アイデアを考えたり写真を撮ったりする時間が、きっと本人たちにとってものすごく楽しい時間だったんだろうなと思えることです。

家庭の雰囲気の良さが見え隠れした、ポジティブな空気が前面に出ている。参加した方々にとっては「楽しい時間を過ごさせてもらえた」という好印象が残り、オイシックスのファンが増えたのではないでしょうか。

数多くの広告・PR代理店がある中で、このようにユーザー心理に添う取り組みができている企業は残念ながら多くないように見受けられます。

「キャンペーンをしたい」とクライアントが言うと、フォロワーの伸び率や売上へのコンバージョンを増やそうという着眼点で提案されるものがほとんどです。

しかし、「フォロワーを何人増やしました」ということより、「ブランドの好感度が上がりました」の方が、企業にとっては重要なことだと思うのです。


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6章 SNSマーケティングの実践法

ユーザーの目に留まり、 ファンになってくれるような発信をする

◆「投稿」においてはブレないルールを設ける

どのような手段を使うにしても、SNSを活用するかぎりは
「情報の投稿」
「ユーザーとのコミュニケーション」
は必須項目です。
こうした発信を行うにあたり、ブランドの世界観と発信のトーン&マナーにギャップがないよう、初期の段階で方向性を決めておく必要があります。

投稿作業を複数のスタッフが交代で行う場合などは特に、ブレがないように統一を図らなければなりません。 
例えば、次のような項目について検討します。

●一人称の表現
 「私」「僕」「我々」「弊社」など。

●言葉遣い
「です・ます」調がいいのか、友達のようにカジュアルなトーンがいいのか。

●温度感

堅めにするのか、ゆるめにするのか、普通にするのか。

●顔文字

顔文字を使うか使わないか。使うにしても( *^_^* )といったポピュラーなものと、 珍しい記号を組み合わせた高度なものでは、醸し出す空気が変わってきます。「何でもOK」「くだけ過ぎない程度に」「一部のみOK」など線引きをします。使用の具体例をリストするといいでしょう。

●ハッシュタグ

公式アカウントからの投稿に添えるハッシュタグだけではなく、こちらからコミュニケーションをとりにいく、潜在ファン層を探しに行くためのキーワードを何にするかを考えます。「#ブランド名」というハッシュタグだと、ブランドの認知度がさほど高くない場合、あるいはつづりが難しい場合など、投稿が少ないのが現実。その場合は、「#ブランド名」だけでなく、ブランドに関連するようなワードを入れるのが得策です。例えば、シャツやブラウスを得意とするアパレルブランドであれば「#シャツコーデ」や「#ぬけ感」など、ファン層に親和性の高そうなキーワードを使います。

なお、BOKURAでは、運用のご依頼も受けた場合、クライアント企業に記入してもらったヒアリングシートや打ち合わせでの内容をもとに、いくつかの発信パターンを提出します。

「堅めのコメントだとこう、柔らかめのコメントだとこう」といったように、例を提示するのです。

そのたたき台に対し
「これは、うちのブランドっぽくないかな」
「このコミュニケーションはすごくいい」

などと指摘をしてもらい、トーン&マナーを決めていきます。
 
大枠が決まれば、運用を開始します。最初からすべてを代行するのではなく、はじめのうちはフィードバックをいただきながら、微調整を行っていきます。

迷うことがあれば、
「こんな感じのコメントで大丈夫ですか?」

「OKです」

とそのつど確認し、数週間仮運用します。

温度感がつかめるようになってきたら、大部分をお任せいただくといった流れです。

ブランド側の意向で言葉遣いを変えることはもちろんですが、同時に、ユーザー側の言葉遣いもチェックするようにしています。

例えば、「ゆうこすが着てた〇〇のワンピをGET!うれしみ〜♡」といった投稿があったとしましょう。

そうしたユーザーに、「この度はご購入いただき誠にありがとうございます。社員一同、これからもお客様にご満足いただけるよう精進いたします」などとコンタクトをとっても、明らかに空気感に乖離があるわけです。
 
こうした場合、そのユーザーの投稿に対するコメントを見ることで、普段友達とどんなコミュニケーションをとっているのか把握することができます。そのトーンをつかみ、その人が親近感を持つ言葉遣いでコメントをするのです。


◆「バズる」チャンスを呼び寄せる 6 つの要素

正直なところ、このようにSNSを通して地道にコミュニケーションをとるという活動自体は、影響範囲も小さく、すぐに売上大幅増とはなりません。

それでも、当分はコツコツやっていくほかありません。

続けていれば、先ほど事例紹介で挙げた
「#自社製品を自虐してみた」の例のように、
どこかのタイミングで有名人やインフルエンサーに紹介してもらえたり、メディアに取り上げられたりして、一気に拡散される可能性があります。

メディアをはじめ、バラエティやトーク番組で活動する芸能人などは、日頃から「ネタ探し」をしており、SNSにもアンテナを張っています。

SNS投稿がネタとして取り上げられ、「バズる」チャンスがあるというわけです。

そのチャンスをつかめるどうかは、日々の小さな発信にかかっています。「ご購入ありがとうございます」を連呼していても、面白みがありません。

ユーモア、誠実さ、専門家っぽさ、何でもいいのですが、そのブランドの「キャラクター」がにじみ出るような発信をしていくことが、PR効果につながります。

PRパーソンやマーケティング担当者であれば、「バズを仕掛けられないか」と画策したことがあるのではないかと思います。

話題に上るためには重要な要素が 6 つあります。

《バズるための6要素》
①トレンド(Trend)
②バックグラウンド(Background)
③サイドストーリー(Sidestory)
④ビジュアル(Vizual)
⑤データ(Date)
⑥ソーシャル(Social)



①トレンドに乗っているか

5 章でご紹介した、「#自社製品を自虐してみた」のような例。これは短期的なト レンドですが、長期的なところでは、ここ数年「インスタ映え」という切り口で特定のスポットや商品が紹介されているのが目につきます。「今っぽさ」が重要です。

②バックグラウンドがしっかりしているか

老舗として歴史を重ねていたり、商品開発で権威ある団体が監修していたり、といったものがバックグラウンドです。「誕生秘話」や、創業者が苦労を乗り越えた経験談などは鉄板。商品が生まれた背景、歴史を積み重ねてきた経緯などのエピソードは人の心に響きやすいものです。


③サイドストーリーが面白いか

これは、付随している事例のことです。例えば、 5 章で挙げたユースキン製薬の場合は、「アイドルをファンに認定」「バスケ選手が愛用」といったエピソードがこれにあたります。

④ビジュアルが良いか、または面白いか


画像や動画がシェアされる時代ですので、自社の世界観を表すようなビジュアル素材で訴求できると、ユーザーの目に留まりやすくなります。

⑤データがあるか 

ここ数年でどれだけ売上が伸びているかや、何割の人が使っているかなど。効果が数値化されているものがあれば説得力があります。メディアなど、取材を依頼する立場からしても安心でき、喜ばれます。

⑥ソーシャルな影響力があるか

情報番組では、街のトレンドを調査するようなコーナーがあり、ハッシュタグ数やフォロワー数を紹介しています。番組を作るディレクターは、SNSで情報収集することが多いため、SNS上でのバズワードや急上昇ワードは取り上げられやすいのです。メディアに取り上げられれば売上アップへの近道になりますので、「取材者はどんなネタを求めているか」をきちんと分析して発信することが大切です。


SNSの運用においても、こうした要素を意識し、自社ならではのコンテンツを探して発信していくといいでしょう。

コアファンになってくれそうな人を 探し出し、育成する

◆ファンを増やしていくための5つのサイクル

これまでの章でもお話ししてきたとおり、SNSマーケティングを本当の意味で成功させるためには、単にフォロワー数を増やすだけでなく、「ファン」を増殖させ、ファンと一緒にブランドを創り上げていくことを目標とすべきだと考えます。

そこで、この章では、ファン拡大に向けてのプロセスをご紹介します。基本的には、次のサイクルを回していきます。

①傾聴
自社商品・サービスのユーザーの声に耳を傾けます。

②接触
コアファンになってくれそうなユーザーを選定し、接触を図ります。「ロイヤル顧客化」を目指し、ユーザーとコミュニケーションをとります。

③獲得
コミュニケーションを通じて、ユーザーのブランドへの関わりを活性化させ、自社の「コアファン」となってもらいます。

④育成
コアファンにブランドをより深く理解してもらいます。

⑤共創
コアファンと企業が一体となり、ブランドをよりよくするコンテンツを創出します。新しく生み出したものに対し、再びユーザーの声を「傾聴」します。


◆「コアファン」とは、どんな人たちか

再三にわたり「コアファン」という言葉を使っていますが、つまりどのような人を指すのか。私たちが定義するのは次のような方々です。

●商品の愛用者
 ※単なる「利用者」ではなく、思い入れやこだわりを持って使う
●公式アカウントをフォローしている
●SNS上のキャンペーンに参加した経験がある
●投稿に独自ハッシュタグをつけてくれる
●DM(ダイレクトメッセージ)で直接やりとりができる
●写真などを提供してくれる
 これらに加えて、
●人にモノを勧めるのが好き
●人に喜んでもらうことが好き
…というタイプの人は、自分がファンになったブランドを周囲にどんどん広めていってくれる人、といえます。
以上が必須条件ですが、次のような要素が加われば、さらに期待ができます。
●競合商品の利用歴がある
●写真のセンスがある
●テキスト(コメント文)のセンスがある
●投稿へのエンゲージメント(結び付き、関わり)が高い
●動画撮影などの協力が可能
●フォロワー数が多い
●商品知識をよく理解している


◆コアファンにどんなことをしてもらうか

では、コアファンになってくれた人に、新しいファンを呼び込んでもらうために何をしてもらうか。例えば、次のようなことを依頼します。


●定期的に、自社商品・サービスについてSNSやブログに投稿してもらう
●定期的に、自社商品・サービスに関するアンケートに回答してもらう
●商品を使用しているときの写真や動画を提供してもらう(二次利用させてもらう)
●自社商品・サービスを知人、友人に勧めてもらう
●自社のキャンペーンに参加してもらうほか、他の人にも告知してもらう
●コアファンが集まるミーティングに参加し、情報交換してもらう
●競合商品・サービスを試しに使ってもらい、違いを理解してもらう

なお、投稿にあたっては、企業側から
「こんなコメントを投稿してください」
と指定するのではなく、
あくまで「自分の言葉で」
投稿していただきます。

そして、このようなアクションに対しては、特典として
「商品プレゼント」
「工場見学」

などを用意します。
ファンボードに掲載したり、ファン認定グッズの贈呈をしたりもします。
会社の企画会議に参加してもらうこともあります。

好きなブランドから特別待遇を受けることで、「ブランド愛」も強くなっていくものです。
また、
どんどん発信していきたい意欲がある方には、
商品知識やSNS投稿テクニックのレクチャーも行います


◆コアファンになってくれそうな人へのアプローチ法

ここからは、「コアファン」になってくれそうな人にどのように接触(アプローチ)するかをお話しします。まずは、アプローチするユーザーをピックアップ。このときの選定基準は次のとおりです。

●ハッシュタグをつけている(「♯(自社名/ブランド名/商品名など)」)
●商品に対してポジティブな意見や感想を投稿している
●自社のSNS上のキャンペーンに参加したことがあり
●投稿に対して自社からコメントした際、返信をくれる
●普段から投稿へのエンゲージメント(結び付き、関わり)が多い
●普段から投稿頻度が高い

これらの条件に当てはまるユーザーの投稿に対し、コメントをしにいきます。
また、目的に応じて「ダイレクトメッセージ(DM)」を送ります。
コメントでのやりとりを重ねた後、さらに心の距離感を縮めていきたいとき、「特別感」を出すためにDMを送るのです。
また、クローズドのパーティに招待したい場合、公式には発信したくない情報を直接届けたい場合などに、DMを活用します。

例えば、ユーザーさん向けのコミュニティやプログラムなどへの参加をお誘いする場合は、次ページのような文面でメッセージを送ります。

こんにちは!〇〇〇公式アカウントです。 いつも〇〇〇をご愛用いただき、ありがとうございます!
今年、〇〇〇〇は*周年を迎えます♪ *周年を記念しまして、この機会に皆様とより密なコミュニケー ションを取りたいと思い□□□プログラムを始めることになりま した! (※□□□プログラムとは…ユーザーがユーザーのためになる情 報を発信し、 ブランドとユーザーの架け橋になるような役割を担っていただく ようなプログラムです。)
ぜひ△△さまには、第一期□□□プログラムのメンバー“〇〇〇 コアファン”になって頂きたく、メッセージさせていただきまし た。
詳細は下記URLに掲載されています。
http://www**************
内容をご確認いただき、□□□プログラムへの参加可否を このダイレクメッセージにご返信いただけると幸いです!
△△さまのご参加をお待ちしています♪

◆より深く理解してもらい、発信してもらう

呼びかけに応じて参加してくださったユーザーさんに対しては、商品知識、コメントの書き方、写真の撮り方などをお伝えします。また、企画会議や座談会、メーカーであれば製造現場の見学などにも参加していただきます。

こうして理解を深めていただいた上で、自社商品のオンシーズンに合わせて投稿をスタートしてもらうのです。また、キャンペーンやイベント、コアファンミーティングなどにも参加いただき、つながりを深めていきます。

リアルイベントを盛り上げ、 ファンを拡大する

自社製品・サービスのニーズが高まる時期には、リアル店舗でのイベントを開催します。このときもコアファンに呼びかけ、イベント開催の告知をしてもらいます。
集まってくれた人には、オフ価格での商品販売、スペシャルアイテムのプレゼントなどの特典を提供。そのイベントの様子を、SNSで発信してもらいます。
なお、リアルイベントでは「インフルエンサー」を活用する手もあります。例えば、1 日店長を務めてもらい、その人に「会いたい」という人たちを呼び込みます。
また、「イベントの写真をインスタグラム上に投稿してくれたらプレゼント贈呈」といったキャンペーンも同時開催する手もあります。店舗を持つ商品の場合、こうしたリアルとの融合によって拡散を図るのも有効です。




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おわりに


最後まで本書をお読みいただきありがとうございました。


この本で、SNSマーケティングとは、自社製品の本当のファンを探し出し、ファンとの絆を深めていくツールだということをご理解いただけたのではないでしょうか。 

私は「うっとうしい」と不快感を与えるような広告は、この世から駆逐したいのです。

本当にユーザーから感謝されることを続けていけば、企業とお客様の双方が幸せになれるはずなのです。

私の夢は、自分の葬式に1万人の人に来てもらうことです。

そして、毎年1,000人に、私のことを思い出しながら飲んでほしいと思っています。

その数に達していないので、今はまだ、死ねません。

いつかそれを実現できるように、多くの人に私自身の価値を残していかなければならない、そう思っています。 

企業の中には、何百年も続いている会社がたくさんあります。

そうした会社がこれから後世に何を残せるか、ということを考えると、その一つは“会社のファン”ではないでしょうか。

ファンを中長期的な視点でしっかりとつくっていくことは、何十年、何百年と続く会社、ブランドに育てるためにも大切なことです。

先日、BOKURAでは、老舗の和菓子屋さんからSNSマーケティング支援のご依頼を受けました。

創業は室町時代で、550年続いている名店です。

このお店は羊羹をつくり始めて400年くらいたっています。

しかし、これから400年後も、人々の間で羊羹が食べられているかどうかはわかりません。

しかし、そこにはただ、「羊羹を食べてもらいたい」という想いがあります。

400年前の製法を守りつつ、今も美味しい羊羹をつくっているし、もっと良くしていかなければならないと考えていらっしゃいます。

とはいえ、「美味しければ売れる」という時代でもないので、今、羊羹を食べてくれている人たちをもっとおもてなしすることが大切だと、その店は考えたのです。

そんな想いが、BOKURAの“Look For Fan”というコンセプトにマッチしたことから、まさに今、ファンづくりのプロジェクトが始まりました。


BOKURAは多種多様な業種の企業のSNSマーケティングを支援させていただいていますが、ある会社さんでは、最初は月額約30万円、3ヵ月間という短期契約からスタートしました。

「たった3ヵ月間?」と驚かれるかもしれませんが、3ヵ月もユーザーとコミュニケーションをとっていると、ユーザーがすごく喜んでくれていることや、「うちにはこういうファンがいたのか」という事実に気付くことができます。

ファンの存在を実感することは、社員のモチベーションアップにもつながります。 
その会社さんでは、それまで点でしかなかったファンの存在が太い線になりつつあり、購買行動にもつながっていることを実感していただいた上で、BOKURAと年間契約を結んでいただきました。

BOKURAは、「いいブランド」としかお付き合いをしていません。
なぜなら“ファンをつくる”ことがベースだから。


知ってもらえれば必ずファンが付く――そんな魅力的な製品やサービスを提供している会社さんを、私たちはお手伝いしたいのです。


運用を開始して初期の頃は、私たちがブランドの代行としてファンの皆さんとコミュニケーションを取るケースもあるのですが、やはりすごく喜んでもらえることを実感します。

だから、もっと喜んでもらうためには、どのようなコミュニケーションを取るべきかを、私たちは徹底的に考えるのです。

そうすると、もう、ポジティブなことしか考えなくなります。

当社社員の中には「入社前と入社後で、心の持ちようがすごく変わった」と言ってくれるメンバーもいて、私はとてもうれしく思っています。

BOKURAは、ブランドに成り代わっているだけとも言えますが、そのブランドの感動を一緒に体験できるのです。

クライアント企業の公式SNS上で、ユーザーに向けて「いつもありがとうございます」という言葉を投げかけるだけで、
「こちらこそ。もう何十年もお世話になっています。母から教えてもらって、私も娘に伝えていこうと思います」
といった返信をいただくわけです。

私は、そのブランドをつくった当事者でもないのに、思わず感動してしまいます。
商品やサービスのあら捜しをするのではなくて、ブランドをもっと好きになってもらうことを考える。

これはすごくポジティブな気持ちになりますし、ユーザーとのコミュニケーションを通じてうれしい体験をさせてもらっているな、と思っています。
そんな体験を、多くの企業のマーケティングや広報担当の皆さんに味わっていただきたいと思います。

社内でSNSをやっていると、最初は「遊んでいるの?」といった目で見られることもあるようです。

しかし、このSNSマーケティングの効果がどんどん上がっていくと、次第に社内に影響力を発揮します。

さまざまなセクションから「ちょっとうちの情報、公式SNSアカウントに載せてくれない?」と頼まれるようになってくるのです。

そうして、「社内の力関係がだんだん変化して、思いがけず出世した」というSNS担当者もいらっしゃいました。

SNSやそれを活用したプロモーションのスタイルは、今後、ますます変わっていくでしょう。

しかし、ファンに喜びと感謝を伝え続けていくことで、良い循環が生まれることは変わらないはずです。

SNSの流行り廃りに惑わされず、その変化を楽しみながら、SNSを活用していきましょう。

2018年1月 株式会社BOKURA
代表取締役社長 
宍戸崇裕

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ししど


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