【保育士必見】4つのステップでアクティブラーニングを始めよう!
(この内容の動画解説はこちら)
どうもしろやぎ保育書房です。
はじめに
みなさん、アクティブラーニングを保育で活用されていますか?
もしかしたら、やってみたいけどやり方がいまいちわからない。
やっているけど、これでいいのか不安。そう思われている方もいらっしゃるかもしれません。
そんな時、保育の本を探してみたり、研修を探したりするかもしれません。
しかし、アクティブラーニングの保育の指南書や研修はなかなか見つかりません。
そこで、今回はそんな、アクティブラーニングをやってみたいな。どう始めればいいかな。そう言った方に向け、いくつかの保育参考資料からエッセンスを抽出し、アクティブラーニングの始め方を紹介できればと思います。
ズバリ、アクティブラーニングの保育は4つのプロセス、
日本風に言うと「起承転結」の流れを意識することで、始めることができます。
その4つのプロセスというのが、こちらです
今回はこの起承転結4つのプロセスについて詳しく、また保育者としての関わりのポイントをお伝えします。
これなら始められそうだ。今度やってみよう。そう思ってもらえるような動画にしたいとおもいますので、ぜひとも最後までご覧ください。
今日の参考文献はこちら
「さあ子どもたちの未来をはなしませんか」汐見稔幸著
「幼児教育のデザイン」無藤隆著
「日本版保育ドキュメンテーションのすすめ」大豆生田啓友おおえだけいこ著
「子ども主体の共同的な学びが生まれる保育」大豆生田啓友編著
主要参考文献は、
「好奇心が育む学びの世界」利根川明宏著 になります
それでは今日もよろしくお願いしまーす!
始める前に、知っておきたいこと
アクティブラーニングの始め方4つのプロセスを紹介する前に、前提として、
そもそもアクティブラーニングとは何なのか。
そして、アクティブラーニングをするなら、どれくらいの人数規模が適正なのかをお話しします。
この「アクティブラーニング」というのは、すこし抽象的な表現ということで、2018年の3法令改訂以降は、より具体的な表現として「主体的で対話的で深い学び」といわれることが多くなりました。
この「主体的で対話的で深い学び」と言う文言は、2018年改訂の認定こども園教育保育要領、幼稚園教育要領に登場し、小学校以上の学習指導要領では総則に入りました。
改訂された3法令には、日本の教育が目指す「3つの資質と能力」が示され、その資質や能力を伸ばすために「主体的で対話的で深い学び」が大切だ、ということが書かれたんですね
東京大学名誉教授の汐見稔幸さんは、この「主体的で対話的で深い学び」について、
だと言っています。
つまり、これからの保育では「主体的で、対話的で、深い学び」になる活動をすることが求められているわけです。
一方で、「幼児期の子どもは、自分の興味や好奇心から主体的に動いているので、すでに毎日アクティブラーニングをしているんじゃないか」と言われることもあります。
しかし、それが対話的な活動になっているか。本当に深い学びになっているのか。こう言った疑問は残ります。
また普段どおり、こどもたちが好きなように遊ぶことが、そのままアクティブラーニングだ、と言われると、じゃあ、保育者のすることは一体なんなの?ということになってしまいます。
実際は、アクティブラーニングにおいて保育者の役割は非常に重要ですし、子どもが好きに遊ぶことと、アクティブラーニングの知的な探求活動には、多くの違いがあります。
「主体的で対話的で深い学び」と言う言葉が、保育業界に浸透してきたものの、
まだまだ「じゃあどうすればアクティブラーニングになるの?」と疑問を持つ方も多いようです。
つづいて、アクティブラーニングの人数規模についてですが、これはクラス全員で取り組むものではない、と言うのが私の考えです。
白梅学園大学子ども学部 名誉教授の無藤 隆さんは、
クラスの十数人で何かの活動を協同的に行おうとする時、
と言います。
どんな活動でも、人数が多くなればなるほど、順番を待たなければいけない子、興味がなくてもやらされる子、飽きてしまい他に興味が移っていく子なんかが出てきてしまいます。
そんな中、活動に積極的でない子に「ちゃんと参加しなさい」と保育者が叱ってしまう。こんなことがあるかもしれません。
こうなると、その活動が本当に「子どもの主体的な活動」なのか。疑問が生じてしまいます。
これは私の提案ですが、コーナー保育を作る時の思考で考えると良いのではと感じます。
コーナー保育では、保育室にいろいろなコーナーを作ります。そして、それぞれのコーナーに、いろんな遊びを配置します。子どもたちは、全員が一つのコーナーで遊ぶのではなく、いろいろなコーナーの中から好きな遊びを選んでいきます。
こう言ったコーナー保育の考えに合わせ、保育者はいくつかのアクティブラーニングの機会を用意し、子どもたちはその中から自分が好きな探求を進めていける。こんなスタイルが良いのでは、と思います。
当然、いくつものアクティブラーニングの機会を用意しても、保育者一人で全てを把握し進めることは困難なので、複数担任や、主任、サポートの保育者にも協力してもらいながら進めていきましょう。
さて、それでは、アクティブラーニングの始め方をみていきたいと思います。
アクティブラーニングは先ほどお話しした通り、4つのステップ、起承転結の流れを意識することで進めていくことが可能です
順番にみていきましょう
①起「出会いをプロデュースする」
まず最初は、子どもたちと様々な「モノ」が出会う機会を作ります。
この「モノ」というのは、アクティブラーニングで関わっていく、対象のことです。
これは、保育者が園の日常にはないものを用意する場合もありますし、
散歩に出掛けて偶然出会うものもあったり、
保護者や地域の方からもらったりするものもあります。
また、時期や季節によって現れるもの。遠足で見つけたもの、なんかもあります。
個人的には、自然物や自然現象が非常におすすめ。大変奥深く、かなり面白い探求対象です。
たとえば、冬の時期だけに園庭に現れる氷、とか
公園いっぱいに敷き詰められた落ち葉、だったり、
雨上がりの虹、果物の酸っぱい匂い、光と影、泥団子、雑草や昆虫。
自然の中には、不思議がいっぱいです。
私が自然物や自然現象が良いと思うのは、それ自体を探求するのも面白いし、また、探求の先に、また別の活動に繋がっていく可能性が大いにあるからです。
もちろん、それ以外にも、演劇やアートを題材にするのもOKです。
大豆生田啓友さんの「子ども主体の協同的な学びの保育」では、地域の伝統芸能を深めていく事例も紹介されています。
この出会いの時に、大事なキーワードは「感動」です。
何かと出会って「うわーっ」と驚く。「すごいきれい!」と喜ぶ。
「なんじゃこりゃ?」と不思議がる。こう言った感情の動きが、後の探求活動の原動力になります。
保育者としては、「はい、こんなのがあるよ!」とみせる場合もあるし、知らん顔して保育室に置いておき、子どもたちが見つけるのを待つ場合もあります。
ここはクラスに合った、より効果的な出会いを演出していただくとよいでしょう。
また保育士があらかじめ用意しなくても、日常生活や散歩の時など、子どもたちの様子から、何に興味があるか、何に心を動かされているかを探り、何かに感動したなら、それをアクティブラーニングの題材にするのも全然ありです。
保育者の皆さんには、是非とも子ども達の「感動」を引き起こす出会いを、また子どもたちの「感動」からの題材選びをおすすめします。
②承「疑問を抽出する、仮説を立てて、活動する」
ここからが保育者としての本領を発揮するタイミングです。
まずは、子どもたちが出会った対象から、疑問を抽出します。
保育者が「これって、どうしてなんだろう?」と投げかけたり、子どもたち自身が「あれ?これってどうして?」と口にすることもあります。
例えば、
「氷の中につぶつぶがあるよ?このつぶつぶなあに?」
「虹ってどうやってできるんだろう?」
「木の葉の色が違うのはどうして?」
「この葉っぱを潰すと臭いけど、他の葉っぱも臭いのかな?」
「泥団子に色をつけたいんだけど、どうしたらいいだろう?」
このように、保育者から疑問を投げかけることで、また、子供達自身の中から湧き出す疑問をピックアップすることで、アクティブラーニングは動き出します。
疑問は、保育者自身が答えを知らないものでもOK。
むしろその答えを知らない方が、子供たちとの探求の活動を楽しむことにつながります。
大切なのは、答えを教えることではなく、答えを探して一緒に探求していく過程です。
疑問を抽出したら、子ども達に仮説を立ててもらいます。でも、「仮説を立てて?」なんて、こんな難しいこと言わなくても大丈夫です。
「どうして?」と聞いてみると、多くの子供が自分なりの仮説を話し始めます。
例えば、氷の中のつぶつぶってなあに?という疑問を投げかけると
「ひび」「あわ」「くうき」「何もはいってない」「水」と言ったように、
それぞれが思うことを口にします。この意見を保育者は頭から否定しないように、全て拾い上げ、聞き返したり、他の子にも意見を求めたりして、子供たち同士が対話する手助けをする訳です。
そしてある程度の仮説が絞られてきた段階で、次の活動を提案します。
「実験」もしくは「調査」ですね。
「実験」は実際に自分たちの手で作ったり試したりすることです。
例えば、道具を駆使して虹を作ってみたり、
どろ団子に色をつけてみたり、いろんな葉っぱをすりつぶして匂いの違いを調べてみたり。
「調査」は自分の足で、目で、鼻で、五感をフルに使って調べていくことです。
園庭の裏の氷と、近所の公園の氷はどっちもつぶつぶがはいっているか。
虫眼鏡で氷のつぶつぶを拡大して見てみる。
こう言った調査の結果、実験の結果を元に、子供たちと話し合って仮説を検証していきます。
検証方法なども試行錯誤しながら進めることになります。
仮説が間違っていれば、新たな仮説を立てて、再検証を繰り返します。
この、疑問から仮説を立て、調査や実験で検証する。必要なら再検証を繰り返す。この流れが、アクティブラーニングの2つ目のステップとなります。
③転「過程を整える(整理、言語化、共有、深化)」「柔軟に移行する(発展、変化)」
ここまでの2つのステップで、ある程度のアクティブラーニングの流れが掴めたと思います。
しかし本来、子ども達は何かの拍子に「あれ?」と考え、その問いを調べたり意見交換したりして、その疑問の理由を知ろうとする本質があるといえます。
なので、ステップ2までは、実はそこまで難しくありません。
一方、汐見稔幸さんは
と言います。
つまり、主体的で対話的な活動はできても、それが「深い学び」にまで落とし込めない可能性は大いにある訳です。
さらに汐見さんは、
と言っています。
普段の遊びに比べ、ある程度長い期間をかけて探求していく活動。これを持続させるためには、保育者の役割というのが重要だと言うことです。
汐見さんが言う「整理、言語化、共有、深化」をするためには、当然、子どもたちの対話が必要です。
保育者は、子どもたちの意見を拾い、受け止めて、全体としての議論を整理しながら話し合いを進めていく。
そのなかで、一人一人が意見を交換しやすい環境を整え、考えたことを言葉にする手助けをしていきます。
一人一人の意見を受け止めつつ、それでも全体の方向性を保つ。
高度なスキルではありますが、この子どもたちの対話を支えることで、深い学びへとつながっていきます。
また、クラス全体に共有することも大事です。
アクティブラーニングはクラス全員でやるものではない、と初めに言いましたが、学びのチャンスはみんなにあっても良いものです。
子どもにとって「こんな面白いことがあるんだ」と言うことを知らずに、いつの間にか活動が終わってた。これってなんだか勿体無いですよね。
例えば、1日の終わり、帰りの集いなどで、誰か一人の子どもをよんで「今日こんなことしてたよね?どんなことしてたか、みんなに話してくれる?」と言ったふうに、投げかけます。
そして、その子にどんな面白いことがあったか、明日はどんなことをしてみようか。と言うのを話してもらう。
そうすることで、クラス全員が今どんなことが行われているかわかるし、もし興味が出れば明日は自分もやってみようかな。と考えられます。
また、発表した子にとっても、自分のしていることを共有することで、「深い学び」に繋がっていきます。
さらに、ビジュアル化して共有することも非常に効果的です。
これは「保育ドキュメンテーション」の活用がおすすめです。
無藤さんは、協同的な学びを深めるのが
だと言っています。
保育ドキュメンテーションとは、写真付きで保育エピソードを描いていく、保育の共有に使われる記録です。
保育のエピソードと共に、子どもの感じたこと、考えていたことを推察し、さらにそこにどんな育ちがあるか、と言うことを書いていきます。
写真やイラストなども使うことで、どんな出来事が合ったのか伝わりやすいのが特徴で、アクティブラーニングの活動の流れをビジュアル化するのにも向いています。
子ども達同士で自分たちの調査や実験の経緯を振り返ることもできるし、それを見た保護者や他の保育者からも何か良いヒントがもらえるかもしれません。
保育ドキュメンテーションについて詳しく知りたい方は、以前の私の別の動画をご覧ください「日本版保育ドキュメンテーションの作り方」こちらですね
さらに活動が深まってくると、アクティブラーニングは、派生してさまざまな方向へと伸びていきます。
例えば、葉っぱの匂いを比べていたら、匂いに興味が出てきて、木の実や花を潰して香水作りを始めたり、うまく行かず香水屋さんに訪ねてみたり、そのうちハーブやアロマにも興味を持って、、、このように、興味がどんどんと派生し広がっていきます。
こういった活動の変化は、アクティブラーニングの面白さの一つでもあります。
そもそも新しい知識というものは、その一つだけで完結するものではなく、既に持っている知識や経験と結びついて、より強固なものとなっていきます。
疑問、仮説、活動を通して、学びを深めたら、柔軟に次の疑問へ活動へと移行していくのが望ましいと言えるでしょう。
汐見稔幸さんは、
だと言っています。
保育者として、子ども達が自分の知識と新しい発見を結び付けられるように、手助けしたいところです。
④結「学びの棚卸しをする」
先ほど紹介した通り、アクティブラーニングはある程度進むと、いろいろな活動へ、別の興味へと展開していきます。
もちろんそのまま次の活動へと進んでも悪くはないのですが、より「主体的で対話的で深い学び」になった学びを定着させるために、「学びの棚卸し」を提案します。
一つの疑問に取り組んで、実験して調査して仮説の検証を繰り返し、ひと段落着いたあたりで、みんなの前で発表する機会、何かの作品を作る機会を作る。
これまでインプットしてきた知識をアウトプットするんですね。
イタリアのレッジョエミリアの幼児教育では、協同的な活動プロジェクトアプローチの後に、学びの集大成としてアートの作品をしあげ、「子どもたちの100の言葉展」とよばれるような展示会で発表します。
オランダのピラミッドメソッドでは、1ヶ月のプロジェクトの後に、プロジェクトデイというものがあり、そこで1ヶ月取り組んだことについて、作品でも、演劇でも、ファッションショーでもなんでも良いのでみんなの前で発表します。
せっかくなので、アクティブラーニングで取り組んだことも、発表の機会をもうけて、学びの棚卸しをするのも良いのではないでしょうか。
展示会やプロジェクトデイ、といった大袈裟なものでなくとも、クラスのみんなの前で発表してもらったり、誕生会で他のクラスが集まった時に見せてもらったり、何かしら発表のチャンスがあると良いのではないかと思います。
子ども自身が「どう発表しようか」と考える中で、自分の学んだことをより深く理解することにつながります。
また、発表することは「深い学び」における「共有」であり「言語化」にもつながります。
さらに、発表することで、誰かに知ってもらえることで、それが喜びになり、さらなる探求活動へとつながっていくのではないでしょうか。
まとめ
今日は「アクティブラーング保育の始め方4つのプロセス」について話をしてまいりました。
具体的に、明日からアクティブラーニングの保育を始めるには、どうすればいいか?と言うところから考え始め、保育者の役割や「主体的で対話的で深い学び」と
は?というところまでお伝えできたのではないか、と思います。
それでは「まとめ」です。
アクティブラーニングの保育のはじめ方は、
起承転結の4つのプロセスで考えるとわかりやすいです。
起①出会いをプロデュースする
子どもたちが「感動」する、心が動かされる「モノ」との出会いを作りましょう。子どもたちがすでに感動している「モノ」を対象にするのもありです。
おすすめは自然物や自然現象です。奥深くて、色々と発展していきます
承②疑問を抽出する、仮説を立てて、活動する
出会った対象から、疑問を抽出し、仮説を立て、それに合う活動、実験や調査を行います。疑問は保育士が答えを知っているモノである必要はありません。
子どもたちの仮説を拾い上げ、議論を整理し、活動を一緒に行いましょう
転③過程を楽しむ(整理、言語化、共有)、柔軟に移行する(発展、変化)
子どもたちの知的な探求活動は、保育者が「整理、言語化、共有、深化」をしないと長続きしません。対話で子どもたちの意見を受け止め、言語化する手助けをし、帰りの会などで全体共有の機会を作りましょう。また、共有には保育ドキュメンテーションが非常に有効です。
活動が深まると自然に、別の興味に派生したり、違う活動へと展開していきます。知識はそれ単体ではなく、他の別の知識や経験と結びつくことで強化されます。柔軟に活動を展開していきましょう
結④学びの棚卸しをする
活動は自然に派生し広がり展開していきます。学びのひと段落着いたタイミングで、発表する機会をもうけましょう。インプットしたものをアウトプットすることで、学びはより定着し、深い学びへとつながります。
この4つの起承転結の流れを意識し、アクティブラーニングを楽しんでいただけたらと思います。
最後です。
私は保育士さんの参考になることをYoutubeでいろいろ発信しています。
よければ、「しろやぎ保育書房」のチャンネルにも、遊びに来てくださいね
今日は以上になります。
どうも、ありがとうございました!