保育園・幼稚園の若手育成
どうもしろやぎ保育書房です
皆さん。
突然ですが、幼稚園・保育園での若手の育成どうしてますか?
困ってませんか?
「自分で考えて動けていない」
「何度も言ったことが、なぜかできない」
「そもそも、やる気を感じない」
「なんかすぐ辞めちゃう」
「メンタルダウン、で休みがち」
こういったことって、かなり多くの園で聞かれます。
でも、若手の育成なんて、困って当然です。
保育士養成校で「保育の知識」や「保育の方法」をたくさん学んだけれど、
「若手の育成」を教わった先生はいないからです。
これは、独学で学ぶしかないんです。
でも、独学で学ぶにしても、会社や企業の育成方法は、保育士の育成に、なんかしっくりこない。
結局、どうしたらいいんだ。
こんなジレンマを持ちながら、試行錯誤していらっしゃるのではないかと思います。
今日は、そんな先生方に向け、保育園、幼稚園などの保育施設で使える、
「若手育成のメソッド」を紹介していきたいと思います。
実際のところ、自分の法人の園でも、メンタルダウンの若手の先生がいたり、定着せずに離職したりする現状があります。
現在、若手の育成、上手くいっていません。
恥ずかしいことですが、事実なんです。
しかし今回は、そんな自分の職場の先生方にも、
「若手の育成」について伝えていけるよう、
保育の土台としての「保育者の育ち」をしっかりと支えていけるよう、
皆さんと一緒に考えていければと考えてます。
ぜひ最後までお付き合いください。
今日の参考文献はこちら『若手保育者の育成法』師岡 章(もろおか あきら) 著
それでは今日もよろしくおねがいしまーす
①若手の特徴と接し方
まず手始めに、若手について見ていきましょう。
若手と聞いてイメージするのが、ゆとり世代、と呼ばれる若者達のことではないでしょうか。
ゆとり世代というのは1987年~2004年生まれ。
2021年現在、17歳~34歳の人たちのことです。
2002年、新しい学習指導要領のもと、義務教育や高等学校などの授業時間数や授業内容が大幅に変更されました。
この、いわゆる”ゆとり教育”を受けて育った世代の人を、ゆとり世代とよんでいます。
では、このゆとり世代と呼ばれる人たちに、一般的にどのような傾向があるのでしょうか。
まずは長所から、
長所その1素直
彼らは、ゆとり教育というゆとりのある中で教育を受けてきています。
のびのび育っているので、素直な性格の人が多いんですね。
なので、小さなことでも褒めると喜びます。また、褒められると仕事の成果もだしやすいです。褒めてのばすのが効果的、ということです。
長所その2まじめ
かれらは、的確な指示を与えれば、しっかりこなしてくれます。
逆に言うと、指示がはっきりしない場合や、マニュアルがない場合は、どうすればいいのか判断できずに動けなくなります。
しかし、保育は多くの場合マニュアルどおりにはいきません。
せめて、その場その場での的確な指示を心掛けましょう。
長所その3横のつながりを大切にする
ワークライフバランスを重視したいと考えている人が多いです。
その分、職場への帰属意識が低くなります。プライベートも大切にしたいという気持ちの理解が必要ですね。
長所その4創造力にたけている
彼らは、ゆとり教育の中で、1つの科目に限定しない、横断的で総合的な教育を受けてきました。興味を持てるものを追求する教育方針により、独創性が育まれたといえます。
そのため、デザインや創造力を活かせる仕事において能力を発揮します。
さて次は、短所です。こちら、長所の裏返しになっている部分も多いです。
具体的に見ていきましょう。
短所その1.指示待ち人間
指示されたことはしっかりとこなしてくれる半面、指示されないと動きません。
また、指示された仕事も、楽に済ませる方法がないかにこだわり、
できるだけ簡単に終わらせようとする傾向があります。
仕事に対する熱意が欠けている人も多く、一生懸命仕事に取り組む世代の先輩とは価値観が合わないことも多いです。
短所その2.自分で考えるのが苦手
かれらは「デジタルネイティブ」と呼ばれ、生まれたときから既にインターネット、パソコン、スマホが身の回りにある生活環境で育ってきました。
かれらは、わからないことはGoogle検索で調べます。 そのため、答えが決まっているモノを調べるのは得意でも、答えのないことを自分で考えるのは苦手な人が多い、という傾向があります。
一方、保育というのは答えの決まっていない世界。
自分で考え、チームで話し合い、その都度判断し、試行錯誤することが求められます。
たとえ彼らが指示されたことをこなすのが上手でも、自分考える、という経験を与え、その成長を支える上司の関わりが求められます。
短所その3.ストレス耐性が弱い
褒められると伸びるけど、叱られるとポキッ、と折れてしまう。
彼らは学生の時代に、大人から怒られたり叱られた経験が少なく、ストレス耐性が非常に低いといわれます。職場で先輩や上司が、ちょっとした指摘をしただけで、もう嫌だ。もう無理だと思いつめてしまう。
叱って、落ち込む姿を見て「最近の人は弱い」と決めつけるのでなく、
そもそもの叱り方に ”ひと工夫” が必要です。
短所その4.上司との飲み会を断る
飲みにケーションなんてもう古い、そういって彼らは、就業時間外のプライベートな時間を優先したいという傾向があります。 横のつながり、ワークライフバランスを大切にする彼らなら当然ですね。そうはいっても、職場を離れおいしいものを食べながらざっくばらんに保育のことを話してみるのは、職場の雰囲気作りに最も効果的とも言われます。
彼らとコミュニケーションを取るとき、いきなり飲みに誘うのではなく、最初はお茶タイムなど、簡単な交流を図る事からスタートすると良いようです。
では、このような長所短所を理解したうえで、彼らとどのように接していけばいいのか見ていきます。
若手との接し方その①世代でくくらない
ゆとり世代はこんな傾向がある、という話をしてきましたが、話しかけるとき「あなたは、ゆとり世代だから」「これだからゆとり世代は」なんて言ってはいけません。
これは絶対に嫌われます。誰でも嫌ですよね。
わたくししろやぎの場合で考えたら、
例えば「これだから昭和生まれは・・・」とか「あなたは男性だから・・・」とか、こんな言い方になるでしょうか。
何かのカテゴリーに分けられて見られると、「そんなことないですよ!」という気持ちが強くわきます。
一人一人、その人をしっかりと見る。個人と向き合ってコミュニケーションをとりましょう
若手との接し方その②指示を的確にする
彼らはまじめな性格なので、柔軟に考えて自分なりに動く、というより、指示されたことをしっかりとこなす事に力を発揮します。
保育は指示されなくても動かなくてはいけないことが多い世界ですが、
それでも、特に初期のころは「これをしてください」「これはこうしてください」と丁寧に教えることで、彼らは仕事に慣れていきます。
「私の姿を毎日見てたら、何をしないといけないかわかるでしょ?」
「これをしなきゃいけないって、ちょっとかんがえたらわかるでしょ?」
こんなことを言って怒るのは、新人にとっては無茶ぶりだし、恐怖しかありません。
困っているとき、細かく指示を出してあげることで、お互いが心地よく保育に向き合うことが可能です。
若手の接し方その③ほめて伸ばす、叱り方を考える
若手を伸ばすときに、最も有効な方法は褒めて伸ばすことです。
これまでの学校教育、家庭教育において褒められて伸ばされてきたからです。
小さなことでもいいんです。良いところを積極的に褒めることで、意欲的に動き、伸びていきます。
じゃあ、叱ったらだめか、というと、現実問題、絶対に叱らないというのは無理な話です。
どうしてもという場合は、人前で大声を出したりせず、ソフトに叱ることを心がけます。子ども達や他の保育者からちょっと離れて、話をするようにしましょう。
さらに、ちょっとした注意や指摘で心が折れてしまわないよう、メンタルヘルスを職員全員で考え、内部研修などを通して、心の健康の保持や増進を進めていくことも大切です。
若手との接し方その④
距離を大切にする。
彼らは職場の人にプライベートを詮索されることを嫌がります。
しかし本来彼らは、素直で人当たりがよく気遣いはできる人たちです。
ある程度の距離をとって接していれば、お互い気持ちのよい付き合いができるのではないでしょうか。
私の前の職場では、「彼女できた?」「最近急いで帰ってるけど、なんかあやしい~?」とか、まあいろいろ聞かれました。園の職場って、小さな村社会みたいなもの。
ある程度はしょうがないです。
私は、適当にかわしていましたが、若手にぐいぐい迫るのは、嫌がられる可能性が高いのでほどほどにするのがいいと思います。
はい、ここまでが、若手世代の特徴とその接し方でした。
このようなざっくりとした世代理解や、関わり方のコツを知っていれば、お互いに心地よい関係性づくりに役立ちます。
保育者同士の良い関係性の上で行う保育は、子どもたちにとって何より心地良い保育環境になるに違いありません。
ただし、
心地よい関係性が作れたからと言って、それですべてOKとはなりません。
保育者は日々保育の現場で、変わりゆく子どもたちと関わります。
日々保育を考え、改善し、より良い保育を子ども達に提供したいと願っています。
なので、若手の保育者にも育ってもらわないといけません。
若手が育つことで、保育集団の質も上がります。
では次は、若手を育成するには何をすればいいかをみていきたいと思います。
②個を育成する
育成を考える時、大事なアクションは2つです。
1つは「指示をする」そして、2つ目は「気づきを与える」
この2つのアクションは、どちらがいい、どちらが優れていると言うものではありません。
それぞれにメリット、デメリットがあります。
例えば「指示をする」というのは、時間が早いです。保育ですぐに対応してもらいたい時、また新人にとりあえず動きを覚えてもらいたいときに効果的です。
「OO先生、ここを片付けて、テーブルを並べてください」
「ピアノであの曲を弾いてください」
これはすぐ理解し、すぐに行動に移せます。
慣れてくると指示を先読みして行動する姿も見られます。
しかしその反面、自分で考えずに指示に従うだけなので、やりがいは感じにくいです。
また、そこに若手保育者の創造性は育ちません。結果、保育者としての育ちが頭打ちです
一方、「気づきを与える」と言うアクションなら、若手は自分で考えて答えを出そうとします。そこに、保育のやりがいを感じ、創造性も育ちます。
しかし、ネックは時間がかかることです。
自分で考えたり、調べたりして、どうしようかと検討します。試行錯誤はどうしても時間がかかる。例えば急いでいるとき、またすぐに動いて欲しいときには「気づきを与える」のアクションは向いていません。
「指示する」「気づきを与える」どちらがいい、と言うのは難しいです。
これは、保育の状況によって、先輩や上司が適切に判断することになります。
しかし、どちらかに偏ってしまうのだけは、よくありません。
指示だけしていると、最初はうまく機能します。
しかし本人のやりがいには繋がらず、また保育者個人としての育ちはなかなか見られません。自分で考えることが少なすぎるからです。
一方、気づきを与えると保育者個人の成長は促がされます。
自分で考えて、やってみて、時には失敗し、その中で学び、次に繋げようとする。
このプロセスを経て人は成長します。
保育者の育ちも、子ども達の育ちと何も変わりませんね。
しかし、いつもいつも気づきを与えようとすると、新人の保育者にはプレッシャーが強すぎます。
はじめに「若手の特徴」として話した通り、そもそも若手は自分で考えて答えを出すことに、まだそこまで慣れていません。
時期を見て余裕があるとき、また若手が保育に慣れてきたタイミングで、適切に「気づきを与える」のアクションを考えましょう。
ではここで、この「気づきを与える」のアクションについて、もう少し詳しく見ていきます。
このアクションのやり方には大きく分けて2つのやり方があります。
1つが「コーチング」そして、2つめが「カウンセリング」です
この2つは、上司や先輩が部下を支援する方法として、よく知られています。
この2つ、似ているな、と感じる人もいるかもしれません。
しかし、「どんな気づきを与える」のか、が違っています。
「コーチング」というのは「ゴール」を明確にします。
例えば「1年後、あなたはどんな保育士になっていたいですか?」というふうに聞きます。そして話し合った結果「こんな保育士になりたい!」とでたら、それがその若手保育者のゴールです。
そして、そのゴールと現状のギャップを明確にします。何ができていないか、どの部分を伸ばす必要があるか。
上司はゴールへの道筋を教えてはいけません。この道筋は、傾聴、対話と言う方法を使いつつも、自分でかんがえてもらいます。
まとめると、「コーチングは、ゴールを明確にし、ゴールに向かう道筋を自分で考えてもらう」そんな気づきを与える手法です。
一方「カウンセリング」は「課題」を明確にします。
例えば「今仕事で課題に思っていることはなんですか?」というふうに聞きます。「こんなことが難しい」「これに困っている」と出てくるので、それがその保育者の課題になります。保育者によっては仕事だけでなく、プライベートや人間関係で思い悩んでいる人もいるかと思います。
根掘り葉掘り聞くのは若手は嫌います。また内容や聞き方によってセクハラ、パワハラになってしまう危険性もあります。なので、本人が行ってきた内容以上のことは聞かないようにするのが大事です。
本人の課題が明確になれば、その課題と現状のギャップを明確にします。
なぜそれが課題なのか、その課題を克服するにはどうすればいいか、克服できない場合、どのように対処するのがよいか。
こういったことを、「コーチング」の時と同じく、対話し、傾聴という方法を使い、本人に答えを出してもらいます。
まとめると「カウンセリングは、課題を明確にし、課題への取り組みを自分で考えてもらう」そんな手法となります。
「コーチング」も「カウンセリング」もどちらも、どうすればいいのか、という「気づきを与える」手法になります。しかし若手の場合、カウンセリングの手法の方が良い場合が多いです。
自分が困っている状況にいるいるときに「どんなゴールを目指しますか?」なんて聞かれても「いやいや、それどころじゃなくて」と感じる人が多いです。
ある程度毎日の保育に余裕が出てきた、現状特に困っていることはない、そんな保育者に「コーチング」の手法が有効になります。
さて、これまで上司や先輩が若手保育者を育成する方法について見てきました。
最後は園全体で育成を進める方法。
若手育成の制度作りについて紹介したいと思います。
③制度を作る
まずは対話の場づくりです。
職員の同僚性を高める園内研修。こちらは以前の動画で紹介しています。
『「語り合い」で保育が変わる、園内研修のススメ』
『園内研修のデザインと やり方』
語り合うことで多様な見方や考え方を引き出します。お互いの保育の思いを聞き合い、理解し合っていくことで、保育者集団の質が向上し、同僚性と呼ばれる仲間意識が育まれます。もちろん若手の育成にも非常に効果的です。
次にメンター制度です。
先程、コーチングとカウンセリングの方法を紹介しました。
とても有効な方法ですが、この方法を園長や主任だけで行っていくのには限界もあります。
忙しい毎日、なかなか全職員と1体1で話し合う時間を確保するのは難しいですよね。
そこで今、注目されているのがメンター制度というものです。
これは、新人育成に積極的な企業において、導入されてきている新たなサポートシステム。最近は保育施設でも取り入れるところが出てきました。
簡単に言うと、園長や主任とは別の、個別で指導を進めてくれる先輩を新人につける。というシステムです。
忙しい上司に代わって、先輩が1体1で指導したり、相談にのったり、不安や悩みを聞いてサポートしたりします。
新人は直接園長に相談できず、一人で思い悩むことが多いです。
しかし、このメンター制度。
特定の先輩と関係ができることで、新人も安心して相談でき、園に馴染みやすくなるというメリットがあります。
教える先輩の方も自分の保育の振り返りや新たな気づきにつながります。
メリットの多いメンター制度ですが、注意しなくちゃならないこともあります。
それは、どの先輩をつけるか、ということです。
くれぐれも、「この先生は保育経験が長いから」と言う基準で選ばないようにしましょう。
それよりも、「この先輩保育者にメンターの適正は備わっているか、育ってきているか」
また、「この新人と相性がよさそうか」と言う基準を大事にします。
メンターとなる先輩の質がこのメンター制度の大きな鍵です。
園で働く職員のことをよく見て判断していくようにするとよいでしょう。
また、メンターの趣旨や心構えを学ばせる研修なども活用し、メンターとなる職員を育て流ことも大事です。
最後に育成計画を立てるです
保育教諭養成課程研究会
『幼稚園教諭・保育教諭のための研修ガイドⅠ〜Ⅳ』では、保育者の質としてこのような9点を提示しています。
①乳幼児理解・総合的に指導する力
②具体的に教育・保育を構想する力
③得意分野の育成、教職員集団の一員としての協働制
④特別な教育的配慮を要する子供に対応する力
⑤小学校との連携及び小学校教育との接続を推進する力
⑥保護者及び地域社会との関係を構築する力
⑦現代的課題に対応する力
⑧園長などの管理職が発揮するリーダーシップの力
⑨人権に対する理解の力
このような視点から、
「①の専門性を高めるためには、新人にはこんなことを学んでほしいな」と考えます。
例えば、「発達段階の理解」とか「要録の書き方」とか「子ども理解の姿勢」といったことでしょうか。
このように求められる専門性から、その専門性を伸ばすために、新人が身につけるべきものを考える。
そしてその新人が身につけるべき内容を育成計画に落とし込む。
計画通りに、スケジュール通りに育成を進めるのは、実際のところ不可能だと思います。
しかし、一人の保育者の育ちを俯瞰して見る時、新人に次にどのような資質を伸ばしてほしいか、と迷った時、育成計画があると育成方法の見直しができます。
育成計画をその都度見直すことで、きっと、新人保育者が園に求められる保育者として、バランス良く育ってくことにつながっていくのではないかな、と思います。
④まとめ
今日は保育園における若手の育成について考えてきました。
最近の若手はちょっと理解ができない。
どうやって育成すればいいのか困っている。
こんな先生方が、今日の動画で何か参考になることが見つけていただけたなら嬉しいです。
園によっては、
「わたしは子どもを保育するために保育者になったんだ」と言って、若手の育成を2の次にしたり。また園長・主任の役割で自分ごとじゃない、と思ったりしている先生がいると聞きました。
でも保育は集団で行うものです。また保育者の質向上には、保育者集団の質を上げていくことも非常に重要です。
ぜひ、これからも保育の質を高めながら、若手の育成も進めていっていただけたら嬉しいです。
今日は以上になります
どうもありがとうございました!