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『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』の勧め~とある学術系VTuberによる予習・復習を添えて~


1 『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観に行こうと思ったきっかけ


 2024年のいつ頃だったかは記憶が定かではないが、テレビアニメ『忍たま乱太郎』の映画が2024年の12月に公開する事を知った。最寄りの映画館で告知のポスターやらフライヤーやらが設置されたり、映画本編前の予告映像などでその存在を知ったのである。私の中で『忍たま乱太郎』と言えば、NHKで放送されている子ども向けのテレビアニメであり、実際リアルタイムで『忍たま乱太郎』を視聴しなくなってから軽く四半世紀は超えているものと思われる。そんな私がこの映画の存在が気になったのは、「最強の軍師」という、普段の『忍たま乱太郎』ではお目にかかれないようなシリアスな雰囲気を纏っていたからである。これは大人の鑑賞にも堪えうる作品ではないかと興味が一度湧いてしまうと観なかった後悔の方がデカいと思い、上映が開始されるなら観に行こうと思った。また、キービジュアルが土井先生ときり丸に焦点が当てられているのも何となく「この映画は観に行くべき」と私のゴーストが囁いたのでそれも後押しとなった。そして、後述するとある学術系VTuberの配信も後押しとなって、四半世紀以上ぶりに『忍たま乱太郎』の世界に再び足を踏み入れることにしたのである。

2 押さえておくべき『忍たま乱太郎』の予備知識


 『忍たま乱太郎』はテレビアニメだけでも30年以上続いているコンテンツである。同じ30年以上続いているコンテンツでも『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』、『ちびまる子ちゃん』や『サザエさん』といった固定メンバーが決まっており他の登場人物が新しく大量登場したりすると折ったことがない作品と違い、気付けば忍術学園の上級生が大量に増えたり(しかも名前等他の設定もキッチリしている)、映画にも登場する「タソガレドキ城」という軍勢は「こんな人達居たっけ?」という認識であった。そういう意味では、長寿コンテンツとしては寧ろ『名探偵コナン』や『ONE PIECE』、『DRAGON BALL』シリーズに近いかもしれない。あるいは、柳広司原作小説をアニメ化した『ジョーカー・ゲーム』の登場人物であるD機関所属のスパイ並みに覚えられないかもしれない(もっとも、声優さんの声などに注目するなど繰り返し観ていく内に不思議と顔と声と名前が一致していくのである。一方で、『ジョーカー・ゲーム』という作品を楽しむ上で登場人物の名前を覚えることは必須ではないので気楽に楽しんで欲しいとも思う)。登場人物の多さに『劇場版忍たま乱太郎』が楽しめるか不安に思う方も居るかもしれないが、その点は心配ないと言いたい。

 結論から述べてしまうと、これは個人的な見解になってしまうが、大昔にテレビシリーズを見ただけの人でもメイン中のメインキャラの「乱(らん)きりしん」(乱太郎・きり丸・しんべヱ)と彼らが所属する「忍術学園1年は組」の担当教師である(本作のメインキャラの)土井先生山田先生、あとは忍術学園と敵対関係にあるドクタケ忍者隊の稗田八方斎(ひえたはっぽうさい)が分かれば十分だと思われる(こんなことを言うと『忍たま乱太郎』ガチ勢、特に忍術学園上級生ファンに怒られるかもしれないが、そこはご容赦願いたい)。

 また、公式からYoutubeで簡単な予習動画も出ているので、そちらを見た方が早いかもしれない。

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だいたい2分で分かる忍たま乱太郎|『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』12月20日(金)公開

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 思っている以上に『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観に行くためのハードルは低く、公式からの鑑賞サポート体制も充実しているので、あまり気負わず楽しんで観に行って欲しい。

3 学術系Vtuberによる『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』の予習


 さて、私が『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観に行くことを後押しした原因がもう一つある。それは、とある学術系VTuberの配信を視聴したことがきっかけである。その学術系VTuberの名は「きら子」さんという。彼女は古代日本史を専門とする学術系VTuberである。またの名を「忍たま夢女子VTuber」ともいう。彼女がそのような異名を(私の中で)持つように至った配信は、同じく学術系VTuberとして著名な「諸星めぐる」氏とのコラボ配信である。以下にその配信のリンクを貼っておくので是非チェックしてみて欲しい。また、学術系VTuberについて詳しくないのであれば、以前の私のnoteの投稿で学術系VTuberについてまとめたものがあるので、そちらの記事も参照して欲しい。

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【コラボ】教えてきら子先生!諸星の知らない「オタク文化」の世界!【書店員VTuber #諸星めぐる】

VTuberと学ぶ教養~学術系VTuberの勧め~|4浪U太郎

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 そして、きら子さんはもう一人の学術系Vtuberともコラボ配信をしている。そのコラボ相手は日本きのこマイスター協会公認キャラクターでもあるきのこ専門学術系VTuberの「奇ノ駒たんご」君である。「古代日本史と、きのこで専門領域が全然違うけど共通の話題とかあるのかしら。貝塚にきのこを食した形跡があるとかそんなんかしら」と思っていたが予想外のボールがきら子さんから投げられることになる。そのボールこそが『忍たま乱太郎』なのである。実は『忍たま乱太郎』シリーズでは「忍術学園」に敵対する組織ないし軍勢には毒きのこの名称が用いられているので敵味方の区別がつけられるというのである。また、『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を既に一度映画観で鑑賞したというきら子さん曰く、「食用きのこと毒きのこを区別するシーンがあるのでたんごさんにも是非観て欲しい」とのことであった。まさか『忍たま乱太郎』がきら子さんとたんご君を結びつけるとは予想だにしなかった。きら子さんとたんご君の貴重なコラボ配信は以下のリンクから一度確認してみて欲しい。出来れば、『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観に行く前に視聴した方が作品の予習にもなるかもしれない。下記配信の55:40~あたりから『忍たま乱太郎』トークが始まるので参考にしていただきたい。

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【コラボ雑談】キノコ人間と鬼による雑談配信!お友達度を上昇させられますように…!!🍄🌸【奇ノ駒たんご/きら子】
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 そういうわけで、通常の『忍たま乱太郎』ファンだけでなく、きら子さんやたんご君といった学術系VTuberファン、あるいはきのこクラスタにも『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を映画館で鑑賞しに行くことをお勧めする。

<2025年1月1日追記> 
 さらに、『忍たま乱太郎』について解説をしているVTuberの配信を発見したので紹介する。「御白(おしら)もす」さん(以下「もすさん」)というVTuberである。彼女のYoutubeチャンネルのリンクを以下に添付するので気になったらチェックしてみて欲しい。
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御白もす / OshiraMosu - YouTube
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 そして、もすさんの『忍たま乱太郎』講義が以下のリンクに添付してある。2025年1月時点で全2回であり、1回目は『忍たま乱太郎』全体の総論的な講義であり、2回目は『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』のメインの登場人物である土井先生こと土井半助をメインに紹介した講義内容である。
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【🔰超初心者向け🔰】第一回!忍たま塾!現役講師が忍たまを超分かりやすく解説します!【 officeTHC/御白もす 】

【🔰超初心者向け🔰】第二回!忍たま塾!今回の映画の主役「土井半助」とはどんな人間?【 officeTHC/御白もす 】

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 こちらの配信は端的に『忍たま乱太郎』の世界観を紹介しているので、『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観る前に丁度良いかもしれない。そうでなくても、一忍たまファンのオタク語りは熱が入っていて視聴しているだけでも面白いので何にせよ配信を一度は視聴することをお勧めする。

4 『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』紹介


 さて、『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』とは一体どのような話だろうか。

 念のため時系列順に話を進めると、そもそも『忍たま乱太郎』の原作は朝日小学生新聞で1986年から連載が開始された尼子騒兵衞先生による『落第忍者乱太郎』から始まり、1993年にテレビアニメ『忍たま乱太郎』の放送が開始された。そんな中『小説落第忍者乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』が出版されファンの間で相当高い人気を博し、満を持してこの作品が劇場版としてアニメ映画化されたわけである。あらすじは以下の通りである。

『土井半助』失踪、『天鬼』襲来
タソガレドキ忍者・諸泉尊奈門(しょせんそんなもん)との決闘に向かったあと、消息を絶ってしまった土井先生――。
山田先生と六年生による土井先生の捜索が始まる中、担任不在の一年は組では、タソガレドキ忍軍の忍び組頭・雑渡昆奈門(ざっとこんなもん)と、尊奈門が教壇に立つことに!
そんな中、きり丸は偶然、土井先生が置かれた状況を知ってしまうのだった。
一方、土井先生捜索中の六年生の前に突如現れたのは、ドクタケ忍者隊の冷徹な軍師・天鬼。
その顔は、土井先生と瓜ふたつで――。
忍たまたちに立ちはだかる最強の敵を前に、今、強き「絆」が試される。
果たして乱太郎、きり丸、しんべヱたちは、土井先生を取り戻すことができるのか――⁉

『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』公式HPより抜粋

 普段のテレビアニメとしての『忍たま乱太郎』は小さい子ども向けのギャグやコメディ色の強い番組ではあるが、本作の『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』はコメディパートを残しつつもシリアスなシナリオが浮かび上がってくる作品である。そういうわけで、子どもだけではなく大人の鑑賞にも十分堪えうる作品であると言える。

5 『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観た感想


 冒頭はテレビシリーズでもおなじみと思われる乱太郎・きり丸・しんべヱ(以下「乱きりしん」)と土井先生のコント(?)から始まる。お子様も安心して楽しめる導入となっている。そしてこれは余談であるが、小さな子どもの視聴者は、乱きりしんをはじめとした生徒達と先生のコントのようなやりとりを聞く中で自然と語彙力を増やしているのではなかろうかと思った。一方で、土井先生の過去と思われる客観的には残酷な描写を婉曲的に表現しているシーンには思わず感心したものである。大量の出血・血飛沫(ちしぶき)が舞っていると思われる描写には赤い彼岸花がアップで映し出され、死体と思われるものが映るであろう描写には横たわった案山子(かかし)が映されるなど、小さな子どもでもショックを受けないように過酷な戦国時代の描写をしてのけるのである。鎌倉末期~室町初期の過酷な時代の戦闘描写を描いた松井優征原作『逃げ上手の若君』(以下『逃げ若』)とは差別化が図られていると言える(もっとも、『逃げ若』は『忍たま乱太郎』とは違い深夜アニメもとい『少年ジャンプ』連載作品であるのだが)。あるいは、血飛沫を赤色系統の花が舞う・映る表現をしてみせたのは、西尾維新原作のテレビアニメ『刀語』の第2話「斬刀・鈍(なまくら)」において主人公である鑢七花(やすりしちか)が宇練銀閣(うねりぎんかく)に奥義を喰らわせたシーン以来の「美しい」とさえ感じる印象的なシーンであった(『斬刀・鈍』では宇練銀閣の血飛沫が舞う描写を紅葉が散る表現で描いていた。あのシーンの絵コンテを思いついた人は天才だと思った)。

 冒頭の日常パートの直後に土井先生は尊奈門と決闘をする。土井先生の戦闘シーンを私はおそらく初めて見たのだが、本格的な忍具を用いることなく普段の業務で使っている出席簿とチョークと黒板消しを武器にして戦っているのがかえって強キャラ感を出していたと感じた。尊奈門からすればこれ以上ない程に馬鹿にされていると感じているのだろうが、土井先生の「誰も傷つけない」というポリシーが垣間見える印象的なシーンである。

 その後、土井先生が消息を絶った後で1年は組の臨時講師を勤めることになった雑渡さんと尊奈門が教壇に立つことになり、1年は組に緊張が走る。手裏剣実技の体たらくに尊奈門は「お前達の教師はろくに手裏剣の投げ方も教えなかったのか」的なことを言う。それを聞いた1年は組は一度集合し一致団結して尊奈門を見返すことにした。「自分達が不甲斐ないと土井先生の評判まで下がる。それは絶対許せない」という理由からであった。土井先生が1年は組から慕われていることがわかる描写である。「あの滝夜叉丸(たきやしゃまる)先輩でも土井先生を馬鹿にしなかった」ということで、1年は組の中の想像で一瞬だけ滝夜叉丸先輩が登場する。想像の中でも滝夜叉丸先輩は1年は組の中では面倒臭い先輩であることが強く印象づけられているシーンであった。そんなこんなで土井先生がいないことを除けば基本的に普段通りの日常が続いていく1年は組の様子が描かれ続けていく。途中で、雑渡さんが生徒役になって尊奈門に質問攻めするのは、視聴者の中で笑えるか尊奈門と同じように胃が痛くなるかで人生経験の差が現れるシーンではないかと思った。控えめに言って忍たま世界の雑渡さんはプロ忍者としては最強格の忍者であり、その技量・知識も超一流である。そんな存在から「質問いいですか」と言われるのは大学生以上になってから教授・上司から詰められる際の「素人質問で恐縮ですが」という死刑宣告と同義である。そんな雑渡さんにあわあわしている尊奈門を笑えるのはまだ本気で人前でプレゼンなどをしたことのない若い子どもだけだろう。大人になるほど尊奈門に同情する人が増えるはずである。

 忍術学園では可能な限り普段と変わらない日常が繰り広げられる一方で、山田先生と最上級生である6年生による土井先生捜索は難航していた。6年生の間で「土井先生は亡くなったものとして捜索しよう」という意見が出た時に6年生の間で対立が起こったのは、忍たま世界ではほとんど大人のプロ忍者と遜色ない頼れる存在である6年生もまだまだ若い少年であることを印象強くさせた。そんな中、6年生達はドクタケ忍者隊に新しく加わった軍師である「天鬼(てんき)」と遭遇する。最初は顔を隠していた天鬼であったが、6年生との交戦を経て顔が露わになると、その顔は土井先生と瓜二つであることが判明する。6年生は「土井先生ではないですか?」と問いかけるも天鬼は態度を変えることなく攻撃を再開する。天鬼と6年生の戦闘シーンは、テレビアニメないし劇場版『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』、あるいは『Fate/ZERO』『Fate/Staynight』シリーズで見られるような派手なエフェクトやカメラワーク・壮大なBGMといったものこそ用いられていないが、その分リアリティの強い見応えのある戦闘シーンとして印象深いものであった。忍具が6年生の身体に刺さり血が流れるのは普段の『忍たま』らしからぬシリアスな描写であったことを記憶している。そして、6人がかりで戦闘力トップクラスの6年生が束になっても天鬼は人数差をものともせず淡々と攻撃を続けるのである。そして、本気で目潰しをしようとするなど殺意も尋常じゃないのである。結局、天鬼に叶わないことを悟った6年生は何とか戦場から離脱することに成功する。

 そして、偶然土井先生が出張ではなく行方不明なのだと知ったきり丸の様子がおかしいと感じた乱太郎はじめ1年は組のクラスメイト達は、きり丸に「何があったのか」と問いかける。こうして、真相を知った1年は組のメンバーは、独自に土井先生の捜索をすることを決定する。戦の準備をしているというドクタケの新しい出城に土井先生がいるのではと推測するが、複数ある出城のうちどれなのかと迷う1年は組の面々。すると、最近米や味噌といった食料などの物資の運搬が増えている場所が怪しいのではないかと推測を働かせる。そんな1年は組の洞察力の鋭さには「普段は忍者の卵でもいざという時は下手な大人よりよっぽど頭良いな」と関心した。戦争に必要な物は武器・兵器といった道具だけでなく食糧をはじめとした「兵站(へいたん)」も必要になってくることが幼い頃から身についているのだということを思い知らされた(時代背景を踏まえれば当然かもしれないが、幼いうちから戦争の基本・重要性を本質的に理解しているのは、控えめに言って『銀河英雄伝説』のアンドリュー・フォークより賢いのでは?と思ってしまった。いや、アンドリュー・フォーク如きと比べるのは1年は組のメンバーに失礼だろうか)。こうして、米や味噌樽の中に潜ってドクタケの出城に潜入を試みる1年は組のメンバー達。しかし、出城についても何か様子がおかしい。食べ物については鼻が利くしんべヱは、米や味噌など食糧が大量に運ばれているはずなのに良い匂いが全然しないという。そもそも、城に配備されているはずの兵隊の数も少ない。そう、これはドクタケ側が仕込んだ罠だったのだ。おとりの出城を用意することで敵軍勢の眼を欺き、おいしい所で漁夫の利を得ようという作戦だったのである。この辺りの戦略・軍略論は小さなお子様では理解するのは難しいかもしれないが、可能な限り丁寧な図解や説明がなされているおかげで比較的理解するのは容易になっていると感じた。

 話は前後してドクタケの本陣にいる稗田八方斎とその部下が天鬼に対して唐突にミュージカルをするのは、お子様向けのサービスシーンなのかと思ったが、個人的には劇団☆新感線の『五右衛門ロック』みを感じた。一方で、歌で天鬼の意識を定期的に洗脳しているのではないかと思うとなかなか恐ろしいことをしているなと感じた。

 そうこうしているうちに、ドクタケの本陣を見つけた雑渡さん。雑渡さんは天鬼の正体を知りつつも厄介な敵になると分かれば即排除しようと本気になっていた。そんな雑渡さんの足止めをするために山田先生の息子でありフリーの忍者の山田利吉(やまだりきち)と二人の忍術学園OBが立ちはだかる。こちらの戦闘シーンも見物である。学生ではないプロの忍者同士の戦闘は同士討ちといった未熟なミスは起こりえない。しかし、それでも雑渡さんと他の3人との間には確たる実力差が存在し雑渡さんが難なく勝利する。しかも、雑渡さんはまだ本気を出していないようであった。魔法や魔術、異能力といったファンタジーやチート的な能力が無くても純粋な体術だけで見事な戦闘シーンを作れるという証左でもあった。

 一方、ドクタケに捉えられた乱きりしん(今更ながら「乱きりしん」という名称は公式が使っているのだなと思った。ファンが自発的に言い出している用語ではないのかと思っていたので意外だった)。目の前には天鬼もとい記憶を無くした土井先生の姿があった。土井先生の記憶を思い出させるために普段の日常の授業でのやりとりを繰り返す乱きりしんの三人の姿に思わず熱いものが頬を伝うのに抗いきれなかった。特にきり丸は戦災孤児であり忍術学園寮が長期休業で閉まってしまう間は土井先生の元で居候している身であるので、尚更普段の土井先生に戻って欲しいと動く姿を見てこちらの涙腺は崩壊しっぱなしであった。記憶をなくしていても身体は普段の忍術学園でのやりとりを覚えていたのか(メタなことを言えば30年以上続いたやりとりである)、思わず乱きりしんの台詞に「いつもの」ような反応を返して胃痛が出るまでになる(土井先生はストレスがたまると胃痛になるのである)。こうして、記憶を取り戻し天鬼からいつもの土井先生に戻る事に成功する。ようやくいつもの日常が返ってくることに涙が止まらなかった。実は密かに毒入り手裏剣を使って土井先生(天鬼)を暗殺しようとしていた雑渡さんには筋金入りのプロ忍者すぎて恐ろしさを覚えたものだが。

 最後に久しぶりに「勇気100%」が聴けて大満足である。忍たまには勇気100%が欠かせないのである。勇気100%があれば大体全てが解決すると言っても過言ではない。こうして、私の『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』の鑑賞は満足の内に終わりを迎えた。年末に良い映画を観たものである。

 子ども向け映画で泣かないと思っていたが思いの外泣いてしまった。子どもが(特にきり丸が)普段のに日常を取り戻すために一生懸命頑張っている姿に思わず涙がこぼれた。子ども向けアニメ映画で思わず泣いてしまったのは、『映画クレヨンしんちゃんガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(2014)以来であった。ここで『映画クレヨンしんちゃんガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』の詳細を語ることは自重するが、この映画も面白くかつ泣けるのでお勧めである。

6 『忍たま乱太郎』の復習をしたいなら~『忍たま乱太郎』を語る会の段!~


 私のように数年・十数年・数十年ぶりに『忍たま乱太郎』の空気を味わった後で何か『忍たま乱太郎』の世界により浸る良い方法はないものかと何気なくYoutubeをさまよっていると、こんな配信を偶然発見した。『忍たま乱太郎』好きVTuber同士による「忍たま乱太郎語り」配信である。この会の主催はもちろん、きら子さんである。

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【忍たまコラボ】忍たま乱太郎を語る会 の段!【きら子 / 林アメリア / 羽形モモ / 桜馬トウカ】

【コラボ】第2回:忍たま乱太郎好きのVTuberによる、忍たま乱太郎を語る会の段!【きら子 / 林アメリア / 鈴森アネス / ウツロイみなも】
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 第2回忍たま乱太郎を語る回の段に出演している鈴森アネス先生が個人的に一番印象に残った。自身の推しキャラである善法寺伊作(ぜんぽうじいさく/CV.置鮎龍太郎、保健委員会委員長)を語っている時の口調がただの早口オタクで思わず笑ってしまったのである。だが、善法寺伊作を推している理由が医療従事者ならではの共感を呼ぶものだったので(鈴森アネス先生は麻酔科医VTuberという学術系Vtuberの一人である)、思わずこちらも納得してしまった。

Cf.鈴森アネスの診察室 - YouTube

 また、前作の劇場版同時試聴会なる配信も存在する。同時視聴をしているVTuberさんの配信はいくつかあるのだが、代表して上述のきら子さんの「忍たま乱太郎を語る段!」にも出演したJR博多シティ公式VTuberである羽形モモさんの同時視聴配信のアーカイブを添付する。
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【同時視聴コラボ】劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段を3人の忍たまファンと観る!の段【羽形モモ/博多シティ公式VTuber】
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<2025年1月1日追記>
 さらに、本作『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』のネタバレ在り感想配信もいくつか紹介する。どこかで本作を観た感想や熱量を共有したいと思っている人向けの配信である。ネタバレがない方が上述のもすさんの配信であり、ネタバレ注意がある方が「猫鈴あん」さんの配信と「おさかな」さんの配信である。
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【ネタバレなし】劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師観に行ってきた!【土井先生】#縦型配信

忍たま乱太郎映画観てきまた!!語彙力ない座談会(ネタバレ注意)

【忍たま乱太郎】ステッカー付きビスケット開けながら、映画の感想(ネタバレ有り)話しましょう!【ドクタケ忍者隊最強の軍師】
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 おさかなさんの配信は、私の今回の投稿の解説よりも詳細なものになっているので、一度チェックしてみて欲しい。首までたっぷり忍たまワールドにつかれる至れり尽くせりの配信である。

7 一般女性向け雑誌でも取り上げられる『忍たま乱太郎』もとい土井先生の魅力


 『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』が上映されるタイミングで絶好の宣伝機会と捉えたのか、女性向けファッション雑誌である『anan』の表紙が土井先生となっていた。何故土井先生が『anan』の表紙を飾れたのかと言えば、単純に映画の宣伝という域を超えて土井先生が30年以上にわたり数え切れないほどの女児の初恋を奪ってきた存在だからである。その証拠が以下の画像である。


女性向けファッション雑誌『anan』の表紙を飾る土井先生。持ち物は忍具ではなくいつもの「先生」としてのトレードマークとしての右手にチョーク、左手に黒板消しというスタイルである。そしてそれがこれ以上なくキマッている。

 土井先生の持つ魅力とは何なのだろうか。上述のきら子さんの推しキャラが土井先生でありその魅力は忍たま配信で何度となく語っているのだが、それをまとまると「優しい大人」であることと「ギャップがある」ことである。土井先生は1年は組の教科担任として授業を受け持っているが、なかなか成長しない1年は組に「教えたはずだ!」と言いはしても見捨てたり見下したりするようなことはせず最後まで付き合っている。そして、普段はきっちり仕事をしたりとしっかりした大人なのかと思いきや、ちくわ等の練り物が苦手といった部分があるなど、完璧超人ではないところがギャップとして魅力的なのである。そんな土井先生が記憶を無くして「天鬼」として動いている時には、普段は教師として抑えている戦闘力を存分に発揮し、さらには「最強の軍師」のサブタイの名にふさわしく軍略面でも有能な面を見せる。忍術学園での教員としての道ではなく過酷な忍者としての道を歩んでいたとしたら、あるいは山田先生と出会わなかったらこういう「土井半助」になっていたのかと思うと改めて土井先生の能力の凄さが垣間見れる貴重な映画だと言えよう。土井先生を原作漫画やテレビシリーズでよく知っている人もあまりよく知らない人も、この劇場版で改めて土井先生というキャラクターの魅力を知ることができるので、是非自分の目で確かめてみて欲しいと思う次第である。

8 映画パンフレットについて~通常版を買うか、豪華版を買うか、それが問題だ~


 読者の皆様は気に入った映画のパンフレットを買うだろうか。当然、この『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』にもパンフレットは映画観のグッズ販売店で売っている。悩ましいのが、通常版と豪華版があることである。表紙のデザインは通常版と豪華版で異なる(意外かもしれないが豪華版の方が表紙のデザインとしては地味かもしれない)。通常版と豪華版両方買ってしまえば問題はそれで解決するのだが、軍資金に余裕が無い場合、どちらを買うのが合理的と言えるのか。安さだけを見れば通常版一沢でいいのだが、後で豪華版の内容を知って「豪華版を買っておけば良かった」と後悔してしまっては意味が無い(因みに私は「大は小を兼ねる」という理屈で豪華版の方を買った。行動経済学的には高い方と安い方のどちらかを買うとなった際に不思議と高い方を買ってしまうという現象があり、私も見事これに当てはまってしまっているが、ここでは行動経済学の議論は割愛する)。そういうわけで、豪華版を買った方がいい人の特徴を挙げることにする。それはすなわち、忍術学園6年生推しの人であれば少なくとも豪華版を購入する方が合理的である。というのも、豪華版には6年生が活躍する描き下ろし小説が収録されているからである。小説の内容の詳細は割愛するが、劇場版本編の前日譚的な内容である。忍たまマニアは逃すわけにはいかない内容であろう。なお、通常版であってもパンフレットの内容は本編のネタバレを含む内容になっているので、出来れば映画を観終わってからパンフレットを読んだ方がいいかもしれない。とはいえ、大人であれば何となく「土井先生が忍術学園から一度離れることになっても最終的には帰ってくるんでしょ」ということがわかるだろうから、劇場鑑賞前にパンフレットを読んでも大きな影響は無いかもしれない(そもそもこのnoteを読んでる時点で既に手遅れかもしれないが)。また、『忍たま乱太郎』に詳しくない人は通常版でもパンフレットを買うと登場人物の把握に役立つので、一度騙されたと思ってパンフレットを買ってみるといい。一度登場人物の顔と名前を把握してしまうとどんどんもっと知りたくなるのが『忍たま乱太郎』という名の「沼」の恐ろしさでもあるが。

 映像だけでなくパンフレットという形で活字でも『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』の魅力を味わい尽くすことをお勧めする。今後2回、3回…と観に行く場合に、製作スタッフの拘りを復習した上で観に行けばまた新たな発見があるはずだからである。劇場パンフレットを買った人が有意義な忍たまライフを送れることを願っている。

9 おわりに~この冬は『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観に行こうの段!~


 読者の皆様にとって2024年はどんな年になっただろうか。いい年だっただろうか、それともイマイチだっただろうか。たとえイマイチだったとしても「終わり良ければ全てよし」という言葉があるように、ギリギリでも終わりが良い物になればオールオッケーなのである。では、手っ取り早くオールオッケーの結末に至るのはどうすればいいのか。ここまで読んだ読者の皆様ならもうわかるだろう。そう、『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観に行くのだ。大人であれば『忍たま乱太郎』というコンテンツにキッチリお金を落としていくことが大切なのだ。年内には無理でも年明けに観れば幸先のいい2025年を迎えることができるだろう。

 『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』は観て損をしない話であるので、忍たまに詳しい人もそうで無い人も是非一度はチェックして欲しいものである。そして、出来ればツイッター(現X)やこのnoteで思うがまま感想を(過度なネタバレにならない程度に)書き連ねるといいだろう。

 『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観た全ての人が、そして『劇場版忍たま乱太郎ドクタケ忍者隊最強の軍師』に関わった全ての人に感謝を込めてこの投稿を締めようと思う。それでは、良いお年を!

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