ふらふら気味
寝台に寝転がって、服をぬぎ、足を固定された。
一人の女性スタッフが、私の体が誰からも見えないように、乾いた大判のタオルで保護してくれた。
もう一人、胸に大きなパンダのアップリケがついた、硬めのビニール地のエプロンを付けた看護師さんが、「音楽聴きますか?」と言ってくれた。
ポート手術を終えて、いま順番が無茶苦茶な状態だけど、とにかく断片的な記憶を書いておく。
音楽聴きたいです!って私は言った
ああ、聴けるなら音楽持ってきたらよかった、
私、目が覚めた状態だってきいてたから
音楽聴きたいって思ったんだけど
多分ダメだし、そんなこと言ってほんとにワガママな人だなぁって思われそうだから言わなかったんです
って言ったら、聴けますよ、かけますねーって
で、なんか音楽がかかりだして
一人の人が「何の音楽?」って
かけた人が「ヒゲダンです」って
それきいてわたし
ヒゲダンやです!
って言った
(本当に無理なことは、素早くはっきり言えるみたい)
え、ヒゲダンやですか!
クラシックとかでいいすか!ってそのパンダの人が言って
はい!クラシックがいいです
クラシックなんでもいいですか、あるんですけど何かはわからないんですっていうから
いいですいいです、って、
で、かかりだしたら唯一、がまんしづらい、イタリアオペラのソプラノ歌い上げ系がかかりだしたので
すみませんオペラだけ無理です!
っつって
歌がないやつでお願いしますすみません!
はい歌ないやつあります!って
クラシックかなんなのかよくわからない音楽だったけど
ともかく、音があって、邪魔にならない音で、安心した
ポートを入れるドクターっぽい人はふたり
きりっとした男性医師が「xxです」って自己紹介して
目を見てきちんと話してくれるので、助かった
ではいまから覆いをかけます
って、覆いをかけられて、わたしはちょっとだけ狭いところきらいなので、
外が見えるように、テープでタープみたいに覆いの片側をあけてもらった
そこから、外の世界(大部分は、大きな画面にうつる自分の肋骨やら、誕生日やらの情報)をみていた
xx先生は、おそらく後輩に指導をしながら、
後輩に、管を入れるところを実施させていた
その指導が聞こえるのが若干怖かった
「それがたぶん間静脈」
「あ、ここちょっと避けないとまずいかも」
「うまくおさまるといいけどなぁ、もうちょい」
みたいなことを言いながら、やってるのだ
だいたい、痛くなかったけど
一回だけすごくぐぐぐーって入ってくる感じがして気持ち悪かった
どういう仕組みかしらないけど咳が出た
息を吸って、写真を撮って、息を吐いて
こういうふうに確かめないといけないから、意識があるままでやるのかなぁと考えたり
パンダ付けた看護師さんいるくらいだから
子どもでも、この手術受けてる子がいるんだろうなと思うと
子どものうちに、私の知らない怖さを体験してる人がたくさんいるんだって知ってたはずだけどわかってなかったことをやっと少し想像できるようになったりして
この大きな病院の一角に
心臓にポートをつけるチームの部屋があって
日々、ポートをつけ続けているってこと
最初、知らない人に処置されるの怖いって思ってたけど
たしかに、あれずっとやってる人にやってもらう方がぜったいいいね、ってわかった
あと、胸の手術のとき私は意識なかったけど
胸をきりとる手術ってどう考えてもすごい大胆な行為だと思うんだけど
あの、いつも話してる先生が?あのチームの皆さんが?
みんな、それを日常的にやってるわけだから・・・って考えると
やっぱり迫力のある仕事やってる人たちなんだなと感服する気持ちになった
私、迫力とか現場とか、そういう言葉好きなのかも。
手術の終わり頃に気がついたんだけど、
左の鎖骨下になんかついたじゃん、
てことはさ、私、ウクレレ弾けなくない?ウクレレと干渉しない?
と思ったんだけど。土曜日ウクレレレッスン予約しちゃったよ。
ね、この日記はいつもに増してめちゃくちゃでしょ
やっぱり、動転してるんだ私、たぶん。ふらふら。
心臓に管と、体になんか埋め込むなんて、
私には刺激が強かったんだ。
だからふらふらぎみ。
ちょっと寝ようと思う。