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離婚までのカウントダウン「15年目の事件」

結婚してちょうど15年が経とうとしています。
今、私は結婚にともなう共同生活にピリオドを打とうとしています。

事件は一週間前の休日に起こりました。
私は、自分の用事で家を空けていて、自宅には3人の子どもと夫がいる状況でした。

出先の用事が済んだころ、私は長男(中2)からのLINEメッセージを受け取ります。
あまり自己表現をしない長男からの珍しく長いメッセージでした。
そこには、この一文から始まる状況説明が細かく淡々と書かれていました。

「パパから暴力を振るわれました」


なにがあったのか??

LINEメッセージは箇条書きで、事実だけを記入したシンプルなものでした。
内容はこのようなかんじでした。

・休日の夕方、長男が居間でゲームをしていた
・突然、今の戸を開けた父親が「ゲームなんかしないで勉強しろ」と怒鳴りこんできた。
・ふだん勉強を頑張るようになったこと、テストでも結果が出てきていることを伝えたが、聞き入れられず。
・「なぜ教えてやるから来い」と父親に別室へ促されるが、長男が「イヤだ」と答えると脚で蹴ってきた。
・怖いのでその場から逃げると、追いかけてきた。
・1Fにある妹の部屋から、裸足で外に逃げた。
・「〇〇(長男)はどこ行った?」と聞かれた妹たちは、父親の形相が怖く「知らない」とウソをつき長男を守った。
・逃げた外部から母親(私)にLINEメッセージを送った。

私が自宅に電話すると、長女(小6)につながりました。傍らには次女(小3)もいて、2人が交互に電話口で父親と長男のやりとりの様子を説明し始めました。

「突然パパが怒り出したんだよ」

長男とふだんケンカしがちな妹たちでしたが、このときばかりは、長男にはなにひとつ非がなかったと伝えてきました。

「目が。パパの目がいつもと違う感じがしてとても怖かったんだ。」
と小3の次女が興奮気味に説明していたのが印象的でした。

「〇〇(長男)が危ないと思ったんだ。だからね、私たち知らないってウソついたの。」
長女が落ち着いた声で伝えてきました。

家をでて、外に集合

「子どもたちだけで、バスに乗れる?駅前で集合しよう。いったん、家を出た方がいい。ママと待ち合わせしよう。」
私が提案すると、子どもたちはすぐに「行ける」と即答。
そのまま駅前のバス停で彼らを待ちました。

その後、長男含む3人がの子どもと落ち合ったのち、我々はファミレスに移動しました。興奮気味の彼らが落ち着くのを待って改めて事情を聞いてみました。

わたしのきもち

自分はというと、妙に冷静でした。
夫が暴力に訴えることは、過去の結婚生活の中で幾度もあったし、その都度やりきれない気持ちと格闘してきました。
何がやりきれないかというと、一番は

夫が絶対に自分の正しさを曲げない。相手が音を上げるまで責め尽くす。

という点で一貫していた点です。
意見のすれ違いが発生するのは、誰とでもあることです。
私も過去はムキになって、対抗していたものでした。
でも、次第にそれがケンカではなく、まるで「夫から妻への『制裁』」みたいになってきたあたりから、明らかな関係性の歪みは確実に出来上がっていきました。

私はしだいに「自分が悪い」という自責思考に取りつかれるようになりました。
元来、私は品行方正な人間でもありません。
夫に言わせてみれば、いい加減で適当すぎ、おまけに感情的なやっかいな人間です。

結婚当初は戦いの火種を自分から起こすこともありましたし、
責められたり、暴力を受けるたびに最終的に
「私が引き起こしてしまった」「私が言動に気を付けていれば招かずに済んだ事態だったはず」
という結末に至るようになりました。それは素直に湧き上がってくる怒りを上からむりやり押しつけてなかったことにしようとするような、不自然でとても気分の悪い状態でした。

当然「私のせい」ですから、私さえ気をつけていれば家庭は平和に保てるはず―

最後に全治1か月の殴打を受けたのが最後の暴力の記録です。2019年3月のことでしたから、そこからまる5年。私は火種を一切起こすまいと、夫とのコミュニケーションと感情を最低限にとどめる覚悟を決めました。

『あいさつはする。それ以上の会話は積極的に行わない。』

実際に夫からの私への暴力は、ここ5年間は発生せずに今に至ります。

ところがおかしなことが起こったわけです。

無抵抗な長男に暴力をふるう。

長男は中二とはいえ、ひょろひょろでマッチ棒のような頼りない体形をしています。一方の夫は、トライアスロン大会に出るような激しいトレーニングを続けている体育会系。当然ひとたまりもありませんから、長男はきちんと反抗することさえ許されませんでした。

今回、はじめて「いやだ」と一言を口にしたのだそうです。

休日の昼過ぎに、楽しくゲームをやっていることを一方的に妨害してくる父親への唯一の抵抗。

私は長男に心からの同情を示すとともに思いました。

(私じゃなくてもやるんか。)

自分の中にびっくりするほど冷めきった静かな心地が湧いてきました。

不安はなぜかまったくありませんでした。

(つづく)



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