ファンと一緒にブランドを育てるSNSマーケティング実践法③(全文無料公開)
無料全文公開の3回目!
今回は、ししどが社会人になってから営業として経験した内容から今の考えに至った変遷です!
2章『販売の現場から ネットマーケティングの世界へ。現場でつかんだ課題と解決手法』
自動車、不動産―― アナログな接客スタイルで 消費者に向き合った
◆『20年通ってやっと名刺交換』は誇れるようなことなのか
私の社会人としてのスタートは自動車ディーラーの営業職でした。
特に「車が好き」というわけではなかったのですが、なんとなく、上場企業に勤めたほうが親が安心するだろう、とか車が安く買えるんじゃないかな、というふわっとしたことが入社の動機でした。
当時、私が入った自動車メーカーは、競合他社から追い打ちをかけられていて、厳しい状況にありました。そして新しい社長が来て、立て直しを図る時期だったのです。新車が7種ほど投入され、ディーラーも今後は売りやすくなるだろうと目されたタイミングでした。
そんな中、私が配属されたのはリース法人営業部。
ディーラーの子会社にリース会社が設けられており、そのリース会社で車のリース契約を取ることが仕事でした。
契約さえとれれば、メーカーは問わず車種はなんでも良かったので、私にとってはすごくやりやすくて、結構な台数の契約を取ることができました。
ただ、その営業のやり方に、私は疑問を抱いていました。
担当エリアを与えられて、その範囲内にある会社全てに飛び込み営業して来いとか、テレアポを取りまくれとか、そういう営業スタイルです。
研修に年配のOBが来て、地道な営業の尊さをこんこんと説いてくるわけです。
「一つの営業先に 20 年通って、やっと名刺を交換してもらった」
というエピソードを自慢げに披露してくれたのですが、私の感覚では
「それ、20 年をそうとう無駄にしましたね」
と言いたくなりました。
なんて効率の悪いことをやっているのだろうと、私は思っていました。
それよりも、一度結び付いたお客様と関係を深めることに時間を費やすほうが生産的ではないのか、と。
◆営業トークは一律であっていいはずがない
当時は7年に1台くらいが平均的な車の買い替えサイクルでした。
リースの多くは、車検のタイミングで契約が切れるので、4年か5年のリースがほとんどでした。
ですから、車を購入するよりもリース契約をしたほうが、代替サイクルが短くなる可能性が高い。
リース会社としての思惑もあり、当時の営業トークは
「車を買って7年乗るよりも、5年おきぐらいに新しい車に乗り換えたほうが、故障もなくトラブルも防げますよね」
というのが基本でした。
私も上司に言われるがままに、とりあえずはそういうトークをしていたのですが、その頃から、
「営業トークは一律ではないはず。むしろ一律ではダメなんじゃないか」
と感じていました。
あるお客様が
「会社の車は経費だからリースでもいい。だけど個人的には車が好きだから、自分の車は何年かおきに乗り換えるのではなく、愛着を持って乗りたいんだよね」
という話をされたことがありました。
そのお客様とは、早朝、一緒に草野球をするほど仲良くさせていただいたのですが、その話を聞いて、
「自分のやっていることが、本当にこの人の幸せになっているのかな…」
とちょっと疑問を感じるようになったのです。
その一方で、競合の自動車ディーラーを見渡すと、ある会社は店舗で待っている営業スタイルをとっていました。店舗設計をしっかりして、来店したお客様が気持ちよく帰れるような接客をしているし、むやみに試乗も勧めていない。私は、それがすごくいいなと思っていました。
ただ、勤務先の会社は上場企業で給料もどんどん上がるし、好きなバスケも実業団チームでプレイできる。営業の仕方に疑問を感じながらも、なんだかんだ自動車ディーラーには4年ほど勤務しました。
しかし、自動車業界にずっといたのでは、将来的に「車を売る」というスキルしか身に付かないことに危機感も抱いていました。そこで、他の営業もやってみたいと考え、不動産業界の営業に転職したのです。
入社した大手不動産会社では、土地活用の提案営業を担当しました。土地の所有者に向けて「この田んぼをマンションにしませんか?」といった提案をする仕事です。さらには、地域に根差して賃貸仲介や土地管理をしている“町の不動産屋さん”に対して、自社のフランチャイズチェーンへの加盟を促す営業も行いました。
このフランチャイズ営業についても、私は営業スタイルに疑問を感じていました。
例えば、渋谷駅の半径何メートル以内にある不動産屋さん全てに飛び込み営業をするという活動。でも、その範囲内にある不動産店は店舗ごとにコンセプトを持っていて、自社の方針とは合わないかもしれない。一方で、そのエリア外の店舗でも、実は困っていることがあって自社のシステムが助けになるかもしれないのに、そういうお店は対象外として切り捨ててしまっている。ここでも、お客様のニーズを汲んだ営業活動ができないことにもどかしさを感じました。
◆AI時代、人だからこそできるのは「感情を込める」こと
自動車ディーラーと不動産会社。この2つの会社での営業経験を通じて、私は「非効率な営業は悪だ」ということを学びました。
なぜなら、これからは営業の仕事の一部は、AI(人工知能)やロボットに取って代わられていく時代だからです。電話やメールでの新規アプローチ、飛び込み営業などは間違いなくそうなるでしょう。
AIの時代だからこそ、人間がやらなきゃいけないのは、「感情を込めた」営業活動を行うことです。それが重要なのではないでしょうか。
感情を込めるということは、相手の感情も理解しなければならない。
でも、飛び込み営業やテレアポでは、感情を込めにくいと思うのです。
電話をかけてもガチャンと切られるし、飛び込み訪問しても名刺すら受け取ってもらえないことがほとんど。
そのうち、感情を押し殺してひたすら機械的にやるしかない状況に陥りがちです。もちろん中には、営業をかける会社のホームページを熟読したり、社長や担当者のSNSを見たりするなどして、その人の人となりや考え方をある程度理解して営業に挑む人もいるでしょう。でもおそらくそこまでできる人は多くないのではないでしょうか。なぜなら、面倒くさいから。
そこで私が伝えたいのは、人だからこそできる営業スタイルの一つとして、「今いるお客様に感情を込めて接する。それによって信頼を得て、次の信頼につなげていこう」ということです。
◆信頼を築けば、その輪が広がっていく
私は自動車ディーラー時代、初対面からすぐに買ってくれる人には2パターンあることを学びました。
1つめは、
自ら買いに来てくれる人。ちょうど買い替えのタイミングであるとか、息子に買ってあげたいなど、目的が明確な人です。来店時にたまたま対応して、説明をしたら「じゃあ、これでお願いします」と即決してくれる人です。
2つめは、
誰かの紹介で来てくれる人。初めから信頼を得られているパターンです。「あの店良かったよ」、「この人が良かったよ」と紹介されて来た人の場合は、スピーディに契約に至ります。
すでに自分と取引があるお客様に対して、日頃からきちんと対応していると、その人が知人を紹介してくださることがあります。だから、待っていればそのうちタイミングが来る。ディーラー時代、こうした紹介による来店や契約はかなりの数ありました。テレアポや飛び込み営業をしなくても、誰かの紹介による営業は成約率も高いし、効率も良いのです。
起業した今でも、大体2日に1回くらいは、過去に関わりを持った方からの問い合わせが来ます。「SNSといったらBOKURAししどさん」といったイメージができあがっているようで、
「ちょっと困っているんだけど、どうしたらいい?」
…といったご連絡をいただきます。
この状況から考えられるのは、私が今まで関わってきた人たちに「きちんと対応してきたから」ではないかということです。
中には、私がまだ自動車ディーラーで働いていると思っている人もいるのですが、車の相談が寄せられた場合は、私の先輩を紹介しています。実はディーラーに勤務していた当時から、私は自分の友達と
“お客さんと営業マンの関係”
になってしまうのが嫌で、友達から「車を買いたい」と相談されたら、先輩を紹介していました。
その先輩は、管理職になれるほどの高い実績があるのですが、「ずっと現場で営業をしていたい」という方。今もディーラーに勤務しているので、車の相談を受けたら必ずこの先輩を紹介しています。私の親の車も、彼が担当してくれています。
先輩からしますと、私がたくさんお客さんを紹介してくれるということにメリットを感じてくれているようです。だから、私に対して自分がどんなメリットを返せるかを考えてくれているようで、よく車に関する情報やサービスを提供してもらっています。
例えば、オイル交換を無料でしてくれますし、〇〇という新しい車種は自動運転機能がついているとか、車そのものの情報や整備や保証についてもさまざまな情報を伝えてくれます。私がなかなか実家に帰れないから、代わりに実家の様子を教えてくれることもあります。
また、先輩は、役所から一般企業まで幅広い顧客を持っていて、お客様を私に紹介してくれることもあります。先輩は私が知らないところで、BOKURAの事業内容や私の人柄を話してくれている、いわば私の代わりに営業をしてくれているようなものです。先輩を信頼している会社の社長は
「この人が言っているんだから、きっと宍戸という人も信頼できる人物だろう」
と思ってくださるのではないでしょうか。
このように、先輩からたくさんのメリットをいただいているから、私も車の相談を受けたら、必ず先輩を紹介すると決めています。
つまり、先輩は、私の満足度を高めることを、ごく自然にやってくれているのです。
人に対してそうした姿勢で向き合える人と、私は一生付き合っていきたいと思います。もしいずれ亡くなったとしても、その人のお葬式には必ず行くし、しょっちゅう思い出すでしょう。
私自身も人からそう思われる人間でありたい。だから人が喜ぶこと、満足することをやり続けたいと思います。そうして信頼をつないでいくことで、私の葬式に来てくれる人を1万人、命日に私のことを思い出してくれる人を数多くつくることを目指しています。
モバイルSEO業界で ネットユーザーの行動パターンを学んだ
◆検索で上位にある情報を無条件に頼ってしまう人たち
不動産会社を退職したあと、私はSpeee(スピー)というモバイルSEOのベンチャー企業に転職しました。モバイルSEO業界の中では、ほぼトップクラスといえる技術力のある会社です。入社当時、私は29歳でしたが、社長は24歳で役員も23歳。
私より年上の人は1~2名という環境でしたが、優秀な人ばかりで、皆ガムシャラに仕事をしており、高い営業力もありました。
私は自動車ディーラーでも不動産会社でも高い業績を挙げていましたが、「これで天狗になっていたらヤバイ」と感じていたので、とにかく言われたことは何でもやる、誰よりもやる、という気持ちで取り組んでいました。
当時はまだスマートフォンの普及率は低く、いわゆる「ガラケー」を使っている人がほとんど。スマホと違ってガラケーには検索画面が2つあり、1つめは通信キャリアの公式サイト、もう1つは「Google」「Yahoo!」といった一般検索と呼ばれる検索画面でした。
実際、多くの人に使われていたのは、通信キャリアの公式サイトの検索画面でした。
こちらの検索は「Google」や「Yahoo!」よりも、検索結果を上位に表示させるアルゴリズムが単純。
簡単な例でいうと、「リモコン」というワード検索で、サイトを上位に上げたい場合、サイトのページの中における「リモコン」というキーワードの含有率を一定の割合に高めると、上位に持っていきやすいということです。
上位に上げられるということは、検索から入ってくる人たちの流入数をかなり稼げる。流入数が上がれば、同時に収益も大きく向上するということです。この仕組みにおいてSpeeeの技術力はトップクラスでした。
ここで私は、ネット検索をするユーザーの行動属性を学び、情報に踊らされる人はやはり一定数いると感じました。
SEO業界にいない限り、どういう手段で検索結果を上位に持ってきているかということを知らないと思うので、「誰が言っている情報か」ということよりも、検索で上位にあるものが良い情報だと信じてしまう人たちがたくさんいる。
こういう人たちが変な情報に踊らされないようにするには、「誰が発信している情報か」をしっかり見たほうがいいと思ったのです。
◆ネット上の情報に対する信頼性が揺らぐ
私がそう気付いた頃から、グルメサイトの問題が注目され始めました。「レビュアー」と呼ばれる人たちが、いいことを書きこむとお店の点数が上がる。
しかし、その多くの公式サイトはキーワード含有率によって上位に上げられるので、極端に言えばアダルトサイトの中にも一定のキーワードをたくさん埋め込んでしまえば、検索上位にアダルトサイトを上げてしまうこともできました。
このときに私は「そういうのは嫌だな。もっといい形にできるんじゃないか」と考えるようになったのです。
そして、Speeeに在籍していた2年の間に、どんどん時代は変わっていきました。2010年頃、SNSが台頭してきたのを目の当たりにしたとき、
私はこれからは検索の時代ではなくなってくるのではないかと感じ始めていました。
検索をかけると、トップ画面には大体1位から10位ぐらいまでの結果が表示されますが、11位以下(2ページ目以降)を見る人は10%以下です。それは上位に出てくるサイトを信頼してい るというよりも、次のページに行くのが面倒くさいということが一番の理由だと思います。
この「面倒くさい」は、人間が絶対に感じるものですから無視することはできません。
こう考えると、多くのネットユーザーは、やがて検索すること自体も面倒くさくなるのではないかとも思いました。現在ではすでに、考えただけで物を動かせるといったIoTの技術も出てきていますが、遠い未来ではテレパシーの世界になってくるのではないか、と。
こうして私は、「検索」以外にもいろいろな仕組みがありそうだということ、これからは検索の時代ではないということ、そしてSNSに可能性があることを感じて、Speeeを退職し、イー・ガーディアンという会社に転職しました。
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6,000文字超えちゃったので一旦2章はここで区切りますー!
※次回のnoteはこちら!
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今日は以上です!
ししど
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