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まずは頭皮冷却:とくに看護師さんのケアについて考えた
抗がん剤の体験はとても不思議で書き留めずには居られない
私は入院で頭皮冷却を行いながら投与してもらったので,まずはその冷却の体験がけっこう特殊イベント感あって刺激的だった
朝9:20くらいにチーム医療のDr.がひとり(女性医師,A先生)来て,「昨日のポートに生理食塩水を入れてみます」と言う。私は9:30頃から頭皮冷却のスタンバイと聴いていたので,それにあわせて自分の口に入れる氷やお水を準備していてバタバタしている矢先だった。
「すみませんちょっとトイレだけ行っていいですか」
と言ったが,「あとで行けますよ」とかいう。
わかった,まあいい,じゃあその生理食塩水とやらを入れてくれ。
と思ってベッドに寝転がった。
A先生はポートの入り口を見つけるのに苦労した。ということは,私が痛い目にあったということだ。ぐりぐりと針の先でポートの入り口を探したが密からず「もうちょっとやって大丈夫そうですか?」という
(大丈夫そうかってどういう意味?痛いからやめてほしいけど)と私は思った。だいたい,ポートは毎回痛い思いをしないでいいように付けてもらったものだと思ってた,こんなに痛いなんて聴いてないよという気持ちだった。
で,まだ考えながらぐりぐりやってるので「やめてほしい」と言ったら抜いてくれた。
そしてA先生は「1.5のほうが…」とかなんとか,針のサイズかなにかを調整する考えを看護士に述べた。A先生もちょっと動揺してるみたいだった。
それから,針を交換してもう一度やってもらった。看護師さんは少しA先生に対して,なんとなく批判めいた視線を送っているように,私には思えた。「手を握っておきましょうか」と私に言うので,「大丈夫です」とかえしたが,看護師さんの気持ちも分かるような気がした。無事に針が入った,それは全然痛くなくて,カチっという音がする感じですっきり決まった。看護師さんが私に対して「…災難でしたね」ささやいた。それはA先生にきこえたかどうか分からないが,言い過ぎだと思った。A先生はさほど気にする様子もなく部屋を出たが,あとで見ると携帯を忘れて帰っていたので,やはり動揺したのではないかと気になった。
ことほどさように私はすぐ人間関係が気になるので,書き出すとなかなか前にすすまなくなる。
ともかくこのあとB先生の調達して運営してくれている頭皮冷却を,B先生の秘書さんが持って来てくださり,1時間おきに4回の交換を滞りなく行ってくれた。また,看護師さんたちがその間の点滴・看護を担当してくださり,こちらもとても優しくケアをしていただいた。
看護師さんたちさんの何が優しかったか?1)私の頭が冷えて冷えて,震えがきているとき,身体をあたためるためのホットパックを用意して持って来てくれた。2)私の頭が重すぎてか冷えすぎてか,昼食の時間にごはんが食べられなかった,そのごはんにラップをかけて冷やすものを冷蔵庫に入れてくれた,またあとで食べるとき,温かく食べるべき食べものをあたためてくれた。3)頭が重いので,転倒しないようにと,地面に何かを落としたら必ず呼んでくれと言われた。4)抗がん剤の交換の様子から,危険な薬剤を投与すること自体への緊張感が感じられた。
そのようなケアを受けながら,看護師さんにとって安心して提供できる環境でないと,頭皮冷却をみとめるわけにはいかないという話の真意が伝わってきた。外来センターでも頭皮冷却ができるようになればいいなとは思うけど,すぐ対応は出来ないというのは,私の安全のためだけでなく,職場の秩序を守るためであり,また看護師さんの提供したい「ケア」のレベルに対するリスペクトを示すためでもあるという気がした。
私は幼少の頃,弟が怪我をしたら消毒をして絆創膏を貼ってあげるのが好きだった。そういうシーンでときどき母から「mちゃん,かんごふさんになったらええやん」と言われていた。いまは心理職だが,やはり「いいケアができた」「役に立てた」「安全にできた」と感じられることがあると,心底嬉しい。弱っている人をケアすることにやりがいを感じるという気持ちは,自分なりに想像というか,共感できる。
今回,入院で抗がん剤治療を受けた最初の体験をとおして,自分は外来センターで「好きな帽子を被ってます」みたいに,横車を押すような方法で頭皮冷却をやってしまう選択をしないで良かった。それは自分にとっても,必要なケアが受けられなくてつらいことになるだろうし,その場にいる看護師さんたちの仕事に対する思いや,ケアをしたい気持ちを無碍にするような行為として響いてしまう。そのようなことが認められないのは当然のことだと思う。
現状では入院の方法でしかできないという状況,これは私にとっては選択肢が少なくなり都合が悪かった。けれども,入院で「抗がん剤+頭皮冷却」のケアを実際に受けてみて,ひとまずこの筋道を作って実行してもらえることに感謝する気持ちになった。
もちろん,いつか外来センターでも,正規に導入されたら素晴らしい。そのためにも出来ることは,今後やっていこうと思うけど,今回の私の治療には間に合わない,ということには納得した。