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[本・レビュー] ジャック・マー アリババの経営哲学


感謝と謙虚さを忘れてはならないが、プライドと信念は絶対捨てない。自己の金儲けより、社会の利益や繁栄につながる事業を行うことを心がけていれば、自分の行いに誇りをもてるし、お金は自ずと入ってくる


まえがきからの抜粋です


"ジャック・マーすなわち馬雲。彼は貧層な体つきで、決してハンサムではない。学生時代の数学の成績は「不思議なほどに」悪く、2度も大学受験に失敗し、失意の中に、大学に進んだ。しかし、決して現状に満足せず、偶然に出会ったコンピュータという存在により、インターネットというものを知り、ビジネスを始めた。そして、中国初のビジネス用サイト「中国黄頁」を作った。彼はまったくのコンピュータ音痴でありながら、中国電子商取引の神話を作った。そして、この男は、世界中から賞賛を受け、「中国のビル・ゲイツ」がいるとしたら彼だ、と思われている。"

2000年 アメリカ アジアビジネス協会 ビジネスリーダー賞
2005年 2004年中央電視台ビジネスパーソン
2005年 世界経済フォーラム「全世界未来のビジネスリーダー100」
2006年 中国で最も影響力のあるビジネスリーダー25位
2009年 クラウドコンピューティングの「アリクラウド」設立
2012年 B2Cサイト「淘宝商城」を開設
2012年 米国ヤフーより同社の所有していたアリババ株40%のうち半分を買い戻す
2013年 馬雲CEO辞任。
2014年 ニューヨーク証券取引所に上場

中国国内のみならず、世界的にカリスマ経営者としられるジャック・マー氏。いままで同氏の経歴を知らず、学歴としての勉強はあまりされていない印象を勝手にもっておりましたが、ビジネスを始める前には英語で大学教師をされており、1995年には杭州十大優秀青年教師の一人にも選出された経歴をおもちだそうです。ビジネスのみならず、教育者としても一流のようです。

ジャック・マー氏はコンピュータの知識がなく、周囲の人間をチームに引き込むことで今日の偉業を達成された根幹には、同氏の並みならぬ人間力が存在するようです。
今回、本書を読んでいて思ったことは、
「謙虚であること=プライドが低いということではない」点です。

価値判断の基準は、相手の地位や立場にあるのではなく、自分の信念に基づくとします。
そうであれば、相手が変わると、対応や姿勢がかわるといったことがなく、一貫したふるまいが可能となります。自己に驕る事なく、他人を尊重し耳を傾ける。しかしながら、自分の信念をまげてまで相手に追従する必要はありません。

"私たちはどんなふうに見られているかなんて気にしない。私たちが気にするのは自分がこの世界をどのように見るか、どうやって私たちの定めた夢に向かって一歩一歩進んでいくかということだ。"

私たちは他人のことを考えず、自分勝手なふるまいをすることが多くても、いざとなったら周りの目を気にします。それも結局は他人を尊重しているからではなく、自分の利益や被害を考慮してのことでしょう。
ここを変える必要があります。多少なりとも周りの人の気持ちや状況を考慮し、自分の信念が正しいと思うのであれば、誰がなんといおうとやり通すのがよいでしょう。もちろん人の意見に耳をかたむける必要はあります。しかし聞いた上で、その意見を考慮する必要はないと考えた時は、わが道をただひたすらに進むのがよいのです。
 自分の筋を通した上で、他人を尊重する。信念なく、周りにあわせていると結果として自分も他人も誰一人得しないことになってしまうかもしれません。

ジャック・マー氏は人材も重視しています。
"アリババに関して言えば、株式や金などというのは、人材に比べれば大した財産ではない。社員が一番の財産だ。同じ価値観と企業文化を持った社員が最大の財産なのだ"

これについては言うは易し、行うは難しです。論語にも、ハーバード流子育て術にもみられますが、成功の秘訣はごく当たり前のところにころがっていたりします。「立場をわきまえ、謙虚であれ」「目的やビジョンを定め、ただひたすらに努力を続ける」「自分がされて嫌なことは、他人には行うな」。これらをよくある決まり文句だと、重視しないで過ぎ去るか、「果たして自分はその通りにできているか」と顧みてみるだけで随分な違いがでるのではないでしょうか。
あなたの周りに、「社員が一番の財産だ。自分や会社の利益よりもまずは社員の利益を優先すべきだ」という経営者がいるでしょうか。いればあなたは幸せです。その経営者についていけばいいでしょう。いないあなたはもっと幸せなのかもしれません。あなたがそういう経営者になればいいのです。周りにそういう経営者がいないのであれば、あなたが正しい経営を行えば、あなたについてくる人は必ずでてくるし、それを続けていれば、より多くの人があなたについてきてくれるでしょう。

"だめな社員はいない。だめなリーダーがいるだけだ。価値は人が生み出す。企業で最も大切な財産は人材だ"

リーダーは責任を他には求めません。「どいつも、こいつも使えない」「誰一人、言うとおりにできやしない」のは、他人が悪いのではなく、リーダーに問題があるのです。リーダーはそれぞれのメンバーの資質、特に本人も気づいていない才能を的確に見抜き、適材適所に配置すべきです。メンバーの全てを一人残らず、思った通りにうまく機能させるのは困難でしょう。しかしながら、どいつもこいつも使えないのは、使う側に問題があると考えるべきです。

"一人の人に対して責任を持とうという人は、きっといい人に違いない。5人に対して責任を持とうという人は部長クラスであり、200人、300人に対して責任を持とうという人は社長クラス。13億人に対して責任を持とうという人は総書記である。能力と責任は同じものではない。何人の人に対して責任を持つつもりか、また責任を持つことができるか、これは能力の問題ではなく責任感の問題である"

 最近、責任感が能力を生むのではないかと考えるようになりました。今まで、起業や独立は能力を持った一部の人間だけが行うものだと考えていました。人生100年時代、老後や、雇われている限りはパワハラやモラハラの影響をより受けやすいことから、独立を考えるようになりました。経営者的な本を読み、あれこれ考えるようになって、確実に以前より視野が広がった感があります。また、以前より行動力、思考力、決断力が向上した感もあります。能力も後天的に磨けると最近は思っていますが、なかなか思い通りにいかないのも確かです。しかしながら、責任感を持とうとすることは気持ち次第でできます。実際に責任がとれるかどうかは次の問題です。今までよりも少しずつ責任感を持つ範囲を広げていくと、普段の行動は変わっていきます。仕事に疲れていると、職場におちている紙屑やゴミも見て見ぬ振りをして通りすぎます。しかしながら、ここは自分の職場だという気持ちが少しでも増えると、自然とゴミをひろうようになるものです。
以前、私の職場で整理・整頓・しつけなどの5Sを徹底しましょうというレクチャーがありました。これには強い違和感を抱きました。職場の上司だったり、職場の社風等により5Sの大切さをとき、スタッフの一人一人が職員としての自覚を持てば、整理・整頓などは自ずと定着するでしょう。しかしながら、上司も徹底しておらず、形だけあてはめようとしても、職場は変わるものではありません。床にはあいかわらずゴミがおちており、トイレで床が水浸しになっていても、見て見ぬ振りのままです。私は職場の床にゴミがおちていたら、ひろって捨てますが、5SのSのそれぞれが何を表すのか、覚えていませんし、覚えるつもりにもなれませんでした。

手っ取り早く成功の秘訣を教えてもらいたいものですが、「どうすれば成功できますか?」という質問はあまりに投げやりなのかもしれません。たとえるならば、会議室にTシャツ・短パンで、手ぶらで参加し、「で、どうすれば?」といっているのと同じなのかもしれません。
まず最終的な目的(世界平和、経済的な成功、教育の向上等)は何か。その目的を達成するためにどのような手段(職業、立場)を用いるのか。このようなビジョンを明確にした上で、ひたすらに努力を費やす。ただし、戦略もなくただがむしゃらに努力をすればいいというものではありません。時間は有限です。はしごやエレベーターがあるのに、階段や素のぼりにこだわる必要はありません。それはそれで無意味とはいえませんが、達成できる成果は少なくなってしまうでしょう。

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