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会社を辞めた⑧


好きなアーティストはいるか?と仕事先の人に雑談の中で聞かれたことがある。私は情けないことに全く思いつかなくて、有名で比較的曲を知っているバンドの名前をいくつかあげた。その時からずっと思っていることがある。私が好きなものってなんだろう。

好きな歌手、好きな映画、好きな本、好きな食べ物。ベスト3をあげろと言われたら、私は答えに窮してしまう。そもそも好きなものがわからないし、好きなものを選べるほど見たり聞いたり食べたりをしていないのかもしれない。私はこの世で漫画を読んでいる時間が何よりも幸せで、漫画なら好きなものをいくらでもあげることができるけど、これを言ったら浅い人間と思われるんじゃないかとか、見栄の方が先に立ってしまうこともある。心身の休息とともに、自分が本当に好きだと言えるものを、今は探している。




21〜26日、5泊6日の山陽山陰旅の3日目。旅のメインに位置付けていた出雲大社へ向かった。広島市中心部からは車で高速を使って約3時間。許容範囲内だ。

実は2日目の火曜日の朝、TBS系列の朝の情報番組「ラヴィット!」を見ていたら、偶然にも出雲大社周辺の特集がやっていた。芸人のかが屋やモグライダー、アイドルグループ=LOVE元メンバーの齊藤なぎさちゃんが出演し、「絵になる写真旅」を標榜して"映え写真"を撮りながら出雲を巡るという趣旨だった。


私は縁とかタイミングを大事にする方で、今までも言われるがままに会社の部署を転々としてきた。転職を決めたのだって衝動的に出した履歴書がトントン拍子に通過して、最終試験に自分が専門に調べてきた分野と関連するテーマが出題されたことが何よりも大きい。

そもそもラヴィットは私の推しであるSnow Manの佐久間大介くんが出ている回しか見ていないので、その回で出雲大社が特集されたこと自体が縁にほかならない。元々行く予定ではいたものの、せっかくなので番組の企画で紹介された場所を聖地巡礼のごとく訪れてみることにした。



現地に到着したのは午前11時半すぎ。食べ逃すとランチの時間が終わってしまうので、少し早いが昼食をとることにする。ラヴィットではまず出雲大社のメインストリートである神門通りから外れた小さな参道「神迎えの道」で撮影を行っていた。ラヴィットで訪れていたそば処「荒木屋」は残念ながら休業。偶然にも並ばずに入ることのできた「かねや」で出雲そばを食べることにする。


出雲そばは複数段重なった漆器の器「割り子」にそばを盛り、冷たいつゆをかけて食べるのが特徴。段によってとろろや卵、そのままとそれぞれ違った味わいを楽しめる。この後も食べ歩きできるテイクアウト店があるかもしれないので、3段の一番少ないものを食べた。普通においしかったし観光気分を味わえた。

その後、同じ神迎えの道の道中にある、抹茶ラテを中心とした日本茶スタンドカフェ「出雲茶寮 藤」で休憩。店主の女性は埼玉県から出雲に移住し、出雲に伝わる茶道文化にはまって店を開業したという。人生についてちょっと考えさせられてしまった。

余談だが私の祖母は昔から茶道をたしなんでいて、今も頻繁に茶道を習うよう勧めてくる。正直お茶が何になるんだと思っていたが、心身のバランスを崩している今、副交感神経が優位になりそうな茶道のような趣味を持つのもいいかもしれないと思い始めている。温かい抹茶ラテの「リッチ」を注文した。おいしかった。


出雲大社は、日本の国をつくったとされる大国主神をまつる神社だ。「日本の神様解剖図鑑」(平藤喜久子著、2018年)によると、出雲の地で国造りをしていた大国主神が、高天原からやってきた邇邇芸命(ににぎのみこと)に国を譲る際、その代償として高天原の神から約束されたのが出雲大社だったという。ご本殿や日本最大級のしめ縄がある神楽殿は巨大で、圧倒的な存在感。神楽殿では複数の和装のカップルが社殿前で記念撮影をしており、幸せな気分を味わえた。旧暦10月になると八百万の神々が出雲大社に集まり、縁結びについて会議を行うという。惜しくも旧暦10月は11月以降のため、神在月にはぎりぎりかからなかったようだ。


参道沿いには大国主神が傷ついたウサギを助けたとされる「因幡の素兎」伝説にちなみ、かわいらしいウサギの石像がいたるところに点在していた。ラヴィットでは並んだ石像の配置が番組での席配置に似ているとして、佐久間くんの席配置にいるウサギの像を「さっくんウサギ」と称していた。なんてかわいらしいんだ。死ぬほど写真撮った。

しかし、まつられている神が多すぎて、参拝して賽銭を入れるだけで財布から小銭がなくなる。仕方がない。これも縁を結び、病気平癒を祈るためである。



メインストリートの神門通りは、やはり人通りが多かった。帰ってから友人と会う約束もあったので、土産店でお土産を物色する。縁結びにまつわるかわいらしい土産品が多い。ただ正直なところ私は齢34であり身近な友人たちは仕事に精を出しているか子育てに励んでいるかの2択だ。意中の人と縁結び♡などと言っている場合ではないので、土産選びにはそういった意味で苦労した。夫と先日旅行先で骨折して落ち込んでいる友人には、出雲大社の宮司の千家家で食されているという「うず煮」だ。


広島と周辺の県を往復していると、一か所回るだけで1日をつぶしてしまう。いろいろとほかの滞在プランについて考えを練ってはみるものの、結局はアクセスが良い場所に拠点を設けるべきだ、という考えに落ち着く。





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