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夫との出会い⑤

こちらの続きです

取男は、あまり自分の気持ちを言葉にしない。
私の事を好きだというが、本当のところはよくわからない。遠距離で不安で押しつぶされそうになったりする時も、たまにあった。自由で、気まま。私を蔑ろにしても平気な感じ。束縛もしない。
しかし、『結婚を前提に』
この言葉にはそんなモヤモヤを一瞬で消滅させる力が宿っている。(そら、結婚詐欺もあるわな…。)

遅刻ぐらい、みんなするだろう。取男は、私が鳥取に行った日はきっと眠たかっただけだ。
私は取男が好きだし、いずれ鳥取に行くのだ。
自分にいい聞かせることにした。

オットが「紹介して」と言っている旨を幼なじみのまいちゃんに告げたところ、まいちゃんは
「うーん、私はいいわ笑」と言った。
ふははは!フラれてるやんけ!!!

あの、オットからの「俺と付きあって」という電話以来、オットは、事あるごとに私にメールを送ってくる。

内容は、「誰か紹介しろ。紹介しなければ、お前が付き合え」とのこと。

しかしこの頃になると、「誰かを紹介しろ」というのは、単なるポーズだということがわかってきた。

要するに、「お前が俺と付き合え」ということなのだ。
なんだか、かわいく思えてきた。
彼女と別れて身ギレイにしてから私に告白し、もし振られたりでもしたらアカンので、彼女と別れずに私に付き合えと言ってくるのだ。
ある意味すごいわ。策略家か!ずるい!ずるいぞ!


私もオットという人間が、周りの人とどうやって話すのか、などがなんとなく気になりはじめた。

目が勝手に追う。

私の見立てによると、オットは仕事が早く何でもテキパキやり、要領がいい。行動に無駄が一切なく、それでいて、イヤミがないからみんなから好かれている。頼みごとも嫌な顔一つせず、なんなら「こうした方が早いデ」なんていいながら、チャッチャと何でもする。

昼休みは休憩室で、さっさと昼ごはんを食べて椅子に持たれかかりグーグー寝る。目覚ましなしで、きっちり起きてまたすぐ仕事モードに切り替える。

仕事中に業務の事で話しかけると、的確な回答をもらい、「ありがとう」というと、ニコッと悪い顔で笑って私の鼻を指でパチンと弾いてくる。
何者!?
(私が「いてっ!」ってゆうのを見てまた笑う。ほんまに不思議な癖だ。)

目の前のデスクで、真剣に何やら物を書いているオットの字を、パソコンの影からコソっと見た。

それがなんとも美しい字!!!美しい数字!!!
このギャップよ。

この人は、一体どんな人なんだろうか。
知りたくなる。

オットにも彼女がいる。
私にも取男がいる。

「鳥取に行くのは、両親が心配すると思うで」
「ほんまに取男がしろの事が好きやったら、そもそも置いて行かんと思うで」
「こっちにおった方がええやろ」
『しろは、無理してるん違う?』

オットはそんな事をチラホラと私に言う。


オットと2人きりで会う約束をする。


ハッキリさせなければならない。私はだんだんと自分の気持ちが変わっていくのがこわかった。

オットと晩ご飯を食べに行って、帰りの車。オットは仕事の事や家族のことなど何でも話す。私にもいろいろ聞いてくる。
コンビニであったかいコーヒーを買って車の中で飲む。
外は風が冷たかった。
コーヒーをすすりながら、私は言った。

私「あのさぁ、一体どういうつもりなん?オットくんの彼女って他所(ヨソ)の女とこうやってご飯食べに行ったりするんはオッケイなん?」

オ「いや、アカンやろなぁ」

オットは座席のシートを少し倒して、頭の後ろに腕組みをしてそう言った。

私「アカンのかい!アカンねんやったら、アカンやんか。」

オットは、腕を降ろして座り直し、私を真っ直ぐに見て言った。

オ「なぁ、しろ。もう、鳥取に行くのはやめーや。
俺もうアイツと別れるわ。だから、しろも、取男と別れたら?…お願い。別れて!!ほんで俺と付き合って!」

私「いやいや、話がおかしいやん。普通は、やで?俺、女と別れたから付きあってくれ!ゆうのが筋やん。」(何を保険かけとんねん笑)

オ「せやけど、な、俺なぁ、好きになったら絶対フラるねん。」

またオットは、頭の後ろで腕を組んで、寝転んでいる。

私「せやから、そうゆう中途半端なところを女に見透かされてるんや。どうせ今までも、そうやって渡り歩いてきたんやろ。」

オ「ははは。そうかもしれん」

私「ワタシ彼氏おる。アナタ彼女おる。付き合うのは難しいやん。」



そう言いながらも、私は、最初に出会った時の感覚を少し思い出していた。

最終話へつづく。
(長々と引っ張りすいません!笑)


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