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新指針・新要領が語る保育の未来

どうもしろやぎ保育書房です

動画解説はこちら

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急速なスピードで変化していく現代社会。
この激動の社会の中で、海外諸国は幼児教育に重点投資だ!全力投球だ!といって、教育改革を進めています。
こんな海外の流れを受け、日本では、2018年の3法令改定が行われました。
そして、それから3年たった現在。日本の保育は、目指すべき方向に向け、ゆっくりと歩き始めているのです。

では、なぜ世界は幼児教育に投資しようと考えているのか。
また海外の動きを受け、日本はどの方向に進もうとしているのか。
そして、それは「3法令の改定」にどう関係しているのか。
今日は、このあたりを深めていきたいと思います。
そしてそこから、「3法令改定」の3つのポイント。
さらに、「私たちが今、何をすべきなのか」というところまで、著者の汐見稔幸さんの解説をベースに、考えていければと思います。

今日の参考文献はコチラ
『さあ、子どもたちの未来を話しませんか?』汐見稔幸著 

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それでは今日もよろしくお願いしまーす!



①世界が幼児教育に投資する3つの理由

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まずは、なぜ世界が幼児教育に投資をするのか。3つの理由について、みていきましょう。
一つ目は、現代の深刻な環境問題が関係しています。
環境問題というのは1980年ごろから、国連総会のテーマとして上がり始めました。
80年代は、木材を手に入れるため、多くの国や企業が、東南アジアの島々の森林をブルドーザーでなぎ倒し、砂漠化を進めました。
中国の砂漠化は、黄砂による砂嵐や空気汚染、生態系の破壊、また気候の温暖化等を引き起こしています。
また、私たちは大量生産し大量消費をする社会に生きています。
この大量生産を補うには、大量のエネルギーが必要です。大量のエネルギーを作るため、私たちは燃料を燃やし、温室効果ガスを出し続けています。
しかし、この温室効果ガスの影響で、地球が温まり、海水が上昇して陸地に水害をもたらしたり、年々大型化する台風の被害につながったりもしています。
こういった環境の問題に対して、様々な取り組みがされているものの、今のところ、決定的な打開策というのは見つかっていない状況だそうです。
こういった答えのない問題に対して、今までにない新しい科学技術、新しいアイディア、そして、新しい交渉術が必要とされています。
そして、「こういった力を持つ次世代を育てていこう!」こんな思いを各国が持つようになりました。
20世紀は知識偏重の時代でした。答えがすでに分かっているものを、どう解くか。を教えてきました。
しかし、これからは、答えがわかっていない問題に対して、情報を集めたり、人と意見を交換したり、斬新なアイディアを出したり、うまくプレゼンしたり、共同で取り組んだり。こんな能力こそが求められる時代です。
私たちの地球では、環境問題以外にも、紛争の問題、差別の問題、移民の問題などなど、様々な何とかしないといけない課題が山積みです。
こういった、答えがない問題に立ち向かえる人材が育ってほしい
こんな思いから、幼児教育に投資する国が増えている、というわけです。

なぜ世界が幼児教育に投資をするのか。理由の二つ目は、女性の労働が関係しています。
現在、先進国の人が担っている仕事の多くが第3次産業です。
第1次産業は、農業や漁業、第2次産業は製造業、第3次産業はそれらに含まれない産業、
例えば、事務、販売、教育、福祉、金融、医療、等がそれにあたります。
多くの先進国では、約7割の人が第3次産業に就いていて、第3次産業が盛んでない国に第1次第2次産業の重労働を任せています。
この、第3次産業ですが、実は、女性のほうが向いているといわれます。
 なぜなら、一般的に、女性のほうが男性よりもコミュニケーション能力が高いからです。
教育、福祉、接客というのは、高いコミュニケーション能力が必要な仕事です。つまり女性向きだ、女性が得意な仕事である、と考えられています。
このような状況から、これからも第3次産業で国を活性化したい!と考える各国のリーダーたちは、もっと女性に活躍してもらおうと考えました。
日本もまた、2019年の女性活躍推進法で知られるように、2014年ごろから、「すべての女性が輝く社会づくり」を目指してきているんですね。
 しかし、女性が社会で活躍するには、様々な社会課題があります。
雇用機会均等の問題、正規雇用と非正規雇用の給料格差。そして男女の賃金格差問題です。
世界経済フォーラム2016の調べでは、男女の給料格差は世界ランキングで111位となっています
 そしてさらに、女性が働きやすい環境で重要なのが、「保育施設の充実」です。
 先進国はどの国も少子化が進んでいます。
 女性に働いてもらいたいから、といって、女性が働きやすい雇用環境、労働環境を作ったとしても、子育てするのが難しい環境なら子どもを生もうとする女性の数は減ってしまいます。
働くために子どもを産むのはあきらめよう、と思う女性が増えると、結果的に少子化が進んでしまう。
 このため、安心して子どもを産んで、安心して働いてもらうための「保育施設、保育制度の充実」が必要になったということです。

なぜ世界が幼児教育に投資をするのか。理由の三つ目は、貧困の問題です
先ほど話した通り、先進諸国の多くで少子化、人口減少が進んでいます。
ヨーロッパでは、人口減少に対応するため、移民を受け入れました。しかし、歴史的に見て、移民は良い教育が受けられなかったり、仕事につけなかったりして、貧困層になりがちです。
1997年イギリスではブレア元首相が「第1に教育、第2に教育、第3に教育だー!!」といって、政権内の一定期間、予算を大幅に増やし、保育や教育、家族支援サービスを行う無料の総合施設を数多く作りました。
そして、その結果、貧困率の大幅な低下を実現したのです。
このブレア政権の成功を見たヨーロッパの国々は
貧困地域に質の高い幼児教育施設を作ることが経済政策上有効だ」と考えるようになりました
親が貧しいと子どもに十分な教育を受けさせられない、結果良い仕事に就くチャンスが減り、相対的に子どもも貧困に陥る。一度貧困に陥ると自己責任、自助努力を基本にする社会では、その貧困から抜け出すのは非常に困難です。
このような貧困の世代連鎖を断ち切るには、長い目で見て、やはり教育に力を入れるべきなのかもしれません。
昨今の日本でも、貧困率は高くなってきていますね。
相対的貧困率は、先進諸国と比べてかなり高く、深刻な状況だと海外から指摘もされています。
一人ひとりの子どもが、貧困と関係のない暮らしを送れるように、乳幼児期から丁寧な保育と幼児教育を。
これが、なぜ世界が幼児教育に投資をするのか。三つ目の理由でした。

世界規模で起きている環境の問題、女性の労働の問題、そして貧困格差の問題。
幼児教育に投資すればすべて解決、みんな幸せ、というわけにはいきません。
それでも、それを置き去りにしたままでは多くの人が不幸になるのが目に見えています。
このような様々な理由があり、現在、どの国も教育の改革、特に幼児教育に全力で向き合っている、という状況なのです。


②日本の保育の背景と現状

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さて、ここからは日本の状況を見ていきたいと思います。
世界は21世型教育に移行し、保育・幼児教育に重点投資をしている。日本はどうか。
実は日本でも、かなり前から「時代の変化に対応した教育をしていこう」という流れがありました。
1984年「臨時教育審議会」というものが作られました。そこでは、「記憶に偏った詰め込み教育はダメだ」と話されます。
このテーマは議論され続け、1996年。
「中央教育審議会(いわゆる中教審)」が「変化の激しいこれからの社会では、自分で課題を探し、問題解決する資質や能力、すなわち「生きる力」が大事だ」と答申を出します。
そして2000年ごろから、いじめや不登校問題を受け、「生きる力を育てる教育」「総合的学習の時間」「完全週5日制のゆとり教育」を導入、教育改革が行われました。
この時代に目指したものは、今までなかった柔軟な思考力、アイディア、企画力、リーダシップを伸ばそうという教育法でした。これまでにない新しい教育法は最低でも成果が出るのに10年はかかるだろうと思われました。
しかし10年たつのを待たずして、「ゆとり教育のせいで、漢字が書けない。計算できない」という保守的な教育観に縛られた人達によって、新しい教育への流れがつぶされます。
2008年には、ゆとり教育の見直し。削減された教育時間の半分が戻され、総合的学習の時間も削られました。
しかし、その後も国立教育政策研究所などを中心に、時代に合った教育方針が模索され続けました。
そして20年の研究、議論の結果、ヨーロッパで効果が高いとされているキーコンピテンシーを参考に、日本の“生きる力”を洗練させていこう。となりました。
キーコンピテンシーとは次世代に必要な能力のことで、課題解決に向け「深く考え行動する」ために必要な能力の事です。これは「非認知能力」と呼ばれる能力に似た概念です。
そして、2016年中教審教育部会は「知識か問題解決か、どちらかに偏るのでなく、それをバランスよく獲得した力。それが21世紀型の能力である」さらに、「幼児教育もその流れに加わるもの」として書かれました。
こういった流れを受け、2018年の3法令の改定につながっていくのです。

いま世界中が、認知能力、非認知能力を合わせた資質・能力を育てる方向に向かっています。
日本では紆余曲折がありました。すこし遠回りもしてきました。
しかし、私たちは、ようやくそちらへ進むことを決めた、というタイミングです。
さあ、いよいよ、日本の保育・幼児教育も変わっていかなくては! 
こんな流れの中に私たちはいるのです。

ではでは、このような思いで改定された3法令について、これから見ていきたいと思います。

③新指針新要領のポイント

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新指針新要領のポイントその1、養護が強調されました。
新保育所保育指針では、第3章にあった「養護」の項目が、総則に繰り上がりました。
第3章から総則へ。つまり後半に書いてあったものが、いきなり指針のトップに書き替えられた、ということです。
ここに大きなポイントがあります。
2018年の改定では、幼稚園、保育園、幼保連携型認定こども園、すべての保育施設で、共通の「幼児教育」を行うことが示されました。
これは、「保育園も幼児教育施設と認めます。なので、保育士も自覚をもって幼児教育を行ってください」ということです。
しかし、それはそれとして、保育園は福祉機関であることに変わりはありません。
なので、養護の質も高めてくださいね。と言っているんですね。
なぜ、養護の質を高めてほしいか、というと最初に話した「貧困の問題」が関係してくるんです。
現在、地域差はあるものの、保育所に生活保護レベルの家庭、貧困家庭の子どもが増えてきているんですね。
そういう家庭では、食事をちゃんと与えてもらえない子どもがいます。(経済的貧困)
そしてそれ以外にも、深刻な問題が。
例えば、親の愛情不足で、情緒の発達の遅れたり(愛情の貧困)。
親の関わりが薄いために、体験が不足したり、知的な刺激が不足したり(体験の貧困)
適切な言葉がけを受ける機会、考える事が少ないことによる言葉が遅れたり(言葉の貧困)
経済的貧困が、愛情、体験、言葉の貧困に影響を及ぼします。
一方で、物質的に恵まれていても、愛されているという実感が得られていない状況もあるそうです。
 モノや情報にあふれ、何でも買ってもらえる、なんでもさせてもらえる。
でも、子どもの求める本当の愛情や関わりが不足している。
忙しすぎて、子どもとゆっくり関われない、時間にも気持ちにもゆとりがない。
こういった保護者の元で非認知能力の育ちがままならない子ども達が増えてきているようです
このような社会的背景を受け、現在では子どもを愛情深く保護する事「養護」が求められているんですね。

幼児教育の父、倉橋惣三は『幼児の教育(1946)』の中でこのように言っています。
「幼児に対する一切は皆教育。飢えている子には食を、凍えている子には衣を、浮浪の子には家を、まず何よりも先に与えなくてはならない(中略)家庭で与えられるべき福祉の平常を描く幼児には、その最低の福祉はどうしても護らなくてはいけない」
つまり、すべての子どもに幼児教育は大事、でも生活が満たされていない子どもにはまず幼児保護が優先されるということです。
そして「保護を棄ててしまっては、教育はあり得ない」と訴えました。

当時の倉橋は、幼稚園を学校教育法の中に入れるために奮闘していました。
その結果1947年、学校教育法の総則第一条で「この法律で学校とは、小学校、中学校、高等学校、大学、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする」と定められます。
しかしその時「幼稚園は幼児を教育し…」という文言が入る案がでたようです。
それを倉橋は「幼稚園は教育をするのは間違いない、しかし、小学校以上の教科学習とは違い、その前提として保護が大事だ」といったんですね。保護が大事だ。
そして、それを明確にするために、保護の「保」と教育の「育」を合わせた「保育」という言葉を学校教育法の中で正式に使っていこう!と提案。
結果その提案が通って、今でも「幼稚園は幼児を保育し」と書かれているということです。

ええ、さて、現在の私たちはこの「養護を大切にする」ということを、どう考えると良いのでしょうか?
現在、保育園への希望者が非常に増えています。待機児童、保育士不足は今なお保育業界で聞かれる言葉です。
行政は待機児童に応える事に必死で、結果、詰め込みという状況が起こっています。
そして狭い保育室に、たくさんの子どもたちがいるという環境が作られてしまいます。
子どもの配置基準は、法律上守られています。
しかし、それでも狭い環境に子どもたちがたくさんいる状況は好ましくありません。
海外の調査では、子どもの人数が多くなると、騒がしくなり、ストレスがたまり、衝突が増える、と報告されています。
現場の先生なら、たやすく想像できますね。
この不安な状態や高ストレス状態が続くと、子どもは「自分が愛されている、大事にされている」と実感することが難しくなります。
もちろん、保育士不足、保育園不足の状況下で、このような環境をすぐに改善するのは難しいです。
となると、保育者が最大限の工夫をして保育するしかありません
そして、工夫できるものといえば環境構成ですね。部屋をいくつかに区切ったり、カーテンの色を落ち着く色に変えたり、可能な限り子どもたちが穏やかで安心して生活ができる空間を考えていく必要があります。

しかし、十分に養護の行き届いた環境というのは、物的環境だけではありません。
最も意識すべきは、「一人ひとりの子どもが保育者に深く愛されていて、好きなことをいっぱいさせてもらえて、毎日保育園へ行くのが楽しくてしょうがない!」という環境です。
指示や命令、禁止の言葉を原則使わないような、あたたかな人的な環境づくりを目指す、このようなことが大事になってきます。

新指針新要領のポイントその2.幼児教育に新たな視点
今回の改定では、「養護」と並ぶ非常に重要なポイントがあります。それが「幼児教育」です
この二つが、今回の改訂の2大重要ポイントですね。
今回3法令すべてに共通して、「資質能力の3つの柱」と「育ってほしい10の姿」というのが入りました。
実は、「こんな時代だから、こんな力を持ってもらおう」となったのは、史上初の事なんです。
今までのように、ゆっくりと変化していく時代なら、こう育ってほしいと緩やかに構えていてもいい。
しかし、この変化の激しい時代「こうした力が必要じゃないか」と議論しながら教育していかないと、時代遅れになってしまいます。
AI人工知能の登場によって、10年後には多くの仕事が失われてしまう、と言われています。子どもたちが大きくなった時、必要な力というのは、もしかしたら今と違っている可能性も高いです。
このような状況の中、日本は「21世紀型の新しい知性を育てる」ということを教育の目標に掲げました。
この21世紀型の新しい知性というのが、「資質・能力の3つの柱」で表現されています。
1つ目の柱は、個別の知識・技能
2つ目の柱は、思考力・判断力・表現力
そして、3つ目の柱は、学びに向かう力・人間性とされています。
この3つの柱は、小学校以上の学習指導要領では最も大事なものとされ、3法令にも「3つの資質能力を一体的に育むように」と書かれました。
この3つの柱、少しわかりにくいので、それぞれ1つ目「個別知」2つめ「実践知」3つめ「人格知」と理解するとわかりやすいとのことです。
「個別知」というのは、個別に分断できる知識やスキルのこと。
積み木を例にすると「これは三角、これは玉」と知っていて、それを扱えることが「個別知」個別の知識やスキルです。
「実践知」というのは、もっと高く積むには?と考えたり、四角を置くと安定すると判断したり、
「こうしよう」と友達に思いを表現したり、議論したり、相談したりできることです。実践に必要な思考判断、表現、といった力になります。
そして「人格知」というのは、心構えのようなもの。積み木が好きになる、頑張って工夫すればいいものができるという信念などなど、学びの姿勢全体のことを指します。

今までの学校では「学力」を中心に身に着けてきました。でもそれは認知能力で、知識や思考力のほんの一部にすぎません。
これからの時代は、知識の一部の思考力だけを学ぶのではなく、柔軟な発想力、討論力、忍耐力コミュニケーション力、情動のコントロール力などの「非認知能力」を身に着ける事が今まで以上に必要になってきます。
従来の学力だけではなく、プラス21世紀型の「資質や能力」。認知能力と非認知能力の両方が大事だ、ということですね

では、実際にどうすれば、そんな資質や能力が育つのでしょうか。
それに必要なものが、ずばり、「アクティブラーニング」「主体的で対話的で深い学び」です。
今まで、学校では主に、トーク&チョークで授業を行ってきました。一方的に話して、黒板を板書させる。
しかし今後は、それを減らして、子どもが主体的に課題を探し、それを対話を通して解決応用可能な深い学びにしよう!と、このように学習指導要領が新しく変わったわけです。

保育施設では一般的に、主体的で対話的である、とされています。
しかし「深い学び」になっているか、と言われると、必ずしもそうはなっていないようです。
腑に落ちるほど深い学びの為には、保育をブチンブチンと切ってはダメ。
あるテーマを粘り強く追いかけるような遊び、学びが必要というわけです。
要するに、活動を連続させる工夫こそが求められている。
詳しくは、私の動画を見てください。

「幼児教育」のトピックではもう一つ「幼児期の終わるまでに育ってほしい10の姿」が描かれました。
完成されるべき目標「ゴール」ではなく、その方向性で育ってほしい、と願うものです。
こちらの内容も非常に大切なものではありますが、詳しくは、また別の機会に紹介したいと思います。

さて、この「資質・能力の3つの柱」を育てるには、保育現場ではこの3つが非常に有効です。と汐見さんは助言をしてくれています。
キーワードは「共有」「連続」「可視化」
「共有」というのは、子どもたちが自分たちの活動や遊びを言語化、説明、対話する場を設ける事です。
たとえば、帰りの時間に集まって、その日に興味深い遊びをしていた子に、何をしていたのかを話してもらう。
すると、みんなの中に、その遊びに興味がわきます。
さらに、子どもたち同士の対話も生まれるかもしれません。
明日もやってみよう、今度はこうしてみよう、と言った活動の連続性も生まれやすいです。
共有することで、アクティブラーニングのきっかけが生まれる、ということです。

「連続」というのは、活動が何日も続くことで面白さがわかってくるようにする保育のことです。
保育者には遊びや活動が継続し、一つの物語になるような援助が求められます。子どもたちの遊びを切り上げ、園の行事の練習をしましょう、というのは遊びの連続性という点でどうなのか、検討が必要です。

「可視化」というのは、ドキュメンテーションなどで、保育や子どもの興味や遊びを、見える化する事です。
何をやったか、よりも、何を感じていたか、何を考えたか、どんな育ちが見られるかにフォーカスするとよいそうです。さらに可視化することにより、遊びの連続性も、遊びの共有も可能です。
以上の3つの視点で保育を行うとよい、と汐見さんは言います。
今まで、私もいろいろな動画で話をしてきた事ですが、主体性や対話、ドキュメンテーションやアクティブラーニング、その様々な考え方や手法が、「資質・能力の3つの柱」の育ちを支えるのに役立ちそうですね。

新指針新要領のポイントその3.質向上を、計画評価のサイクルで
新指針・新要領の最後のポイントは保育の質向上です。
そして、それを支えるために「計画と評価のサイクル」が総則に取り上げられました。
計画と評価のサイクルはPDCAサイクルとも呼ばれます
教育課程、保育過程などのカリキュラムをベースにして、計画が立てられます。これが、PDCAのP。PlanのPです。そして、PDCAのD、Do、実践があります。さらにPDCAのC、Check。で実践の評価、最後にPDCAのA、Act。人の配置、対応、環境などの改善が行われる。そしてまたPlanのPにもどる。このようなサイクルで改善、改善を重ねていく事をPDCAサイクルと言います。
本や誰かの指導計画を丸写しするのではなく、また行き当たりばったりの保育をするのではない。
自分が計画し実践する。そして評価し改善につなげる。このサイクルを通して、保育の質を高めていってほしい、ということが書かれています。
このような、質の向上を目指すサイクルは「個人的な努力」よりも「園全体として取り組む」ことが求められています。
保育は関係性の上で成り立つ仕事。一人だけが学んでも、それが共有されなければ空回り。
そういう意味で、組織的な対応が求められています。
他にも、職員の良好な関係性づくり、処遇や業務の改善、研修の計画などなど、
施設長や管理者、そして責任者と呼ばれる方には、このような組織のマネジメントを率先して進めていっていただく必要があるようです。

④まとめ「私たちは何をしたらいいの?」

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まとめに行きたいと思います。
今回は、2018年改訂の新指針・新要領についてみてきました。
なぜ改定されたのか、何のために改定されたか。
そして、私たちはどのような未来に進んでいこうとしているのか。
そこに、どんな意味があるのか。
今回はこのようなことを、少しでもお伝えできたのではないかなあ、と思います。

では、3法令の改定について、いろいろとわかったけれど、
具体的に私たちは、これから何をしていったらいいのでしょうか。
最後に、「私たちは何をすべきか」という視点から、話をまとめていきたいと思います

今、世界は幼児教育にものすごく注目しています。
「環境問題」「女性の雇用」「貧困の問題」といった理由から、各国は幼児教育に投資を始めたんですね。
イギリスは児童福祉に大量の予算を投入し、実際に経済的に成果を出しました。
それを見た国々が、幼児教育に投資することの重要性に気づいたんです。
日本では、遅ればせながら2018年に3法令の改定が行われ、海外諸国と同じ方向に向け歩きだしました。
3法令の改定のポイントは大きく3つ。
ポイントその1:改めて養護の大切さが強調されたこと
・現代の経済的貧困、愛情の貧困等が増えている中で、子ども達に可能な限り最大の養護を優先すること。
・倉橋惣三が幼稚園では、保護と教育が合わさった「保育」をする、と言った意味を理解すること
・そして、子どもたちが穏やかで安心できる保育環境を物的にも、人的にも整えていくことが大事です
その2幼児教育に新たな視点が追加されたこと
・変化の激しい時代に合わせ「21世紀型の保育」が求められている
・主体的で対話的で深い学びを通し、子どもたちの「資質や能力の3つの柱」を育てていく
・キーワードは「共有」「連続」「可視化」
その3計画と評価のサイクルで保育の質向上を目指すこと
・PDCAのサイクルを用いて、自分たちの保育に改善を重ねる
・個人の努力ではなく、園全体として取り組んでいくこと。
・園長、管理者、責任者が組織のマネジメントを率先してするめていくことが大事。

このようになりました。
もっともっと簡単にまとめると、
今まで以上に「行き届いた養護」をベースに、
「アクティブラーニング」に挑戦して、子どもたちの学びを支え、
PDCAサイクルで回しながら、どんどんブラッシュアップしていく。

こういったことが今回の3法令改定の大筋になるのではないでしょうか。

本書の最後に汐見さんは、
「みんなで議論することが大事。今回の改定を受け、私たちがまずしないといけないことだ」
とおっしゃっています。
教育は、子どもたちが自然に育っていくこと、と区別しなければなりません。
教育とは、教育者が、子どもたちの「自然な学びの過程」に入り込んで、それをもっと有効にするように働きかけたり、子どもたちの育ちにとってより大事だと思う学びに導いたり、時には子どもたちにこれは知っておいてほしいということを教えたりすることです。
そこには必ず、教育者の「意図や育ちの方向付け」が入り込んできます。
しかし、それが個人の恣意、自分勝手な考えだと問題になります。
自分の趣味の押し付け、というのは避けなければなりません。
だからこそ、議論が大事なってくるんです。
「私は子どもたちにこう育ってほしい」
「こんな力が育ってほしい」
「この子たちが社会に出て働くときに、こんな資質が大事になっているんじゃないか」などなど
私たちは子どもたちに期待する内容を、みんなで話し合っていく、理解を深めていく。そんな必要があるんじゃないでしょうか。

この3法令の改定は、たくさんのえらい人たちが、話し合って考えました。
未来はこうなるんじゃないか。
今はこんなことが求められているんじゃないか。
子どもたちにこうなってほしい、ああなってほしい。
このように考えたんだと思うんですね。
現在の課題から、現状の社会から、子ども達にはこう育ってほしい。
じゃあ、こんなことを教育を通して身に着けていってほしいな。このような流れがあったと思います。

私たちは、この新指針・新要領を深く理解していく必要があると思います。
しかし、私たちも考えなくてはいけない。
上が決めたことを、理解して従うだけでは教育者とは言えないんです。
私たちも、これからの子どもたちに、何が大切なのか考えていかなくちゃいけない。そんな風に思うんです。
未来はどうなるか、これからの社会はどう変わっていくのか。
これから本当に求められる力とは一体何なのか。

まずは、今の社会の課題をしっかりと知ろう。
そして、未来を考えよう。
そしてそれに対して、何が必要か。私たちに何ができるか。何をすべきか。子ども達にどうなってほしいのか。みんなで話し合いましょう。

いま、いちばん、あなたに求められていることは何でしょう?

この本のタイトルになっていますね。
「さあ、子どもたちの未来を話しませんか?」

子ども達の未来の話をみんなでしよう!
今日は以上になります。
どうも、ありがとうございました!

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