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減速する暮らし

速度を緩めて、目の前のことと丁寧に向かい合うこと。

私の暮らしの中でズレや違和感を減らして、心地よい状態のために行っていること、あるいは行いたいと思っていることの全てだと思う。

一方で、社会の側はどんどん加速しているような感覚がある。便利なITツールや様々なビジネスパーソンが教えるTIPSを手に、効率よく世の中を生きていこう。そんな標語がどこかにあるんじゃないかと思うくらい、私の周りの社会は加速している。(なんなら、IT企業に勤める私はそれを促進する手助けをしてしまってるような気さえする)
しかし、加速はしたものの、それが本当に幸せにつながっているのか疑問に思う人も多いのではないだろうか。
実際、Googleトレンドを見ても「ウェルビーイング」の人気度は上昇している(下図)。

Googleトレンドによる「ウェルビーイング」(トピック)の人気度推移(確認日:2023年10月19日)

また、“多様性”に注目が集まっていることからも、画一的な在り方に対する疑問や自分らしさに再帰する流れが感じられる。
そこから派生する問題もあるだろう。例えば、画一的なルールや背景を失ったことにより、「他者」と生きることが必要になってきた。今までは、同じ背景同じ文脈を共有していたことでツーカーの会話ができていたのに、話すたびに生じるギャップを埋める作業が必要になった。
加速したい人からすると、大変面倒で困った事態かもしれない。こういった問題に対する最善策は、丁寧に相手を見て自分との違いを認識し、そこにいかに橋をかけるかを考え、実施・調整など時間をかける方法になるので尚更だろう。(例えば、宇田川元一著『他者と働く』(2019年、NEWS PICKS PUBLISHING)など)

私は、逆にいい機会なのではないかと思う。
ウェルビーイングという言葉が広まり、多様性を重要視する機運が高まったとしても、それを「手っ取り早く」「効率的に」やろうとしては元の木阿弥だろう。

今まで捨象してきた細かなものたちと向き合い、人それぞれという画一的な言葉に押し込めないこと。それら全てと向き合うには情報量が多すぎるかもしれない。ウェルビーイングを求めてるはずなのになんでこんな大変なことをするんだって思うかもしれない。

それでも、何かと向き合うことは簡単なことではないと打ちのめされながらも、いつかの開花を願って花に水をやるように丁寧に向き合うことを大事にしていきたい。

余談だが、タイトルはハルトムートの『加速する社会』から逆転させる形でつけた。2000年代初めに書かれた本だが、訳者の解説の通り「加速」というキーワードで現代を説明を試みる方法は2020年代の今でも有効な視座を与えてくれるように思う。
訳者解説の試し読みが以下からできるので、気になった方はぜひ読んでみてほしい。

#ウェルビーイングのために

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